はじめに
「おかす」には「犯す/侵す/冒す」があって、意味が全く異なりますよね。漢字を見ればおおよその意味が想像できますが、ちょっと迷うこともあるのではないでしょうか。例えば、「ミスをおかす」はどれでしょうか。「リスクをおかす」はどれでしょうか。「病魔におかされる」はどれだと思いますか?
漢字のイメージとして、「犯す」は「犯罪」、「侵す」は「侵害」、「冒す」は「冒険」が思い浮かぶかもしれません。それは正解で、感覚的に使い分けるときに威力を発揮します。でも、そのイメージが逆に邪魔をして判断を鈍らせることもあるんですね。
「犯す」→「犯罪」
「侵す」→「侵害」
「冒す」→「冒険」
そこで今回は、確認の意味で、「侵す・犯す・冒す」の使い分けを丁寧にまとめてみたいと思います。疑問の解決に役立ててくださいね。
「犯す」とは?――法律や道徳に違反する
「犯す」は、法律・規則・道徳などに反した行為に使われます。「してはいけないことをしてしまう」というルール違反のニュアンスですね。
・罪を犯す
・法を犯す
・過ちを犯す
・校則を犯す
・ミスを犯す
・間違いを犯す
【補足】「うっかりミス」も「犯す」?
「犯」という字には「犯罪」のイメージがあるため、ちょっとした軽微な「ミス」に使うのは仰々しく感じるかもしれません。しかし、言葉のルールとしては「ミスを犯す」が適切です。
もし表現が強すぎると感じる場合は、「うっかりミスをしてしまった」のように言い換えてもいいかもしれませんね。
「侵す」の意味と使い方――領域・権利・健康を侵害する
「侵」は、もともと「中に入り込む」という漢字で、「不法に領域内に立ち入る」という意味で用いられます。また、実際の境界線だけではなく、「権利」や「健康」にも用いられて、「権利を踏みにじる」とか「健康をむしばむ」といった意味でも使われます。
・領空を侵す
・人権を侵す
・プライバシーを侵す
・病魔が体を侵す
・がんに侵されてしまった
「冒す」とは?――困難を承知で行動する
「冒す」は「困難を承知で行動する」という意味で、「危険を冒す」なら「危険を承知で挑む」という意味になります。
「リスク」も「冒す」にします。「おかす」というとなんとなく負のイメージがありますが、本来は前向きな表現なんです。「リスクを冒す」とはリスクがあることを承知で果敢に挑むことですね。
・危険を冒す
・リスクを冒す
・風雨を冒して出かける
・他姓を冒す(本来の姓ではない別の姓を名乗ること)
【深掘り】「病気に侵される」と「病気に冒される」
ここで補足しておきたいのが「病気におかされる」の表記です。病気は「侵」にすると書きましたが、「病気に冒される」という表記も目にしたことがあるかもしれません。
小型の国語辞典には掲載されていないものもありますが、中型の『大辞林』を引くと、「冒す」の意味として「病気などが人の心身をそこなう」という意味も載っています。ですから、「病気に冒される」も誤りではないんですね。
ただ、公用文や新聞では「侵される」を採用していますし、現代の漢字の意味の感覚からすると、「侵」で覚えておいたほうが安心です。
まとめ
犯す → ルール違反をする
侵す → 他人の領域に踏み込む
冒す → 困難を承知で行動する
特に迷いやすいのは「冒す」と「犯す」ですが、「ミスを犯す」と「リスクを冒す」の使い分けが腑に落ちたら、あとは迷いもなくなるだろうと思います。ぜひ実際の文章の中で使い分けてみてくださいね。
最後まで読んでくださってありがとうございました!





