『笠地蔵』の「要旨」と「要約」と「感想」をまとめました

知っておきたい日本の昔話

はじめに

日本にはたくさんの昔話がありますが、忘れてしまっていたり、うろ覚えだったり、そもそも知らないものも多いですよね。そこで、「あれってどういうお話だったっけ?」とふと思い出したくなったときのために、代表的な昔話の「要旨」と「要約(あらすじ)」と「感想」をまとめておきたいと思います。今回は「笠地蔵(かさじぞう)」です。 

『笠地蔵』の「要旨」をまとめてみた

「笠地蔵」は、貧しいおじいさんが道ばたの6体の地蔵に笠をかぶせてやったところ、お礼にお米やお金をもらったストーリーを語ることで、善い行いは自分に返ってくるものであるという教えを説いた昔話である。

『笠地蔵』の「あらすじ」をまとめてみた

昔、雪深い山の奥に貧しい老夫婦が住んでいました。大みそかだというのに食べるものが何もありません。おじいさんは町へ行って笠を売って、そのお金で何か食べ物を買おうと出かけましたが、笠はひとつも売れませんでした。

あきらめて帰る途中、峠にさしかかると、6体のお地蔵さんが雪をかぶって立っていました。おじいさんはお地蔵さんの頭の雪を払うと、売れなかった笠を順番にかぶせてやりました。しかし、笠がひとつ足りません。そこでおじいさんは、自分がかぶっていたてぬぐいを外すと、「これで勘弁してください」と、最後のお地蔵さんにかぶせてやりました。家に着いてそのことを話すと、おばあさんは「善いことをしましたね」とにっこりほほえみました。

早々に床に就いた夜中のこと、どこからかかけ声のような声がします。やがてドーンと大きな音がしたので、何ごとかと思って外に出ると、そこには米俵や野菜や魚、そしてお金の入った袋などがいくつも積んでありました。たくさんの足跡の先に目をやると、帰っていくお地蔵さまたちの姿がありました。おじいさんとおばあさんは感謝して、それからずっと幸せに暮らしました。

『笠地蔵』の「感想」をまとめてみた

『笠地蔵』は、「情けは人のためならず」ということわざのとおり、誰かに情けをかけることは相手のためなのではなく、めぐりめぐって自分に返ってくるものだということを教えている昔話です。

大みそか、年を越せないほど貧しいというのは、特に雪の多い地方では珍しくなかったのではないでしょうか。田畑が雪で埋もれて何も収穫できませんので、食べるものにも事欠いたことでしょう。それで町に出て笠を売ろうとしたわけですが、あとの時代であれば、これは「出稼ぎ」ということかもしれません。農村と都市部との経済的な格差というのは、とうの昔から存在していたようです。

ポイントは、笠が足りないので自分のてぬぐいをかぶせてあげたことです。つまり、懐が痛まない程度の善行ではなく、自分の身を切る行いであったわけです。だからこそお地蔵さんたちは感激してくれたのでしょう。いうなれば、お財布の中の小銭を募金するのではなく、その月の食費を削って、少し頑張って募金するようなイメージでしょうか。不要品ではなく、必要なものを差し出したのです。

生活が苦しく、つらいことばかりだと、どうしても人の心はすさんでいきます。ですから、徳を積んでいれば、このおじいさんのように思いがけない幸運に恵まれるかもしれない、そんなささやかな希望が必要だったのだと思います。「めげずに生きていれば、いつかはいい事があるよ」というエールが、この『笠地蔵』の物語にはこめられているように感じました。

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『笠地蔵』の「六地蔵」を考察してみた

ここからは自由記述です。私はずっと、『笠地蔵』のお地蔵さんが6体だったことに特に意味はなく、たまたま6体にしたのだと思っていましたが、これは「六地蔵」のことだったのだと気がつきました。私の住む地域にもお地蔵さまはありますが、それが「六地蔵」ではなかったのでイメージできなかったんですね。「六地蔵」は京都が有名ですが、全国各地に存在していて、もしかすると近くにあるという方もいらっしゃるかもしれません。

世界中に、善い人は天国に行き、悪い人は地獄に落ちるという考え方がありますが、それは、私たち人間が集団で生きていくための知恵のような側面もあるように思います。その中で、現世で終わりなのではなく、命あるものはみな違う存在となって生まれ変わるというのが「輪廻転生」の考え方です。

生きとし生けるものが次に進む道は6つに分かれていて、これを「六道(ろくどう)」といいます。どの道も苦しいものなので、それぞれの苦しみを救うために6体のお地蔵さまがおいでになる、それが「六地蔵」なのだそうです。

六道の名前と、その道を担当するお地蔵さまは以下のとおりです。

六道の名称 地蔵菩薩の名称
地獄道(じごくどう)檀陀(だんだ)
餓鬼道(がきどう)宝珠(ほうじゅ)
畜生道(ちくしょうどう)宝印(ほういん)
修羅道(しゅらどう)持地(じじ)
人間道(にんげんどう)除蓋障(じょがいしょう)
天 道(てんどう)日光(にっこう)

おじいさんがてぬぐいをかぶせたお地蔵さまはどの地蔵菩薩だったのかまではわかりませんが、こうやって苦しみから救ってくれるのがお地蔵さまなんですね。ちなみに、一部の考え方としては、こうしたエンドレスの輪廻転生から抜け出して極楽浄土へ行く道というものもあるようです。

いずれにしても、「いいこともあれば悪いこともあるし、ついてないこともあれば運が向くこともある。何事もめぐりめぐっていくのだから、今日も元気を出していきましょう」というのが『笠地蔵』のお話が伝えたかったことではないでしょうか。

もしも地蔵菩薩に興味があったら、こんな本も役に立つかもしれません。