「あかし」は「証し」と書きます
「証明」という意味での「あかし」は「証し」と書いてください。「証」にしたくなりますが、名詞形であっても「証し」と送りがながを忘れないようにしてくださいね。「証さない」「証します」などと活用語にもなりますので、語尾を送らないといけないんです。「祭り」も名詞形であっても「祭」ではなく「祭り」にしますが、これも同じ理由によるものです。
ただ、「志(こころざし)」のように、名詞形は語尾を送らない特例扱いとなっているものもあるので混乱しますよね。でも、基本的には活用のあるものは名詞形でも語尾を送ります。「祭り」の場合は、お祭りの名前が「○○祭」という固有名詞になっていることがありますので、その場合はもちろん除きますが、「地域のお祭りが開催された」などの場合は「り」を送ってください。
「証し」に話題を戻します。常用漢字表を見ると、「証」という漢字には「ショウ」という読みしか書いてありません。しかし、新聞表記、議事録表記、放送表記のいずれにおいても、例外的に「あかし」は「証し」と漢字で書くこととしています。
(常用漢字表より)
証(證) |ショウ |証拠,証明,免許証
常用漢字表にないけれども例外的に漢字で表記するのは次のものがあります。
「証す」と「明かす」を比べてみよう
「証す」は「証明する」「事実を裏づける」ことです。ただ、「あなたの身分を証すものはありますか?」ではなく「身分証明書はお持ちですか?」のように言いますから、「証す」の出番はあまりないように思います。
一方、「証し」となると、例えば「友情の証し」のようにもう少しカジュアルに用いられています。「しるし」のようなニュアンスでしょうか。皆さんもふだんからお使いになっているのではないかと思います。
「あかす」には、ほかに「明かす」という表記もあります。こちらは「秘密を明かす」や「種明かし」のように、隠していたものを明らかにすることです。また、「明かす」には「夜を(寝ないで)過ごす」という意味もあって、「まんじりともせずに夜を明かした」などと使います。

「まんじり」はちょっとだけ寝ることだから、「まんじりともせずに」で一睡もしないことになるんだね。
「証し」や「証す」を例文で確認しよう
「証し」や「証す」を使って例文を作ってみます。送りがなを忘れないようにしてくださいね。
・愛の証しにと彼から思いがけないプレゼントをもらった。
・身分を証すものといっても、何も持ってこなかった。
・私の過去をみんなに明かすことはしないでほしい。
・王様の耳はロバの耳だったことを明かさないでいるのはつらかった。
「飽かす」と「あくまで」という表現のこと
「あかす」には「飽かす」という表現もあります。これは少し古い言い回しで、「飽きさせる」という意味なんです。でも、現在ではあまり用いられなくなっていて、「飽かさない」ではなく「飽きさせない」とするほうが圧倒的に多くなっています。
ただし、「あくまで」という副詞はよく用いますよね。「あくまで東大合格を目指すつもりです」などと用います。「あくまで」は、漢字で書くと「飽くまで」なんですね。
「飽」は常用漢字ですが、「あくまで」はひらがなで書きます。これはなぜかというと、公用文においては、読み手への配慮としてひらがなで書くものとして「あくまで」を挙げていて、その他の表記もそれに従っているからなんです。実際、「あくまで」は「飽きるまで」という意味は薄れているように思いますので、「あくまで」とひらがなで書いてくださいね。

「あくまで」って、漢字にすると「飽くまで」だったなんて知らなかった。