「であう」はどう書くの? 「会う」「合う」「遭う」とは?

知りたかったモヤモヤ語

はじめに

「会う」も「合う」も日常生活においてとても多く用いている語で、「会う」だったら「「友達に会った」とか「久しぶりに会わない?」などといいますし、「合う」だったら「答えが合っていた」とか「好みに合った味です」などと用います。

でも、「であう」になると「会う」なのか「合う」なのか困ったことはありませんか? 実際に用いられている表記もさまざまなので混乱してしまいます。

そこで今回は、改めて「会う」「合う」「遭う」の使い方と、確認のため各表記辞書ではどのように扱っているのか探っていきたいと思います。

「会う」「合う」「遭う」の意味を確認しましょう

「であう」をどう表記するかを考える前に、まず、「会う」「合う」「遭う」の意味を確認しておきたいと思います。日常的に用いている単語ですから混乱はないと思いますが、念のために掲載しますね。

【会う】約束して対面する。偶然に出会う
・友達と会うことになっている。
・図書館で先輩に会った。
・彼女に会って話をしたいと思っている。

【合う】複数のものが集まって一つになる。合致する
・手を合わせてお祈りしましょう。
・あなたとはどうも意見が合いません。
・私の体に合った服のサイズはありますか?

【遭う】偶然、好ましくないことを経験する
・水害に遭われたそうで、お気の毒なことです。
・帰り道、にわか雨に遭って大変だった。
・反対意見を述べたら袋だたきに遭いました。

このような意味になります。「遭う」はよくないことに遭遇する意味でのみ用いられます。「逢う」というのは、よく歌の歌詞に出てきますが、常用漢字表にない表外字ですので「会う」にします。

「逢う」は表外字だから使えないんだね。

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「出会う」と「出合う」はどう違うの?

では、「出会う」と「出合う」はどう使い分ければいいのでしょうか。

【出会う】偶然に人や物や出来事にめぐりあう
・ばったり駅で恩師と出会いました。
・人生を左右するほどの名著と出会ったんです。
・あの歌に出会ったおかげで乗り切ることができました。

【出合う】川や道などが、ある場所で一緒になる
・本川と支川が出合う場所で越水したそうです。
・直進すると県道と出合いますから、そこを左折してください。

これは各種国語辞典と各種表記辞典を突き合わせてまとめたものです。ただし、これについてはかなり悩ましいので、順に説明していきますね。

『岩波国語辞典』も『新明解国語辞典』も『明鏡国語辞典』も「出会う」と「出合う」を並列で記載していて、詳しい使い分けには言及していませんでした。こんなときに頼りになるのが『現代国語例解辞典』です。ありがとう、例解さん!

『現代国語例解辞典』が示してくれている例文は次のようなものがあります。

・街角で知人に出会う。
・すばらしい詩に出会う。
・本流と支流が出合う地点。
・皆の者、出合え。出合え。
※『現代国語例解辞典』より

道や川があわさる場合は「出合う」ですね。川ばかりでなく、登山をされる方は「道の出合い」というのはよく使われているのではないかと思いますが、道路にも用います。

人とは「出会う」ですが、ほかにも、物や出来事などで印象的なものに「めぐりあう」の意味であれば「出会う」を用います。

時代劇の「出合え!」は意図したことだから「合う」なのね。

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解釈が分かれる「出会う」と「出会う」

ところが、これとは別の立場をとるのが新聞表記の『記者ハンドブック』です。『記者ハンドブック』では、川は「出合う」とするほか、本や動物も「出合う」にして、人の場合にのみ「出会う」にするという立場です。ただし、人以外であっても特別な思いを込める場合は「出会う」にしてよいとしています。

『記者ハンドブック(新聞用字用例語集)』:人の場合のみ「会う」 ただし、人以外でも特別な思いを込める場合は「出会う」とする

では、公用文、NHK、議事録表記ではどうなっているのか、それぞれの表記辞書を調べてみました。

『公用文用字用語例集』:「出合う」の見出しなし。「出会う」のみ
『NHK漢字表記辞典』:「出会う」を一般的に用いる。「「出合う」とも」と記載
『標準用字用例辞典』:「出合う」の見出しなし。「出会う」は「友と出会う」を例示

このように、公用文や議事録においては、「出合い(金融用語)」はあるものの、そもそも「出合う」という見出しを載せていませんでした。このため、「人に会う」のほか、物や出来事であっても「であう」は「出会う」にすると解釈できます。

「出会う」という表現に込められた思いについて

このように解釈が分かれていると、自分が使っていないほうの表記を間違いだと感じることもあるのではないかと思いますが、解釈に違いがあることまず心得ておく必要がありそうですね。

私は、新聞表記の採用している「人以外でも特別な思いを込めるものは “出会う” にする」というのは大事なポイントではないかと思っています。そもそも「であう」という言い方自体が動物や物を擬人化した表現ですので、そこにはもう特別な思いが込められているんですね。

ですから、道や川の「出合い」は別としても、「ペットとの出会い」や「本との出会い」「この料理との出会い」などは「出会い/出会う」にするのがよいのではないかというのが私の考えです。そのあたりは語感の違いもあるかもしれませんので、感覚に合ったほうを選んでみてください。

僕は、ある映画との出会いが進路の決め手になったかも。

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出会い頭なの? 出合い頭なの?

「であいがしら」の表記も新聞表記の『記者ハンドブック』とその他で異なっています。『記者ハンドブック』では「出合い頭」としていますが、公用文、議事録、NHKともに「出会い頭」としています。ただ、NHKは新聞表記に配慮して「出合い頭も可」と書き添えています。

このようなことから、公務員さんであれば「出会い頭」、新聞関係の方は「出合い頭」で、あとは各自の判断におまかせということになりそうです。はっきりとお示しできなくて申し訳ありません。

「立ち会う」と「立ち合う」の違いは?

「立ち会う」とは?

「立ち会う」というのは「証人や参考人などとしてその場に居合わせること」ですよね。「査定に立ち会う」「立ち合い演説会」などと用います。出産に立ち会われたご経験がおありの方もいらっしゃると思います。

名詞形の「立ち会い」は、公用文の場合には「立会い」と書いてください。公用文独特の表記になります。また、法律用語としては、「立ち会い人」は「立会人」と表記します。

「立ち合う」とは?

「立ち合う」というのは「互いに競って勝負する」ことで、相撲や武道で用いられます。特に相撲では、両者向き合って、立ち上がった瞬間のことを「立合い」といいますよね。ですから、「出産に立ち合う」と書くと大変なことになってしまうので、その点だけ留意してくださいね。

まとめ

ここまで自分でまとめていても、わかりにくい文章になってしまったなと思いますが、それは自分自身が説明する根拠を十分にまだ得ていないためだと思います。「出会う」と「出合う」については、もっとわかりやすくお伝えできるように、これからも調べ作業を続けていきたいと思います。

ここまでお読みくださってどうもありがとうございました。