「矛盾」と「二律背反」と「逆説」をわかりやすく

クマのイラスト なりきり知識人

「矛盾」と、それに似たことばを確認しよう

なんとなく知っているけれども、使いこなすまでに至っていない言葉ってありますよね。一読して理解したつもりでも、なかなか定着は難しいものです。そんなときは、まずはざっくりと大枠で捉えてみるのが効果的です。今回は「矛盾」と「二律背反」と「逆説」を関連づけて、可能なかぎりわかりやすく述べてみたいと思います。

「矛盾」とは

「矛盾」とは「つじつまが合わないこと」の意味です。「矛(ほこ)」と「盾(たて)」と書いて「矛盾(むじゅん)」ですね。

語源となっているのは中国の故事です。「この矛はどんな盾でも貫きますし、この盾はどんな矛であっても通しません」といって矛と盾を売っていた人がいたので、「では、その矛でその盾を突いたらどうなりますか」と尋ねたところ、その人は返答に困ってしまったということから、「矛盾」で「つじつまが合わないこと」「道理が通らないこと」の意味になりました。

とても印象的なエピソードですし、私たちは「矛盾」については迷うことなく日常的に用いていますよね。

・言ってることとやってることが矛盾してるよ。
・それって自己矛盾に陥ってるよね。
・矛盾しているといわれそうだけど、考えが変わったんだよ。

私の場合、節約のためにセール品を買おうと電車賃かけて遠くのスーパーに行くのは矛盾してるって指摘されたことがあるわ。

スポンサーリンク

「二律背反」とは

「矛盾」と同じような意味を持つものに「二律背反」があります。「二律背反」もまた「つじつまが合わないこと」の意味ではありますが、もう少し限定的に「どちらも正しいのに相反していること」の意味で用います。

例えば、「人間には無限の可能性がある」という命題と、「人間の可能性は有限である」という命題があったとして、それぞれきちんとした根拠をもとに正当な主張をして、どちらも正しいとみんな納得したとします。でも、この2つはそもそも矛盾していますよね。二律背反とはざっくりといえばこのようなことなんですね。

日常生活においてなら、「人を呼び込むために宅地開発を進めなければならない」という考えと、「動植物を保護するために自然環境を守らなければならない」という意見があったとして、これらが同等の根拠と権利をもって主張された場合に、これは二律背反していることになります。

このように、「二律背反」は、それぞれ根拠がある命題であるのにもかかわらず、同時には成立しえないような状態にあることです。どちらも正しいのでかえって困ってしまうということですね。

二律背反」は哲学的には「アンチノミー」っていうんだって。

「逆説(パラドックス)」とは

一方、「逆説」というのは、一見すると矛盾していることを言っているようでありながら、実際には真理を言い当てている言説のことです。「パラドックス」ともいいます。「逆説」は「パラドックス」を日本語に訳したした和製漢語で、そのまま「パラドックス」を用いることのほうが多いかもしれません。

「逆説」の例としてよく用いられるものに「急がば回れ」があります。「急ぐなら遠回りしなさい」というのは反対のことを述べているように思われますが、「安全で確実な道を行ったほうが結局は早い」という真実を述べています。

また、「負けるが勝ち」というのもあります。「負けたほうが勝ち」というのは矛盾しているようですが、「争わないほうがよい結果になる」という真理を述べているわけですね。

「逆説」を「逆接」と書かないように気をつけなくちゃ。接続詞になっちゃうもんね。

まとめ

まとめると以下のようなことになります。

「矛盾」とは、つじつまがあわないこと、道理が通らないこと。
「二律背反」とは、根拠がある2つの説が相いれない状態であること。
「逆説」とは、逆のことのようでありながら真理を言い当てていること。

それぞれの違いを押さえて自由自在に使いこなしてみてくださいね。