「達」と「たち」の使い方 「友達」と「私たち」はどう違う?

表記の決まりごと

「たち」と「達」の使い分けについて考えてみましょう

「友達」や「私たち」という表現は頻繁に用いますが、「ともだち」は「友達」と漢字で書くのに、「わたしたち」は「私達」とせずに、「たち」をひらがなにして「私たち」にします。これはどうしてなのか疑問に思ったことはありませんか? 今回は「私たち」の「たち」と友達の「達」について考えてみたいと思います。

「わたしたち」は「私達」ではなく「私たち」と書きます

接尾語の「たち」は人を表す名詞や代名詞に付いて複数であることを示します。「私たち」「仲間たち」「学生たち」などと用いますが、接尾語の場合はみんなひらがなで表記するんですね。これは公用文だけでなく、新聞表記ほか、すべてに共通している使い方です。人だけではなく、動物や擬人化したものに対して「たち」を用いることもあります。

・私たち
・仲間たち
・学生たち
・彼女たち
・猫たち
・本たち

「友達」だけどうして漢字で書くの?

では、どうして「友達」は「友だち」にしないのでしょうか。疑問に思いますよね。

「友達」を考える前に、まず「友」について見ていきましょう。いつも親しく交わっている友人が「友」ですよね。「友」が複数の場合は「友たち」と濁らず用います。これが接尾語としての「たち」です。「友」の複数形が「友達」ではないんですね。

「友達」の「達」も、もともとは複数であることを表す接尾語でしたが、現在では「友達」は単数でも用いられています。「友達」そのものが「友人」という意味です。そのため、「友達」の「達」は接尾語ではないものとして扱って「友達」と漢字で書くというわけです。「友達」は熟字訓なんですね。

なるほど。「友達」の「達」は複数の意味がなくなっているんだね。

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接尾語の「ら」や「ども」もひらがなにします

「私」など、人を複数形にする接尾語は「たち」のほかに「ら」もありますよね。「私ら」「仲間ら」「学生ら」などと用います。自分たちのことであればへりくだって「ども」を使うこともありますが、他人に「ども」を用いると失礼になってしまいますので通常は用いません。

・私ら
・仲間ら
・学生ら
・彼女ら

・私ども

接尾語の「~げ」もひらがなで書きます

ほかの接尾語についても見ていくことにしましょう。まず、様子を表す接尾語の「げ」ですが、これもひらがなにします。「恥ずかしげ」や「涼しげ」の「げ」ですね。「恥ずかし気」「涼し気」とは書きません。

・恥ずかしげな表情を浮かべた。
・今日は涼しげな服を着ているね
・惜しげもなくお金を使った。
・悲しげな後ろ姿をしていた。
・満足げに去っていった。

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接尾語の「~み」もひらがなで書きます

性質や程度を表す接尾語の「み」もひらがなにします。「厚み」「重み」などの「み」ですね。「厚味」「重味」などとはしません。

・かなり厚みがある本だな。
・先生の助言は重みがあります。
・ほんのり赤みがかっておいしそう。
・この野菜はちょっと苦みがあります。
・温かみのあるもてなしを受けました。

「甘味」じゃなくて「甘み」なのね。

ただし、漢語に続く場合は接尾語であっても「味」を用います。ですので、前の語句が熟語の場合は「現実味」や「真実味」などとしてくださいね。

・いよいよ現実味を帯びてきた。
・彼の話は十分に真実味があるよ。

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接尾語の「~ぶり」もひらがなで書きます

物事の様子や状態を示す「ぶり」もひらがなにします。「話しぶり」「説明ぶり」などの「ぶり」ですね。「話し振り」「説明振り」とはしません。

・見事な話しぶりでしたよ。
・丁寧な説明ぶりで感心しました。
・彼の生活ぶりが気になります。
・あの日の活躍ぶりに目を見張った。

※強調するために「っぷり」になることがあります。
・いい男っぷりだね。
・いい女っぷりだね。
・貫禄のある歌いっぷりだった。
・気持ちのいいほどのお金の使いっぷりだ。

接尾語の「~ぶる」もひらがなで書きます

そのようにふるまう、ふりをすることの意味を表す接尾語の「ぶる」もひらがなにします。「もったいぶる」「学者ぶる」の「ぶる」ですね。「もったい振る」「学者振る」とは書きません。

・もったいぶらないでよ。
・学者ぶった態度が気に入らない。
・大人ぶったってここでは通用しないよ。
・偉ぶるから嫌われるのよ。

まとめ

今回は接尾語についてまとめてみました。同じ「たち」でも、「友達」は漢字ですが、「私たち」は漢字にしないのは、接尾語はひらがなにするという原則のためだったんですね。