「とうとい」には「尊い」と「貴い」があるんです|「たっとい」の読みとネットスラングまでを丁寧に

もう迷わない 漢字のチョイス

「とうとい」は「尊い」だけじゃない

推し活ブームの影響もあってか、ネット上には「尊い」の文字が並んでいますよね。でも、「とうとい」には「貴い」もあるんです。存在を忘れてしまいそうになりますが、次のような違いがあるんですね。

・尊い=「敬う気持ち」が中心(リスペクト)
・貴い=「価値の高さ」が中心(プレミアム)

今回は、もう少し具体的に「尊い」と「貴い」の使い分けについて、国語辞典や表記辞書を参考にしながら丁寧にまとめてみたいと思います!

また、「たっとい」の読み方やネットスラングでの使い方にも触れていますので、どうぞ最後までおつきあいくださいね。

【注目!】覚えやすい表記のルールについて

後段で詳しく述べますが、「尊い」と「貴い」は意味が重なり合うことも多く、「尊い命」「貴い命」のように、どちらにも当てはまる例は少なくありません。でも、これだとなんだかモヤモヤしますよね。

そこで参考になるのがNHKの表記ルールです。NHKでは「身分・財産・価値が高いときは『貴』、それ以外は『尊』を優先する」というシンプルな基準を設けています。「モノや身分」は「貴」、心や命は「尊」と覚えるのはとても合理的ですし、迷いもなくなりますね。

モノ・身分→「貴」
それ以外は→「尊」

でも、それぞれ基本的な使い方がありますので、詳しく見ていくことにしましょう!

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「尊い」の意味と使い方

『例解国語辞典(小学館)』では、「尊い」は「尊敬する気持ちを起こさせる様子」とあります。

つまり、「尊い」が表すのは敬意や崇敬の対象となることなんですね。「尊」の漢字は「尊敬/尊重/尊厳」などにも使われていますから、これらが当てはまれば「尊い」です。

【「尊い」=尊敬/大切にすべきもの】
・神仏・祖先を尊ぶ
・尊い生き方/教え
・尊い犠牲
・命の尊さ

具体的にどのように使えばよいか、例文で確認してみましょう。

「尊い」の用例
・相手を思いやる心は尊い。
・命の尊さを子どもたちに伝える。
・神仏を尊い存在として崇める。
・彼が黙々と続けるボランティア活動は尊い行いだ。
・先祖を尊ぶ気持ちを忘れてはいけない。

「貴い」の意味と使い方

一方、「貴い」の意味を、同じ『例解国語辞典(小学館)』では、「価値や身分が高いことをさす」と説明しています。確かに漢字の「貴」は、「貴重/高貴/貴重品/貴金属」など、価値の高さを表していますよね。

人に対して使われることもありますが、その場合も「人格を敬う」というより「価値ある存在」という意味合いが強くなります。

「貴い」=価値がある
・真実を貴ぶ
・貴い資料
・貴い税金
・貴い身分
・和を以て貴しとなす

こちらも、具体的な例文で使い方を確かめてみたいと思います。「貴重だ」という意味なら「貴い」です。

「貴い」の用例
・彼は貴い身分の家に生まれた。
・博物館には貴い宝石がいくつも展示されている。
・貴い時間を割いていただき、ありがとうございます。
・貴い文化財を後世へ伝える。
・多くの犠牲によって築かれた平和は貴い。

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ネットスラングの「尊い」の使い方

冒頭で触れたように、ネット上では盛んに「尊い」が用いられていますよね。これは本来の意味とは少し異なりますが、すっかり定着した感があります。実際、『三省堂国語辞典』には、俗語の意味が掲載されているほどです。

ネットスラングとしての「尊い」は、「かわいい」より一段上の、「好きすぎて感情があふれる」とか、「見ているだけで幸せ」「感動して胸がいっぱい」といった意味で使われているようです。

具体的にどのように使われているのか、ここで確認しておきましょう。

・推しの笑顔が今日も尊い。
・あの2人が手をつないでるだけで尊い。
・猫が赤ちゃんを守ってる動画、尊すぎる。
・再会したキャラたちの掛け合い、もう尊いしか言えない。
・推しが後輩に優しく声をかけてるシーン、尊すぎて泣いた。
・このカップリング尊すぎて生きるのがつらい。(褒め言葉)

形容詞でありながら独立して使われることが多く、しばしば「尊い」だけで文が完結します。また、「尊み」という名詞形もあり、「尊みが深い」「尊みしかない」のように使われます。

・尊みが深い
・尊みしかない

こうしてみると、ネットスラングの「尊い」も、「敬いたくなるほど心を動かされる」という本来の意味の延長線上にあることがわかりますね。

「尊い」は「たっとい」と読んでいいの?

「尊い」だけでなく、「貴い」にも「とうとい」と「たっとい」の2種類の読み方があって、どちらも正しい読み方です。

歴史的には「たっとい」のほうが古い形と考えられています。古語には「たふとし(たうとし)」という形があり、これが音の変化を経て現在の「たっとい」と「とうとい」という2つの読み方になったようです。

どちらの読みも可能ですが、日常会話では「とうとい」が一般的です。

(常用漢字表より)
尊 |ソン  |尊敬,尊大,本尊
  |たっとい|尊い
  |とうとい|尊い
  |たっとぶ|尊ぶ
  |とうとぶ|尊ぶ

貴 |キ   |貴重,貴下,騰貴
  |たっとい|貴い
  |とうとい|貴い
  |たっとぶ|貴ぶ
  |とうとぶ|貴ぶ

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まとめ

「尊い」と「貴い」は、どちらも「とうとい(たっとい)」が、意味には次のような違いがありました。

・尊い……人格や精神、神聖さなど、敬うべきものを表す。
・貴い……価値が高く、かけがえのないものを表す。

最近では「推しが尊い」という使い方が定着していますが、これは「敬いたくなるほど感動する」という本来の意味が広がった表現です。

「尊」と「貴」の違いを知っておくと、文章を書くときにも、より的確に言葉を選べるようになりますね。

最後まで読んでくださってありがとうございました!


【参考文献】
『現代国語例解辞典(第五版)』小学館
『三省堂国語辞典(第八版)』三省堂
『新聞用字用語集(記者ハンドブック)』(共同通信社)
『NHK漢字表記辞典』(NHK放送文化研究所編)


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