『のだめカンタービレ』でクラシックに強くなろう!

次世代に伝えたい傑作アニメ

アニメ『のだめカンタービレ』ならではのみどころ

日本のアニメの中で、特におすすめな作品を紹介していくこのシリーズ、今回は『のだめカンタービレ』です。これは音楽アニメの傑作ですね。何年たっても廃れることはありません。

『のだめカンタービレ』は漫画が原作で、2006年にドラマ化、また、2007年にアニメ化されました。上野樹里さん主演のドラマがとてもよかったですし、アニメよりもドラマのほうが時期が早かったので、ドラマのイメージが強いかもしれません。キャストがとてもよかったですし、懐かしいです。

でも、アニメをご覧になっていない方は、ぜひともアニメも見ていただきたいと思います。今は配信という便利なものがありますので、好きなタイミングで楽しめるのがうれしいですね。アニメでは、のだめが心理的に千秋から自立して自分の生き方を見つけていく過程が丁寧に描かれているんですよ。

スポンサーリンク

アニメ『のだめカンタービレ』 3つの推しポイント

①目が大きくない絵がステキ!

『のだめカンタービレ』の原作は女子向けの漫画雑誌に連載されていました。今の時代はあまり「女子向け」「男子向け」という表現はそぐわないのかもしれませんが、あえて「女子向け」という表現をすると、女子向けの作品は恋愛ものが圧倒的に多いですよね。そのため、女子であっても女子向けの作品を好まない人も多いのではないかと思います。実は私がそうで、キャラクターの目が大きくて星がキラキラいっぱい入っていると、ちょっと警戒してしまうことがあります。

ところが、『のだめ』は目が大きくないのです。星も入っていません。これはかなりの推しポイントです。確かに恋愛ものではあるものの、恋愛の進展をねらっているわけではないんですね。「白馬の王子様」に憧れるようなぼんやりした「のだめ」が、やがて少しずつ自立していくことに主眼が置かれていて、人間を育てる道具として恋愛が描かれているんです。この着眼点は惹きつけられます。

②音楽のアニメでストーリーが上質

2つめの推しポイントはストーリーが上質であることです。『のだめカンタービレ』はクラシック音楽をテーマとしたアニメですが、クラシックに限らず音楽をテーマにしたアニメはほかにもたくさんあります。でも、音楽のよさを伝えようとするあまりストーリーが弱いこともあるんですね。

また、中高生の部活動のアニメだとどうしても内容が幼くなってしまいます。もちろん発達段階というものがありますから部活ならではのよさがありますが、『のだめカンタービレ』は大学生から社会人までを描いていますから、目の肥えた大人たちを大いに楽しませてくれます。

主人公の「のだめ」こと野田恵は、片づけも料理も苦手な音大生です。賃貸マンションの汚部屋のありさまといったらありません。でも、そのごみ屋敷の中で奏でられる美しいピアノ演奏のギャップにまずやられてしまいます。また、わが身を顧みず先輩に積極的にアプローチしていく天然ぶりはほほえましくもありますが、後半になって恋愛の優先度がだんだん下がっていく心境の変化の描き方が秀逸で、自分らしく生きることについて深く考えさせられる作品です。

③見るだけでクラシック通になれる!

アニメを見ているだけでクラシック音楽に詳しくなれるのもまた魅力です。労せずに教養が身につくんですからなんともありがたいことです。クラシックに詳しい人はなおさら親しみが湧くでしょうし、あまり知らない人も、『のだめ』を見ることで曲の名前を覚えたり、オーケストラの構成を理解したり、レッスンやコンクールの様子を知ったりできるんですから見逃せません。

きっと作者さんはかなり音楽に詳しくて、もしかしたら音大出なのかしらと思いきや、二ノ宮知子さんはクラシックは素人だったみたいですね。それなのにあの大作を世に出したんですから、圧倒的な取材力に頭が下がります。なるほど、詳しくなかったからこそ、あんなふうに読者や視聴者をおいてきぼりにしない描き方ができたんですね。

ちなみに、第18回ショパン国際ピアノ・コンクールで2位に入賞した反田恭平さんは、『のだめ』にかなり影響を受けたそうですし、反田さんは、別のアニメになりますが、『ピアノの森』というアニメ作品で作中のピアノ演奏を担当されていますので、日本人にとって漫画やアニメの影響力がどれほどのものなのか改めて実感させられます。

