「今」と「いま」で意味が違うの?
テレビを見ていると、「日本人はいま」とか、「いまの天気」とか、「いま」がひらがな表記になっていることがありますよね。どうして「今」にしないのか、何か意味に違いがあるのか、気になったりしませんか?
特に目にするのがNHKではないかと思いますが、調べてみたところ、NHKの『漢字表記辞典』や『NHKことばのハンドブック』には、名詞の「いま」をひらがなにする場合の特別な記述は見当たりませんでした。
ただし、公用文や新聞と共通するルールはあります。それは「いまひとつ」や「いましばらく」「いま一度」などの「いま」はひらがなにするというルールです。これはNHKだけでなく、公用文も新聞も同じです。
それとは別に、NHKが、特にタイトルなどに「いま」を用いているのは、現在を強く意識させたり、視聴者に語りかけたりする目的で、意図的にひらがなを選んでいるのではないかと考えられます。
そうやって「いま」というひらがな表記を目にする機会が増えたために、一般にも「いま」というかな書きが広がったというのが実情ではないでしょうか。
確かに、「いま」をひらがなにすると、読点を省略しても読みやすいですし、1文字よりも2文字のほうが落ち着きがいいですから、使いやすく感じますよね。
今回は、それぞれの表記辞書では「今/いま」の書き方をどのように示しているかを確認しながら、「今」と「いま」の使い分けについてまとめてみたいと思います。
「今」と書く場合
「いま」というのは日本に昔からある和語で、それを漢字に当てはめたのが「今」なんですね。そのため、ひらがながなじむ感覚があるのかもしれません。実際、常用漢字内で書ける漢字でも、文書の目的や想定される読み手に応じてひらがなでもいいという方針も文化審議会から出されているんですね。
でも、公用文には「常用漢字で書ける名詞は漢字で書く」という前提がありますから、一般的には「今」にしますし、新聞などでも「今」と漢字を使うように示しています。
ですから、特にこだわりがなければ、文章中の「今」は基本的に漢字になりそうですね。
・今にも ・今まで ・今と昔 ・今し方 ・今時分 ・今なお ・今風
「ただいま」はなぜひらがなにするのか
「ただいま」は、帰宅時のあいさつとしても、「ただいまから会議を始めます」のような副詞としても使われますが、どちらも「ただ+今」ではなく「ただいま」というひとまとまりの語として捉えられているため、ひらがなで書かれます。もちろん「ただ今」としても誤りではありません。
「今や」と「いまや」について
「いまや」は「今や」と書くことができますが、「いまや」とひらがなが好まれます。これも、「今+や」というよりも「いまや」というひとまとまりで「まさに現在は」という意味になっているためです。新聞表記ではどちらも並列で示していますので、語感に合うほうを用いてくださいね。
「いま」と書く場合
「いま」とひらがなにするように示されているのは次のような場合です。これは公用文だけでなく、新聞やNHK、議事録表記において、どれも共通してそのように示されています。
・いまひとつ ・いまいち ・いましばらく ・いま一度 ・いま一歩 ・いま少し
インパクトの観点から
漢字一文字というのは落ち着きが悪いため、タイトルなどでは「いま」が好まれるようです。「日本経済の今」よりも「日本経済のいま」のほうが、どことなく力強く、説得力が増すように感じますよね。一文字よりも二文字のほうが存在感が増すためかもしれません。
これは好みの問題かもしれませんが、タイトルであれば自由に表記できますので、ひらがなも選択肢に入れていいのではないかと思います。
読みやすさの観点から
「今」をひらがなにすることで、漢字の重なりを回避することができます。例えば「今起きたところです」は「いま起きたところです」のほうが読みやすいですし、「今帰ってきました」なら「いま帰ってきました」にすることで熟語ではないことがはっきりします。
もちろん、公用文や新聞表記に忠実な表記にしたい場合は避けたほうがよいと思いますが、そうではなく個人発信の場合にはひらがなという選択肢もあるのではないかと思います。
NHKの字幕などを見ていると、かなりの割合で、本文中でも「いま」が使われているようです。
「今起きたところです」→「いま起きたところです」
「今帰ってきました」→「いま帰ってきました」
「今行くところでした」→「いま行くところでした」
まとめ
今回、各表記辞書を当たってみましたが、「今/いま」の使い分けについて目新しい情報はありませんでした。
「現在」の意味での「今」と「いま」は、ルールだけではなく、読みやすさや文章全体のリズムを考えて選ぶ場面も少なくないと思います。
表記に厳格なお立場の方は基本的に「今」を使うことになりそうですが、そうでない場合は、語感に合うほうを選んでみてくださいね。
※参考文献
『最新公用文用字用例集(増補版)』(ぎょうせい公用文研究会編)
『新聞用字用語集(記者ハンドブック)』(共同通信社)
『NHK漢字表記辞典』(NHK放送文化研究所編)
『新訂 標準用字用例辞典』(公益社団法人日本速記協会)
『ことばのハンドブック(第2版)』(NHK放送文化研究所編)


