「きずな」は「絆」と漢字で書いていいの?

料理をするカバのイラスト 表記の決まりごと

「絆(きずな)」は常用漢字表にありませんが、漢字で表記できます

「絆」という漢字は常用漢字表にはない、いわゆる表外字です。しかし、新聞表記、議事録表記、放送表記のいずれにおいても、「きずな」は「絆」と漢字で書くものに指定しています。

※新聞表記などで、表外字であっても漢字を用いるのは「絆」のほかに以下のとおりです。
証し(あかし) 鶏(とり) 炒める(いためる) 栗(くり)
ただし、公用文においては「絆」は表外字であることから、「きずな」とひらがなにするか、もしくは「絆(きずな)」とルビやふりがなを用いることとしています。原則はそうですが、国や県の事業名に「絆」を用いたものも多いですので、実質的には「絆」の漢字表記が認められている形になっているようです。

「絆」を深掘り

「絆」は、主に「人の結びつきを離れがたくつなぎとめているもの」の意味で用いられています。特に大きな災害が起こった直後などは、地域コミュニティーが崩壊してしまうことがあるので、「絆づくり」「絆の再生」「地域の絆」など、非常に多く用いられます。とても温かみのあることばだと思います。

ただ、「絆」は、もともとは馬などの動物をつなぎとめておく綱のことですから、よい意味ばかりでなく、煩わしいものとしての意味もあります。絆を大切にするのも、絆を断ち切るのも、人それぞれの事情によるということでしょうか。

絆は英語では「ボンド(bond)」です。接着剤のボンドですね。このボンドもまた「契約」や「束縛」という意味があります。人と人との結びつきはもちろん大切なものですが、やはり不自由さも伴っているというのはどこの国でも共通なのかもしれません。

いずれにしても、「絆」を用いる場合は、人とのつながりのよい面のことについて用いてくださいね。

「絆」の読みは「きずな」? 「きづな」?

「絆」をひらがなで書くなら、もしくはふりがなを付すなら、「きずな」でしょうか、「きづな」でしょうか。これは「きずな」とするのが本則ではありますが、「きづな」でも間違いということにはなりません。

仮名遣いには歴史的仮名遣いと現代仮名遣いがありますが、私たちが現在使用している仮名遣いにおいては、「じ/ず」を本則としながら「ぢ/づ」でもよいとしているものがいくつかあります。

[(いなずま(稲妻) さかずき(杯) せかいじゅう(世界中) うなずく(頷く)など)]

「稲妻」などは「稲」と「妻」なので、「いなづま」としたくなりますが、本則としては「いなずま」なんですね。このあたりはまた項目を改めて仮名遣いについて解説してみたいと思います。

「絆し(ほだし)」と「かすがい」について

「絆」には「絆し」と書いて「ほだし」という読み方がありますが、常用漢字表の中で認められていない読み方ですので、漢字は用いずに「ほだし」とひらがなにします。

「ほだし」とは、人の心や行動の自由を奪うもののことで、「ほだされる」というと、人情にかられて自分の行動が制限されてしまう意味になります。ほだされてお金を貸してしまったり高価なものを買ってあげたりして、痛い目に遭うなんていうことも実際にあるかもしれませんね。

「絆(ほだ)す」とは「綱でつなぎとめること」ですが、似たような意味を持つものに「かすがい」があります。

「子はかすがい」などといいますよね。これは、「子どもがいることで夫婦関係がなごやかになり、仲が悪くなっても夫婦のつながりが保たれる」という意味ですね。「鎹(かすがい)」とは、木材をつなぐために打つ曲がった「コ」の字型のくぎのことですから、かすがいにされる子どもさんのほうもちょっと大変かもしれません。

最近では家族の形も多様化してきましたから、「子はかすがい」だけでなく、「旅はかすがい」だったり「スポーツはかすがい」だったり、あるいは「推し活はかすがい」だったり、それぞれのご家庭によってかすがいも違ってくるのかもしれませんね。