「~出す」「~だす」の使い分けと「しだす」の表記について

知りたかったモヤモヤ語

「出す」の意味を確認しよう

「出」という漢字は小学校1年生で習う漢字ですから、長いこと使って親しんでいます。でも、「だす」はすべて「出す」でいいかというと、そうでもないんですね。今回は「だす」について確認していくことにしましょう。

「出す」の意味はとてもたくさんあります。それぞれ微妙に意味が異なりますが、大きく捉えれば、内から外へ移したり示したりするのが「出す」ですね。

・手紙を出す
・修理に出す
・態度に出す
・知恵を出す
・持ち味を出す など

動詞の連用形に付いた「だす」について

「出す」は単独で用いられるほかに、「思い出す」のように「動詞の連用形+だす」の形で用いられることがあります。この場合、複数のパターンがあります。これについては『現代国語例解辞典』の解説が秀逸なので使わせていただきます。

①~して外・表へ現す
・あばき出す
・押し出す
②~して、ある結果を出す
・稼ぎ出す
・割り出す
③~し始める
・泣き出す
・動き出す
※『現代国語例解辞典』より

このように、動詞の連用形に「だす」がくっついた形には大きく3パターンあるんですね。

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「~し始める」の意味の「だす」はひらがなにします

「動詞の連用形+だす」のうち、『NHK漢字表記辞典』においては、③の場合、つまり「~し始める」という場合には「なるべくかながき」としています。私はこの考え方がとてもしっくりするように思います。その理由を用例で示しながらお伝えしていきますね。

「飛び出す」というとき、「急に飛び出すのは危険です」であれば「飛び出す」で違和感がありませんが、「赤とんぼが飛び出した」というとどうでしょう。赤とんぼがどこからか急に飛び出てきたのか、秋になって飛び始めたのか、判断がつきにくいですよね。

これを「赤とんぼが飛びだした」とひらがなにすると、「出す」という意味から離れて「始める」という意味に着地できます。

・子どもが横道から飛び出した。
・赤とんぼが飛びだす季節になった。

公用文の解説書や新聞マスコミ表記の用例辞典ではこのことについての言及はありませんでしたので、あくまでも「推奨」ということになりますが、「~し始める」という場合には「だす」とひらがなにする表記は浸透しているように思いますので、積極的に用いてみてくださいね。

「名詞+しだす」の「~しだす」はひらがなにします

一方、なるべくではなく、必ずひらがなにするのは「名詞+しだす」の場合です。「開花しだす」「勉強しだす」「作動しだす」などですね。これもやはり「し出す」ではなく、「しだす」と書いてくださいね。

・ようやく桜が開花しだしたね。
・ようやく勉強しだしたみたい。
・修理に出して無事に作動しだしたよ。

なぜなら「しだす」というのは「する+だす」ではなく「しだす」という動詞だからです。「仕出し」というのは仕出し弁当の仕出しですが、「仕出す」で「やり始める」という意味なんですね。「為出す」とも書きます。でも、本来の漢字の持つ意味が薄れているので「しだす」と書くというわけです。

なるほど! そういうことか。

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「でだし」は「出だし」と書きます

「でだし」を無理やり漢字で書くと「出出し」になってしまいますから、これは「出だし」にします。これは公用文、新聞マスコミ表記、議事録表記、すべてそのように明示されています。

「出だし」は「物事の始まり」「すべりだし」の意味ですね。

・出だしからもう一度やってみよう。
・出だしからつまずいてしまった。
・何事も出だしが勝負になるよ。

「みいだす」は「見いだす」と書きます

「見いだす」は「見い出す」ではなく「見いだす」と書きます。なぜなら見いだすは「見る+出す」ではなくて「見+いだす」だからなんですね。

× 見る+出す
○ 見+いだす

「いだすって何よ?」と思われたかもしれませんが、「日出ずる国」というときに「出」を「い」と読みますよね。あの「出」です。「見+出(い)だす」ですから、無理やり漢字で書けば「見出出す」になってしまいます。それで「見いだす」と表記するというわけです。

「見+いだす」だったなんて知らなかった。

まとめ

・内から外へ移したり示したりするのが「出す」です
・「出す」は動詞の連用形に付いて用いられることがよくあります。
・「~し始める」の意味の「だす」はひらがなにするとすっきりします。
・「~しだす」の場合は「しだす」とひらがなで書きます。
・「でだし」は「出だし」と書きます
・「みいだす」は「見いだす」と書きます。

表記に自由度は必要だと思いますし、ここに掲載したものがすべてということではありませんので、文脈にあわせて「出す」や「だす」を使い分けてみてくださいね。