「他」と「外」を常用漢字表で確認してみましょう
「その他」という表記はよく目にしますが、公用文の場合は「そのた」と読んでください。「そのた」一択です。「そのほか」とは読まないんですね。それはどうしてなんでしょうか。今回は「その他」に注目してみたいと思います。
そうはいっても、「そのほか」は「その他」とも「その外」とも書けると常用漢字表に示されていますよね。
〔常用漢字表より〕
他 |タ |他国,自他,排他的
|ほか |他,○○の他
外 |ガイ |外出,海外,除外
|ゲ |外科,外題,外道
|そと |外,外囲い
|ほか |外,その外
|はずす |外す,踏み外す
|はずれる |外れる,町外れ
それなのに、公用文の場合は、「その他」も「その外」も、どちらも「そのほか」と表記することになっているんです。どういうことなんでしょうか。
どうして「その他」と「その外」は「そのほか」にするの?
どうしてなのかというと、「公用文作成の考え方」という文書において、「常用漢字表にあっても法令に倣い仮名で書く」ものとして「外・他→ほか」を示しているからなんです。
「法令に倣い仮名で書く」というのはどういうことかというと、「法令における漢字使用等について」という別の文書において、法令を作るときは「外」と「他」は「ほか」にしてくださいと示しているので、公用文でもこれに倣ってくださいという意味です。
ですから、「そのた」であれば「その他」ですが、「そのほか」はそのまま「そのほか」と書いてくださいね。
・そのた → その他
・そのほか → そのほか

「そのた」は「その他」、「そのほか」はひらがな。バッチリ覚えたよ。
「他」と「外」の用例を確認してみましょう
ただ、公用文以外のマスコミ表記、例えば『記者ハンドブック』では、「他」と「外」を使い分けるように示していますので、用途によっては「ほか」を「他」や「外」と書いても大丈夫なんですね。
一方、議事録表記では、公用文と同じように「そのほか」で統一しています。ただ、議案関係においてのみ、例えば「部長外2名」や「印刷機外5件」というような場合には「外(ほか)」を用いるように示しています。
具体的にどのように「他」や「外」を用いるのか、用例を確認してみましょう。
(ほか/他)
ほかの人を頼ってください。/他の人を頼ってください。
ほかに意見はありませんか。/他に意見はありませんか。
ほかには選択肢がない。/他に選択肢がない。
(ほか・外)
思いのほか早く着きました。/思いの外早く着きました。
そんなことはもってのほかだ。/そんなことはもっての外だ。
ほかならぬあなたのことよ。/外ならぬあなたのことよ。
ただし、新聞表記においても、「使い分けに迷うときには平仮名書き」としていますし、読み手の立場に立ってみて、どちらにも読めてしまう場合には「ほか」としたほうが親切です。
「ことのほか(殊のほか)」ってどんな意味?
さて、ここまで「他」や「外」について述べてきました。「外」は「他」に比べて用いる機会が少ないかもしれませんが、文字どおり「外(そと)」という意味で、「思いの外(ほか)」であれば「思いの外側」、つまり「思ってもみなかった」という意味になります。なかなかおしゃれな言い回しですよね。
「思いのほか」に似ているものに「ことのほか」という表現があります。漢字で書けば「殊のほか」になりますが、ひらがなが好まれるようです。ただし、公用文においては、「漢字で書ける副詞は漢字で書く」という原則があって、「殊に」は漢字で表記しますので「殊のほか」になります。このあたり、表記に厳密なお立場の方は気に留めてみてくださいね。
「殊のほか」は、や「意外に」という意味のほかに、「とても」「とりわけ」という意味もあります。「めっちゃ」とか「やばい」も親しみやすくて好きな表現ではありますが、たまには「ことのほか」を使ってみるのも風情がありそうですね。
・今夜は殊のほか冷えるね。
・このパフェ、殊のほかおいしいよ。
・この公園の桜は殊のほかきれいだね。

確かに「殊のほか」ってきれいな言い方ね。
まとめ
今回は、どうして「その他」は「そのほか」と読まないのかについてまとめてみました。公用文においては「他」や「外」は「ほか」と読ませないなら、どうして常用漢字表にそれらの読みが記載されているのでしょうか。
それは、公用文以外は自由に使っていいということにほかなりませんので、公用文や議事録以外の文章、特に文芸などであれば、このような表記に縛られず、自由に用いてみてくださいね。
最後まで読んでくださってありがとうございました。