「ことば」は一般的には「言葉」と漢字にします
「ことば」は「言葉」と漢字で書くことができます。これは公用文でも新聞でも議事録表記でも同じです。NHKのみ「ことば」を優先し、場合によっては「言葉」も用いることにしています。一応の基準としてはそのようになっているということをまずお伝えしておきたいと思います。
では、すべて「言葉」でいいのかというと、そうではなくて、ひらがなで「ことば」にしたほうがいい場合もあるんです。ですので、ここでは、「言葉」と「ことば」の使い分けについて確認していきたいと思います。
「ことば」はどうして「言葉」と書くの?
そもそも、「ことば」はどうして「言葉」と書くんでしょうか。語源辞典で調べたところ、もともと「言(こと)」と「事(こと)」は同じ「こと」として認識されていたようです。なぜなら、「言霊(ことだま)」という言葉があるように、「言(こと)」が魂を宿して現実の「事(こと)」となると考えられていたからなんですね。
それがだんだんと「言」と「事」が分かれていきました。必ずしも、すべての「言」が現実の「事」になるわけではありませんからね。それで、「なあんだ、言ってるだけじゃん」という意味で「言端(ことはし)」と呼ばれるようになり、それが「言葉」になったのではないかと考えられています。
もともと「言の端」という意味で、それが「言葉」になったということですから、「言葉」は当て字なんですね。

「事」と「言」がもともと同じだったなんて驚いたよ。
「ことば」をひらがなで書く場合
「ことば」の意味を持つ漢字は「言葉」だけではなく、「詞」と「辞」があります。
「詞」は「シ」という読みしかありませんが、「ことば」という意味を持っていて、特に短い単語、英語でいえばワードのような意味を持つ漢字です。
「辞」は「ジ」という読みしかありませんが、これも「ことば」という意味を持っていて、こちらは意思を伝達するコミュニケーション手段としての「ことば」という意味になります。
「詞」や「辞」は次のように用いられます。
・祝詞(しゅくし)
・祝辞(しゅくじ)
・開式の辞
・閉式の辞
・送辞
・答辞
・謝辞___など
ですから、「詞」や「辞」に該当する場合は「ことば」とひらがなにしたほうがいいんですね。言語や単語、用語というよりも、もう少し内容的なもの、伝えたいメッセージのような意味の場合です。
・お別れのことば
・御礼のことば
・感謝のことば___など
「言葉」という漢字を捨てられない理由
「言葉」は当て字なのだから、いっそのこと「ことば」に統一したくなりますよね。そうすれば書き分ける必要もなくなります。私も「ことば」とひらがなで書くほうが好きです。
ところが、そうもいかない理由があります。まず、「言葉」に関する慣用句がたくさんあるので、ひらがなにすると影響が大きいこと、もうひとつ、「ことば」は大事な用語であるのに、ひらがなにすると周囲に埋もれて読みにくくなってしまうという点です。
・お国言葉 / お国ことば
・言葉尻 / ことばじり
・合言葉____/ あいことば
・言葉を交わす / ことばを交わす
・言葉を濁す / ことばを濁す
・言葉が過ぎる / ことばが過ぎる
上記のように漢字にするかひらがなにするかで受ける印象も異なります。どちらがよいかは文章の内容によります。ひらがなのほうがふさわしい場合も多いと思いますが、漢字表記のほうがよい場合も確かにあります。
もちろん、これはどちらが正しいということではありませんので、適宜、使い分けてください。ただし、同一の文章の中では統一してくださいね。

どちらかに決めてしまうより、臨機応変に使い分けたほうがいいのかもね。
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