はじめに
「ともに」には、「共に」という漢字がありますが、「ともに」とひらがなにするかどうかで迷うことってありますよね。そこで、ここでは、その使い分けについて確認していくことにしたいと思います。
「ともに」とひらがなにする場合
「ともに」とひらがなにするのは「同時に」や「どちらも」という意味の場合です。多くは「~とともに」の形になりますが、必ずしも「と」を伴わないこともあります。用例を確認しておきましょう。
・梅雨明けとともに猛暑が襲ってきた。
・怒りとともに涙がこみ上げた。
・資料の提出とともに説明を求めます。
・勉強とスポーツともに頑張りたい。
・体を動かすことと食べることはともに重要です。
「共に」と漢字にする場合
一方、「共に」と漢字にするのは「一緒に」という意味の場合です。「一緒に」に置き換えてみて、意味が通るようなら「共に」を用います。用例としては次のようなものがあります。
・共に協力してやっていきましょう。
・彼とは、共に切磋琢磨した仲です。
・知らない人と行動を共にしました。
・これからも、共に頑張ってまいりましょう。

「共学」とか「共有」も「一緒に」という意味だね。
ただし、「一緒に」の意味でも、「とともに」と「と」が連続する場合はひらがなにすることが多いようです。ですので、「他県の人と共に働いています」が本来の使い方ですが、「他県の人とともに働いています」としても誤りということではなさそうです。
接尾語の「とも」「ともども」のこと
「~とも」や「~ともども」という言い方もありますよね。「全員」「全部」「両方」の意味で、「2人とも」や「夫婦ともども」などと用いますが、これはひらがなで表記します。
(とも)
・3人ともみんな無事です
・送料とも700円ですが、よろしいですか。
・夫婦とも出席させていただきます。
・5人とも無事に合格できました。
・今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
(ともども)
・家族ともどもお世話になります。
・兄ともども元気にしております。

使い分けのコツがつかめてきたかも。
判断が分かれる言い回し
ちなみに、次のような言い回しはどちらがふさわしいと感じるでしょうか。
名実共に / 名実ともに
自他共に / 自他ともに
公私共に / 公私ともに
実は、これについては表記が分かれていて、新聞表記ではいずれも「名実共に」「自他共に」「公私共に」としていますが、議事録表記とNHKでは「名実ともに」「自他ともに」「公私ともに」と表記するようにしています。この場合、「どちらも」という意味ですし、漢字が連続するのでひらがなのほうが私は好きですが、どちらが正解ということはお伝えできません。語感に合うほうを選んでみてくださいね。
「共同」「協同」「協働」の違いについて
「共」のことに触れましたので、「共同」について考えてみたいと思います。「キョウドウ」と読む同音異義語は複数あって、しかも、それぞれ似たような意味なので、とても紛らわしいですよね。どの「キョウドウ」なのか判断がつかない場合がありますので、ここで念のため確認しておくことにしましょう。
共同:2人以上の人や団体が一緒に物事を行うこと
協同:2人以上の人や団体が力を合わせて物事を行うこと
協働:複数の主体が同じ目的のために協力して働くこと
なんだか違いがよく理解できませんが、書き分けるコツとしては以下のとおりです。
「共同」:一般的。特別な意味以外は「共同」を使う。「共同で行う」「共同して研究する」などとするほか、「共同体」「共同宣言」「共同生活」などと用いる。
「協同」:限定的。「協同組合」や「産学協同」のみ「協同」を用いる。動詞として「協同する」「協同して」とは用いない。
「協働」:限定的。地方自治やまちづくりの分野においてのみ「市民協働」や「市民と協働する」などの形で用いる。それ以外の分野では用いない。
「きょうどう」には、ほかに「共働」もありますし、最近では「共創(きょうそう)」という表記もよく目にするようになりました。こうした表記は発音だけでは判別がつかないこともありますので、基本的な「共同」「協同」「協働」を押さえておけば大丈夫ではないでしょうか。また、イレギュラーな漢字を用いる場合はルビや読みがなを添えるなどしたほうが親切だと思います。
まとめ
今回は「共に」と「ともに」の使い分けについてまとめてみました。
・「同時に」や「両方」という意味なら「ともに」にする。
・「一緒に」の意味なら「共に」にする。
・「とともに」の形であれば意味にかかわらずひらがなにする。
・接尾語の「とも」「ともども」はひらがなにする。
最後まで読んでいただきありがとうございました!