「いかす/生かす/活かす」の使い分け:「格好がいい」の「いかす」は死語なの?

表記の決まりごと

はじめに

「いかす」というときに、「いかす」も「生かす」も「活かす」もあって、どう書くのが正解なのか迷ったりしませんか?

「いかす」には、大きく3つの意味があります。

①命を保たせる。生きたままにする。
②能力を発揮させる。性能を引き立たせる。
③効果が出るように使う。活用する。

このうち、③の「活用する」という場合には「活かす」と書きたくなりますし、実際、そのような表記を見かけることもあります。でも、常用漢字表を見ると「活」には「カツ」の読みしかないんですね。どうすればいいのでしょうか。

(常用漢字表より)
活  |カツ   |活動,活力,生活

今回は、このように「活用する」という意味の「いかす」はどのように表記するのがいいのか調べてみることにしました。

各表記辞書の立場

令和4年1月に示された「公用文作成の考え方(建議)」においては、「活」は常用漢字であるけれども、「いかす」という読みはないため、「生かす」という漢字で代用するか、「活かす」にする場合はルビを用いるように示しています。

ただ、現時点においては、公用文の表記辞書である『最新公用文用字用語例集』では、ひらがなで「いかす」とする立場をとっていて、「特性をいかす」を用例として挙げています。

一方、新聞表記の『新聞用字用語集』では「生かす」を採用していますし、NHKの『NHK漢字表記辞典』も同様です。

公用文:いかす
新聞表記:生かす

このように表記辞書によって立場が異なりますので、「いかす」でも「生かす」でも、語感に合うほうを用いていいんですね。

また、常用漢字表にないものであっても、初出にルビや読みがなを添えれば自由に使うことができますので、「活かす」も使えます。「活かす」にしたい場合は、そのあたり工夫して使ってみてください。

ただし、「活かす」の使い方には注意しなければならない点がありますので、それについては次の項で触れたいと思います。

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「いかす/生かす/活かす」の使い分け

「いかす」には3つの意味があると書きましたが、どのように用いるか、それぞれ用例で確かめてみましょう。

①命を保たせる。生きていさせる。(生かす)
・こんなやつは生かしておけない。
・死者を生き返らせることはできない。
・魚を生かしたまま持ち帰りたい。
・生かさず殺さずのひどいやり方だ。

②能力・性能などを発揮させる。引き立たせる。(生かす)
・失敗を次に生かしてください。
・あなたの英語力を生かしてほしい。
・山菜の苦みを生かした料理を作る。
・素材のうまみを生かしたい。

①と②については「生かす」で特に問題ないと思います。

③効果が出るように使う。活用する。(いかす/生かす/活かす)
・規格外の野菜を活かして加工品を作る。
・余暇を活かして副業を始めました。
・暑さを活かしたイベントを開催したい。
・田舎らしさを活かして人を呼び込もう。

③については、基本的に「いかす」または「生かす」にしますが、用例で示したように「活かす」と書くこともできます。ただし、常用漢字以外のものを用いる際は、初出にルビや読みがなを添えるのが原則です。

「活かす」を人間には用いない理由は?

では、「生かす」と「活かす」はどのような点が異なるのか、例文で確かめてみましょう。

生かす:山菜の苦みを生かした料理を作る。
活かす:規格外の野菜を活かして加工品を作る。

この2つを比べてみると、山菜の苦みというのは本来の性質で、その本来の性質を引き立てたり際立たせるのが「生かす」です。

一方、「規格外の野菜」というのはあまり注目されていないものですが、それを活用して新たな価値を付与するのが「活かす」のイメージです。

両者に明確な違いがあるわけではありませんし、重複する部分もありますが、ざっくりいうとこのようになります。

ということは、「活かす」は人間に対して用いることは避けるべきだということがおわかりいただけるかと思います。本来有している能力を発揮してもらうという意味の場合には「生かす」にしてくださいね。

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「格好がいい」の意味の「いかす」はもはや死語?

「いかした人」という表現はあまり用いられなくなったように思いますが、この場合の「いかす」は「格好がいい」とか「しゃれている」という意味なんですね。これはひらがなで「いかす」と書きます。なぜなら、「生かす」ではなく「粋(いき)」が変化したものだからです。

「いかす」がよく用いられたのは昭和の時代で、今ではすっかり「イケてる」という語に置き換わってしまいました。もしかしたら「イケてる」という言い方すらも、少し古くなっているのかもしれません。これからが「イケてる」が使い続けられるか、「いかす」のように死語になるかの分かれ道です。

一方で、「かっこいい」という言い方は、俗語から形容詞に昇格しています。「かっこいい」は、そのまま「格好がいい」ことですが、外見のよさだけでなく、人柄であったり行動であったり、内面的なものにも「かっこいい」を使います。このように非常に使い勝手がよいために長く愛されているのかもしれません。

まとめ

・「活かす」という読みは常用漢字表にないため「いかす」か「生かす」を用いる。
・「活かす」を用いたい場合には初出にルビや読みがなを添える。
・公用文では「生き生き」と書くが、ひらがなやカタカナを用いてもよい。
・「格好がいい」という意味の「いかす」はひらがなにする。

今回は「いかす」「生かす」「活かす」の使い分けと、「格好がいい」意味の「いかす」についてまとめてみました。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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