「活(い)」かす」という読みは常用漢字表にないんです
「いかす」には複数の意味があって、「殺さないでおく」という意味はもちろん「生かす」ですが、「有効に活用する」とか「特性などを引き出して役立てる」という意味もありますよね。そういう場合には「活かす」と書きたくなりますが、常用漢字表には「活」の読みは「カツ」しかありません。どうすればいいのでしょうか。
(常用漢字表より)
活 |カツ |活動,活力,生活
2024年版の「公用文作成の考え方」には、「表にない漢字や、漢字が表にあっても採用されていない音訓は、原則として用いない」とあります。それでどうするかというと、「ひらがなで書く」か、「音訓が同じで意味の通じる別の常用漢字で代用する」か、いずれかになります。つまり、「いかす」か「生かす」かどちらかを用いることになるんですね。
公用文の表記辞書である『最新公用文用字用語例集』では、ひらがなで「いかす」とする立場をとっていて、「特性をいかす」を用例として挙げています。一方、新聞表記の『新聞用字用語集』では「生かす」を採用しています。
公用文:いかす
新聞表記:生かす
このように表記辞書によって立場が異なるわけですから、つまりは「いかす」でも「生かす」でも、どちらでもいいのではないでしょうか。
「いきいき」なの? 「生き生き」なの?
確かに国の方針としては「いかす」か「生かす」かのどちらかですが、あくまで基準であって、「活かす」を使ってはいけないというわけではありませんし、実際、「活かす」という表記はたくさん目にします。
「魚肉などの鮮度」のことや「活気がある」ことに用いる「活き」は、「いき」か「生き」になりますが、魚の場合には「活魚」との整合から「活き」がよく用いられています。このように、実際には「活き」の表記が浸透していますので、読み違えたり何か支障になることはありません。
「いきいき」というときには、公用文でも新聞表記でも、基本的には「生き生き」にするように示していますが、「いかす」がどちらでもいいのですから、「いきいき」でも「生き生き」でもどちらでも、文脈に応じて使ってください。見出しなどであれば、あえて「イキイキ」にすると、張り切っている感じになりますね。
「格好がいい」の意味の「いかす」はもはや死語?
「いかした人」という表現はあまり用いられなくなったように思いますが、この場合の「いかす」は「格好がいい」とか「しゃれている」という意味なんですね。これはひらがなで「いかす」と書きます。なぜなら、「生かす」ではなく「粋(いき)」が変化したものだからです。
「いかす」がよく用いられたのは昭和の時代で、今ではすっかり「イケてる」という語に置き換わってしまいました。もしかしたら「イケてる」という言い方すらも、少し古くなっているのかもしれません。これからが「イケてる」が使い続けられるか、「いかす」のように死語になるかの分かれ道です。
一方で、「かっこいい」という言い方は、俗語から形容詞に昇格しています。もちろん「かっこいい」は、そのまま「格好がいい」ことですが、外見のよさだけでなく、人柄であったり行動であったり、内面的なものにも「かっこいい」を使います。このように非常に使い勝手がよいために長く愛されているのかもしれません。
まとめ
・「活かす」という読みは常用漢字表にないため「いかす」か「生かす」を用いる。
・「活かす」を用いたい場合には初出にルビや読みがなを添える。
・公用文では「生き生き」と書くが、ひらがなやカタカナを用いてもよい。
・「格好がいい」という意味の「いかす」はひらがなにする。
今回は「いかす」「生かす」「活かす」の使い分けと、「格好がいい」意味の「いかす」についてまとめてみました。最後まで読んでいただきありがとうございました。