はじめに
「あぶら」というと「油」を思い浮かべますが、「脂」にも「あぶら」という読みがありますよね。「油脂(ゆし)」というぐらいですから、区別しなくてもいいこともありますが、漢字それぞれに担当する「あぶら」の種類があるんです。
イメージとしては、サラダオイルなら「油」で、豚肉のラードは「脂」です。でも、食品だけに使うものではなく、ガソリンは「油」ですし、焦って「脂汗(あぶらあせ)をかく」は「脂」です。
こんなふうに、簡単なようで、ちょっと迷ってしまう「油」と「脂」、今回は、その違いについて、用例を多く用いながらわかりやすくまとめてみたいと思います。
「油」とはどんなもの?
「油」は水に溶けない液状のもので、主に植物や鉱物から生成されます。植物なら「サラダ油」がそうですし、鉱物なら「石油」をイメージするといいかもしれません。
そのほか「油」を使う慣用句もたくさんありますので、さっと目を通して感覚をつかんでみてください。
(「油」の用例)
・油絵
・油揚げ
・ごま油
・油紙
・油を搾る※1
(「油」の慣用句)
・水と油
・油を売る
・火に油を注ぐ
・油を絞られる※1
※1)菜種などの実から油を取るのは「油を搾る」ですが、慣用句として「叱られる」の意味で使う場合には「油を絞られる」にします。
「脂」とはどんなもの?
「脂」は人間や動物の脂肪のことです。動物性の脂肪は常温で固体のことが多いですが、魚の脂は常温で液体ですね。また、慣用句の「脂汗(あぶらあせ)」のように、液状をイメージする使い方をすることもあります。
このように、人や動物に由来するなら「脂」にすると覚えておくとよさそうです。こちらも用例に目を通して「脂」の感覚をつかんでみてくださいね。
(「脂」の用例と慣用句)
・牛肉の脂身
・豚肉の背脂
・脂汗をかく
・脂が乗る
・脂ぎった顔
・脂性
・脂っこい食べ物
※4)「あぶらっこい」は、素材そのものに脂分が多い場合は「脂っこい」ですが、炒め油を入れすぎたような場合は「油っこい」もありますね。
「がまの油」ってどんな油?
「がまの油」って知ってますか? 「がま」とは「ヒキガエル」のことですが、昔、「がまの油」という伝説の万能薬があったのだそうです。
驚くべきはその製法です。がまは鏡に向かわせると、自分の姿に驚いて脂汗を流すのだとか。その汗を集めて作ったのが「がまの油」なんです。
「がま」は動物なのに、どうして「がまの脂」にしないのかというと、加工して製品にしたものの場合には「油」にするからなんです。「肝油(かんゆ)」なんかもそうですね。
残念ながら「がまの油」の製法や効能は謎に包まれていますが、巧みな話術と実演で客を楽しませながら商品を売る「見世物」としての側面が強かったようです。
まとめ
最後に、「油」と「脂」の違いをもう一度おさらいしておきましょう。
「油」=常温で液体のものを表すことが多い。加工品にも使う。
「脂」=人や動物の脂肪や体内の脂質を表すことが多い。
現代の私たちの暮らしは、車を動かす「ガソリン(油)」から、おいしいステーキ肉の脂など、たくさんの「あぶら」に支えられています。
次に「あぶら」という言葉に出会ったときは、「これは植物や製品の『油』かな? それとも動物や脂肪の『脂』かな?」と、漢字の向こう側を想像してみてください。きっと、身の回りの景色が少しだけ違って見えるはずですよ。
最後まで読んでくださってありがとうございました!
【参考文献】
『大辞林(第四版)』(三省堂)
『記者ハンドブック』(共同通信)






