はじめに
文章を読んでいて、「欲しい」と漢字になっていることと、「ほしい」とひらがなになっている場合があることにお気づきのことと思います。漢字で書くのは「甘いものが欲しい」や「欲しかった本が手に入った」などで、「ほしい」とひらがなにするのは、「食べてほしい」「ゆっくり話してほしい」などの場合ですが、感覚的に書き分けていらっしゃるかもしれません。
国では「公用文作成の考え方」を示していますが、それをもとに、新聞表記や議事録表記、NHK表記など、それぞれの立場で表記の基準を示しています。異なる解釈をすることもありますが、「欲しい」と「ほしい」の使い分けについてはみんな共通しています。
個人で執筆される場合にはこだわらなくてもよいのかもしれませんが、表記の一応の基準を把握しておくと何かと役に立つと思いますので、今回は、「欲しい」と「ほしい」の使い分けについてまとめてみたいと思います。
形容詞の「~が欲しい」は漢字にします
「欲しい」というのは、「手に入れたい」とか「必要である」という意味ですよね。人間は欲というものがありますから、たくさん欲しいものがあります。以下の用例のように、具体的に必要なものを示す場合には漢字で「欲しい」と書きます。
・冷たいお茶が欲しい。
・とにかく休みが欲しい。
・新しいスマホが欲しい。
・そろそろマイホームが欲しいよね。
補助形容詞は「ほしい」とひらがなにします
注意したいのはひらがなの「ほしい」です。「ほしい」は、動詞の連用形にくっついて補助的な働きをすることがあります。これを補助形容詞といいます。このような場合は「ほしい」とひらがなにするんですね。
「て」に続くことがほとんどで、「~てほしい」というように用います。この場合、何かモノを手に入れたいのではなく、直前の動作を「希望する」というような意味になります。
・お茶を冷たく冷やしてほしい。
・とにかく休暇を与えてほしい。
・時間があるなら手伝ってほしい。
・車よりマイホームを買ってほしい。
補助形容詞の「ほしい」は省略されることもあります
補助形容詞の「ほしい」は、例えば下の例文のように省略しても意味が通ります。あくまで補助なので外されてしまうこともあるんですね。ただ、言い切りの形は強い言い方になってしまいますので、「ほしい」を入れることで希望をソフトに伝えることができます。
・お茶を冷たく冷やして。
・とにかく休暇を与えて。
・時間があるなら手伝って。
・車よりマイホームを買って。
動詞の「欲する」は漢字にします
「欲しい」は形容詞ですが、動詞だと「欲する(ほっする)」になります。これは「求める」「希望する」「願う」というような心の状態を強調する言い方で、漢字で表記します。少し重々しい言い方ですが、威厳を持たせたい場合などは好まれます。
・私の体が水分を欲しています。
・富を欲しない者はいないのです。
・あなたの心の欲するままにしてください。
・欲すると欲せざるとにかかわらずそうしなさい。
まとめ
・形容詞の「~が欲しい」は漢字にします
・補助形容詞の「~てほしい」はひらがなにします。
・動詞の「欲する」は漢字にします。
今回は「欲しい」と「ほしい」の使い分けについてまとめてみました。ご存じのことだったかもしれませんが、なにがしかお役に立てれば幸いです。最後まで読んでくださってありがとうございました。