『ちはやふる』でみやびな世界を味わおう!
日本のアニメの中で、特におすすめな作品を紹介していくこのシリーズ、今回は『ちはやふる』です。『ちはやふる』は日本の「かるた」を題材にしたアニメです。「かるた」といっても、お正月にやる「いろはかるた」ではなく、百人一首を用いた競技かるたです。
私は『ちはやふる』を見るまで競技かるたのことを何も知りませんでしたが、見ているうちにどんどんはまってしまいました。アニメを見るだけで競技かるたのルールや百人一首の歌の内容まで知ることができるんですから、これは見ないわけにはいきません。ストーリーもとてもすてきですので、まだ見ていない方がいらしたら、ぜひぜひご覧になってみてくださいね。
『ちはやふる』とはどんな意味?
『ちはやふる』の主人公は千早(ちはや)という高校生の女子で、その脇を固めるのが太一(たいち)と新(あらた)です。そして、かるた部の仲間として、かなちゃんと机くんと肉まん君を迎え、彼ら6人を中心に物語は展開していきます。
三角関係の千早と太一と新はさておいて、かなちゃんの役割は重要で、古典オタクとして登場します。「百人一首」だけでなく、広く古典文学に精通していて、ところどころで句の意味や背景を語ってくれるのですが、それがとっても勉強になるんです。ずっとずっとかなちゃんの話を聞いていたくなります。
ちなみに、『ちはやふる』という題名は、「小倉百人一首」の十七首「ちはやぶる 神代も聞かず 龍田川 からくれなゐに 水くくるとは」から取ったものです。「ちはやぶる」は「神」の枕詞で「勢いの激しいこと」の意味だそうです。この句がどんな意味なのか、また、「ちはやぶる」と「あらぶる」との違いについても作中でかなちゃんが詳しく説明してくれているんですよ。
『ちはやふる』を見ると「一生懸命」が楽しくなる!
千早たちの所属する「かるた部」は高校の文化部の位置づけですが、体育会系のようでもあり、また、囲碁や将棋の世界のようでもあり、なんとも独特な世界です。
作品の途中で、ある先生が「一生懸命は楽しいぞ!」と口にされるシーンがあるのですが、私は、これこそがこの作品を貫くテーマではないかと思いました。何事も楽しめるようになるまでには地道な積み重ねが必要です。もう少しで楽しくなるのに、途中でやめてしまったら苦しい記憶しか残りません。実力のある人ほどコツコツと努力しているんですよね。高校時代をなんとなくやり過ごしてしまった私にとっては、こんな高校生活を送りたかったなと、ちょっとうらやましくなりました。
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インクルーシブな競技かるた
かるたは日本の伝統文化でありながら、実にインクルーシブな競技です。それというのも、「男女の別なく、体格の別なく、知性と体力の別なく、年齢の別なく(作中の顧問の先生談)」競うものだからです。実際に作中でも、小さい女の子から指導者の立場の人まで、さまざまな世代がかるたの試合に挑んでいました。
もちろん、高校生の大会や級別の大会などの枠組みはありますが、男女が一緒に同じ立場で競う競技はあまり多くはありません。その意味で、競技かるたは古典的でありながら、先進的な考えをしていることに気づかされます。
「覚える力」と「忘れる技術」
インクルーシブな競技ではありますが、記憶力がものをいう競技ですので、得意、不得意はありそうですね。それと、耳がいいこと、運動神経がいいことも有利に働きます。もちろん経験や戦略も重要です。
一日のうちに何試合もすると、前の対戦の配置を忘れて新しい配置を覚えなければなりません。そのために、「忘れる技術」も必要になるんです。太一が試合後に校歌を歌っていたのは記憶を消去するためでした。新は記憶を消すために百マス計算をするといっていましたが、それもまたすごいことだなと思います。記憶力がいい人というのは、上手に忘れられる人のことだったんですね。
競技かるたのルールをざっくりと
競技カルタのルールをざっくりとご紹介したいと思います。まず、「百人一首」ですから、読み札、取り札ともに100枚あります。読み札には百人一首の句と作者名が書かれています。読手(どくしゅ)さんは箱の中に読み札を入れておき、ランダムに取り出しながら読み上げていきます。
取り札は2つに分けて、片方の50枚は箱にしまいます。対戦者は残りの50枚をさらに2つに分けて、自分の25枚をそれぞれ好きなように自陣に配置します。取り札には下の句しか書かれていないので、読手さんが上の句から読むのを聴いて、いかに早く下の句の札を取るかという競技です。
暗記時間が設けられていて、どこにどの札があるのか暗記します。取り札のうち、使わなかった50枚は空札(からふだ)といって並べませんが、読手さんは全部読み上げるので、空札が読み上げられたときに間違えて並べた札にさわってしまうとお手つきになります。
取った札は自分の脇に置いて重ねていきます。敵陣の札を取ったら相手に自陣の札を1枚送ります。お手つきした場合は相手から札が送らます。こうやって、自陣の札が早くなくなったほうが勝ちという競技です。
競技かるたにおける「序歌」とは?
読手さんは、読み札を読み上げる前に、「序歌(じょか)」といって決まった句を詠み上げます。競技者はこの句が詠み上げられている間に体勢を整えます。いわば、「位置について、よーい…」のような役割を果たす句ですね。序歌は次の句が採用されています。
(序歌)
なにわずに さくやこのはな ふゆごもり いまははるべと さくやこのはな
難波津に咲くやこの花冬ごもり今は春べと咲くやこの花
「いまははるべと さくやこのはな」の部分だけ繰り返したら読み札を読みます。
競技かるたにおける「決まり字」とは?
上の句を聞いて下の句を当てるゲームですので、できるだけ早く特定したほうが有利です。百人一首には、「ここまで聞けば下の句がわかる」部分があって、それを「決まり字」といいます。決まり字は「一字決まり」から「六字決まり」まであります。「六字決まり」は読み上げ終わるまでの時間が長いので、山を張ることが多いため、「大山札(おおやまふだ)」と呼ばれます。
百人一首の決まり字と読み方と歌の意味を覚えちゃおう
「小倉百人一首」を知れば『ちはやふる』も百倍楽しくなるはずです。もちろん知らなくても十分に楽しめますけどね。そこで、決まり字と読み方と歌意、そして作者名と性別をまとめてみましたので、興味があったらこちらのページも参照してみてくださいね。