「さす(差す/刺す/指す/挿す)」の違い|傘立てに傘は「差す」か「挿す」か調べてみた

もう迷わない 漢字のチョイス

「さす」もいろいろ

「傘をさす」はどう書いていますか? ひらがなで「さす」と書くのも、読みやすくていいですよね。でも、「さす」は動詞です。公用文などでは、常用漢字表にある動詞は基本的に漢字で書きますので、公式な文書などでは漢字にしたいところです。

傘は一般には「差す」ですが、でも、傘のとがった先で人を傷つけてしまったら「刺す」ですし、傘を手に持って黒板の図を示したら「指す」ですよね。

では、傘立てに入れる場合はどうでしょうか。「差す」のような気もしますし、「挿す」がいいような気がします。「差す」と「挿す」の違いがわかりにくいですよね。

こんなふうに「さす」にもいろいろあって使いどころに迷うことがありますので、今回は「さす」についてまとめてみたいと思います。

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「差す」とはどんな意味?

「差す」にはとても広い意味があって、迷ったら、ほとんどの場合は「差す」になりそうです。「挟み込む」のほかに、「かざす」「きざす」や「照らす」「注ぐ」など、たくさんの意味があります。

・腰に刀を差す(挟み込む)
・傘を差す(かざす)
・嫌気が差す(きざす)
・魔が差す(きざす)
・朝日が差す(射)
・しょうゆを差す(点)
・目薬を差す(点)
・水を差す(注)

「刺す」とはどんな意味?

「刺す」はとがったもので突き通すことなのでわかりやすいですね。ほかに「刺すような寒さ」というように強い刺激の場合にも使います。野球で走者をアウトにするのも「刺す」ですね。

・ナイフで人を刺す
・ハチに刺される
・注射針を血管に刺す
・肌を刺す寒さだ
・本塁で走者が刺された


「指す」とはどんな意味?

「指す」は物事を示すことや方向を明らかにすることです。将棋や囲碁も「指す」ですね。ちなみに、「ゆびさす」は「指指す」ではなく「指さす」にします。

・指示棒で指し示す
・磁石の針が北を指す
・先生が生徒を指す
・成人とは18歳以上を指す
・将棋を指す

「挿す」とはどんな意味?

「挿す」は細長いものを中に入れることです。ただし、次の項で触れますが、かなり用途が限られているのが実情です。

・髪にかんざしを挿す
・花瓶に花を挿す
・挿し木をして育てる

「傘立てに傘を挿す」が使えるのか調べてみた

傘は細長いので、「傘立てに挿す」と書けそうですよね。気になって手持ちの国語辞典を総動員して当たってみました。でも、「挿す」は「かんざしを挿す」と「花を挿す」と「挿し木」以外の用例が見当たらないのです。

諦めていたその瞬間!! 『大辞林』に「用意された入れ物の中に収める」という意味を発見しました。用例として「手紙を状差しに挿す」とあります。この意味に当てはめれば、「傘立て」は傘専用ですから使えそうですよね。

ただ、今回調べてみてわかったのは、「差す」と「挿す」は明確に区別できるものではないことと、国語辞典や表記辞書が共通して「挿す」にしているのは「かんざし」と「花」と「挿し木」だけだったということです。

「傘立てに傘を挿す」は間違いではなさそうですが、一般的な用例としては「差す」のほうが無難かもしれません。うーん、これはなかなか悩ましいです。

まとめ

・差す → 迷ったらこれ!(広く使える)
・刺す → 突き通す・強い刺激
・指す → 示す・将棋や囲碁
・挿す → かんざし・花・挿し木(限定的)

こんなことを参考にして、使い分けてみてくださいね☆


【参考文献】
『明鏡国語辞典(第三版)』大修館書店
『岩波国語辞典(第八版)』岩波書店
『三省堂国語辞典(第八版)』三省堂
『新明解国語辞典(第八版)』三省堂
『現代国語例解辞典(第五版)』小学館
『最新公用文用字用例集(増補版)』(ぎょうせい公用文研究会編)
『新聞用字用語集(記者ハンドブック)』(共同通信社)
『NHK漢字表記辞典』(NHK放送文化研究所編)
『新訂 標準用字用例辞典』(公益社団法人日本速記協会)


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