スポンサーリンク

ピアノは「ピアノフォルテ」という名前だったんです

のだめは音大のピアノ科の2年生というところから物語が始まります。ピアノは昔から習い事としてとても人気がありますよね。英会話やダンス、プログラミングなどの新しい習い事が増えている中にあっても、特に女子には圧倒的な人気を誇ります。

このピアノ、もともとは「ピアノフォルテ」という名前だったのが、略して「ピアノ」と呼ばれるようになりました。ピアノは「弱く」、フォルテは「強く」の意味ですよね。それまでの鍵盤楽器(ハープシコード/チェンバロ)は弦をはじいて音を出していたのですが、ピアノはハンマーでたたいて音を出すことで音に強弱をつけることができるようになって、「小さい音も大きい音も出せる!」という感激がこの名前に込められているんです。

『のだめカンタービレ』を見ていると、好きなことで暮らしを立てていくことの大変さがひしひしと伝わってきます。それは、絵画やスポーツもそうでしょうし、文筆業や芸人さんだってそうだと思います。成功をおさめるだけが人生ではありませんから、どっちが幸せかというのはわかりませんが、でも、覚悟を持つということは大変なことなのだと思います。

クラシック音楽というのは表現の音楽で、作曲を除けば創作の音楽ではありません。決められた音楽を決められた指示に従いながら、どう自分らしく表現するかを究めていくんですね。何かやろうとしたときに、「こんなの、みんなやってるからいまさら遅いかも」と思ったことはありませんか? 私はすぐそう思ってしまいますが、そんなときはクラシック音楽のことを考えます。これまで気の遠くなるような大勢の人がクラシック音楽を奏で、それでもまだまだ終わりではないことを考えると、何事もやってみる前に諦めることではないのかなと思います。

スポンサーリンク

文章表現にいかせる音楽の「発想記号」

音楽用語には文章表現にいかせるものがたくさんあります。今回はその中でも『のだめカンタービレ』にちなんで発想記号を取り上げたいと思います。

まず、『のだめカンタービレ』の「のだめ」というのは、主人公の名前が「野田恵(のだめぐみ)」なので、その愛称で「のだめ」ですね。

「カンタービレ(cantabile)」というのは「歌うように」という曲想を示す用語で、これはイタリア語なんですね。曲想を示すものを「発想記号」ともいいますが、数ある発想記号の中から「カンタービレ」を選んだのが絶妙で、とてもすてきな題名だと思います。

でも、ためにしにほかの発想記号を当てはめたらどんなお話になるんでしょう。ちょっと「妄想」してみました。あくまで妄想で、原作とは関係ありませんので念のため。

もしも「のだめ」が『のだめラメンタービレ』だったなら

「ラメンタービレ(lamentabile)は「哀れに」という意味です。

千秋に料理をしてもらい、千秋に掃除をしてもらい、これで人生は盤石だと思っていた野田恵でしたが、なんと千秋は声楽科の彩子とゴールインしてしまいます。掃除をしてくれる人がいなくなり、とうとう汚部屋度合いが極限まで達した野田恵は、ふと目にした「なんということでショウ!」というテレビ番組の企画に応募します。格安で片づけの専門業者に入ってもらったところ、それがテレビ中継されて実家の両親に知れてしまい、のだめは泣く泣く実家に連れ戻されたのでした。

もしも「のだめ」が『のだめカプリチョーソ』だったなら

「カプリチョーソ(capriccioso)」は「気まぐれに」という意味です。

ピアニストになった野田恵でしたが、幼稚園の先生になりたいという夢を捨てきれず、幼稚園に就職しようとした面接の日、幼稚園の隣の料理専門学校が気になり、運命を感じて入学します。すると急に料理のセンスが開花してレストランに就職しますが、店がつぶれて経済的に厳しくなり、ゆるキャラの中の人のアルバイトを始めます。すると、着ぐるみを着ながら鍵盤ハーモニカを演奏するスタイルが受けてスカウトされ、「のだめちゃんといっしょ」という教育番組を担当し、ついにガチャピン・ムックとの共演を果たしたのでした。

