「所」と「ところ」の使い分けを確認しましょう

表記の決まりごと

漢字で書く「所」と、ひらがなの「ところ」の使い分け

「所」というのはもちろん場所や位置の意味で、「所番地」とか「高い所」「低い所」などと用いられます。場所以外の場合は「ところ」とひらがなで書いて、「ここのところ」とか「落としどころ」「悩みどころ」などと用います。

ただ、「ところ」と「所」の使い分けは非常に解釈が分かれていて、「ここだ」と指し示すことができる場合だけ「所」にして、一般的な場所の意味の場合は「ところ」にするという考え方もあるんですね。そのあたりを確認していくことにしたいと思います。

「所」と漢字で書く場合

「所」と漢字で書くのは、特定の場所、地域、住所の意味で用いられる場合です。また、「所」を用いた慣用句になっているものは漢字をそのまま踏襲します。

○「所」を用いた用例
・高い所に避難してください。
・家を建てる所が見つかった。
・暖かい所に住みたいよ。
・実家は不便な所にあるんだよ。
※「ところ」を用いることもあります。
○「所」を用いた慣用句
所を得る:ふさわしい仕事や地位につくこと。
所狭し_:あたりが狭く感じられるほど物があること。
所構わず:どこでもかまわず気にしないこと。
所嫌わず:どこでも避けることなく気にしないこと。

「出物腫れ物所嫌わず(でものはれもの ところきらわず)」という言い回しがあるけど、できてほしくない部位にできる「おでき」は本当に困るのよね。

「所変われば品変わる」ってどういう意味?

「所変われば品変わる」とは、土地が違えば風習や習慣が変わるという意味です。引っ越してみると、以前の土地での常識が通用しなかったり、全国共通だとばかり思っていたことが、そうではなかったと気づくこともありますよね。そのことを言い表しています。

「ところ」とひらがなで書くケース

ひらがなで表記する「ところ」というのは非常にたくさんあって、「所」よりもはるかに多く用います。「酒どころ」「米どころ」などもひらがなにしてくださいね。

・見どころ満載の企画です。
・ちょうどいいところに来てくれた。
・基本的なところは理解しました。
・今日のところはこれで終わりにしよう。
・ここのところ悪天候が続いています。
・早いところ終わらせてくれ。
・書き終わったところで時間となった。
・余すところなく味わおう。
・了解した。望むところだよ。

「ところ」と「所」で判断が分かれるもの

冒頭に書いたように、「ところ」と「所」では表記が分かれています。例えば、新聞・マスコミ表記においては「ある所」「至る所」「勘所」「居所」などは漢字を採用しています。これは誤読のおそれがない場合は「所」を用いるという方針によるものです。

一方、議事録表記では「あるところ」「至るところ」「勘どころ」「居どころ」を採用しています。こちらは、一般的な場所の意味なら「ところ」、どこか特定の場所であれば「所」にするという考え方です。

新聞・マスコミ表記はどちらかというと漢字を多く使用する傾向があるように思います。これは、限られた紙面でたくさんのことを伝えるという使命も影響しているのかもしれません。

それぞれの方針によって表記が異なっていると、自分が用いている表記と異なる場合に違和感を抱いてしまいがちですが、解釈が分かれていることを念頭に置いていただければいいのかなと思います。

漢字だと少ない文字数で伝えられるし、ひらがなだと誤解がないし、それぞれいい点があるんだね。