もしも「のだめ」が『のだめパストラーレ』だったなら

「パストラーレ(pastorale)」とは「牧歌風に」という意味です。

世界的に活躍するピアニストとなった野田恵でしたが、あまりの多忙さに精神がもたなくなり、千秋に別れを告げると、福岡の田舎に戻って幼稚園を開設します。その後、リトミックに「おなら体操」を取り入れたところ、地元の放送局から取材の依頼が入るほど注目され、入園希望者が殺到します。自然の中で培う音楽教育を追究した結果、ついに「色音符」に代わる「野菜音符」という教育法を編み出し、晩年まで音楽教育に没頭したのでした。

もしも「のだめ」が『のだめマエストーソ』だったなら

「マエストーソ(maestoso)」は「威厳をもって」という意味です。

ショパンコンクールで1位を獲得した野田恵でしたが、一方、千秋は耳の病気で聴力を失い、指揮者としての活動ができなくなります。自分にできることはお金を稼いで世界一の耳鼻科医に千秋の耳を治してもらうことだと考え、連日、ピアノソロコンサートを企画しますが、無理な日程のため、のだめの演奏はだんだん評判が悪くなって空席だらけになり、ついには観客が一人だけになってしまいます。それでも気丈にふるまい、堂々と演奏したのだめでしたが、偶然にも、その観客が世界的な耳鼻科医の権威であり、千秋は無事に耳の手術に臨むことができたのでした。

もしも「のだめ」が『のだめミストリオーソ」だったなら

「ミストリオーソ(misterioso)」は「神秘的に」という意味です。

世界各地でピアノリサイタルを開くまでに成長した野田恵でしたが、ある情報がSNSを駆けめぐっていました。それは、「満月の夜に野田恵のピアノを聴くと必ず腰痛が改善する」というものでした。しかも同様の報告が次々に寄せられています。これに目をつけたある組織が、野田恵を特別な存在に仕立て上げ、お金もうけに利用しようと接近します。すっかりその気になってしまった野田恵でしたが、不穏な空気を察知した千秋に間一髪のところで救われ事なきを得ます。しかし、腰痛改善は周知のこととなり、「満月コンサート」はいつも超満員になったのでした。

これはただの妄想ですが、こんなふうに発想記号とストーリーを結びつけてみると覚えやすい(かもしれない)ですね。

代表的な発想記号

ほかに代表的な発想記号を掲載しておきます。「ドルチェ」は聞いたことがあると思いますし、「カプリチョーソ」が語源と思われるようなお菓子もありますよね。もし気に入ったものがあったら使ってみてください。なお、ここに掲載している発想記号はすべてではありません。口になじみやすい代表的なものを抜粋しています。

読み方 表記(伊) 意味
アジタート agitato 激して 興奮して
アマービレ amabile 愛らしく
アパッシオナート appassionato 情熱的に 激しく
ブリッランテ brillante 華やかに 輝かしく
カンタービレ cantabile 歌うように
カプリチョーソ capriccioso 気まぐれに
コモド comodo 気楽に
ドルチェ dolce 柔らかく
ドロローソ doloroso 悲しげに 苦しげに
エレガンテ elegante 優雅に
エスプレッシーヴォ espressivo 表情豊かに
フェローチェ feroce 荒々しく 野性的に
グランディオーソ grandioso 堂々と 壮大に
ジョコーソ giocoso おどけて 陽気に
ラメンタービレ lamentabile 哀れに 悲しげに
レジェロ leggero 軽く
マエストーソ maestoso 威厳をもって おごそかに
ミストリオーソ misterioso 神秘的に
パストラーレ pastorale 牧歌風に 田園風に
リゾルート risoluto 決然と きっぱりと
スケルツァンド scherzando たわむれるように
トランクィッロ tranquillo 静かに

『のだめカンタービレ』は何度見ても楽しいですし、見るたびに新しい発見があります。久しぶりにまた見てみたくなった方もいらっしゃるのではないでしょうか。ぜひ、のだめワールドをお楽しみくださいね。

今回は発想記号が中心になりましたが、次の機会には音楽形式についてまとめてみたいと思います!

なんと「のだめカンタービレ」の新装版が出ているみたいです。興味があったらのぞいてみてください。 

こちらはアニメの『のだめカンタービレ』のご紹介です。プライム会員なら1話無料です。