「横着」とはどういう意味? どうして「横」なの?

気になることば

「横着」はどんな意味?

「横着(おうちゃく)」ということばを聞いたり書いたりしたことはあるでしょうか。「会社のお金を自分のものに…」、いえいえ、それは横領ですよ。「横着」とは「怠ける」といった意味で、日常会話ではあまり用いないかもしれませんが、物語の中に出てきたりすると、少し古めかしいところが逆に新鮮に感じられますよね。

「横着」を調べてみると、辞書によって説明がさまざまでしたが、意図するところは共通しています。ただ、現在では、ずうずうしいというよりも、特に明鏡国語辞典の「楽をしてことをすまそうとすること」という意味で用いられていることが多いように思います。

〔横着とは?〕
・平気でずうずうしくしていること。ずうずうしく構えて怠けること。(岩波国語辞典)
・仕事を積極的にしないで、分け前だけは一人前に主張する様子。(新明解国語辞典)
・ずうずうしくてずるいこと。楽をして得をしようとするさま。(現代国語例解辞典)
・楽をしてことをすまそうとすること。ずうずうしくてずるいこと。(明鏡国語辞典)

(文例)
・この業務は横着を決め込むことにするよ。
・兄は横着者で、電話一本よこさないの。
・信用を失ったのは、僕が横着していたからだろうね。

「横」には「勝手気まま」という意味があります

でも、どうして「横」なんでしょうか。気になりますよね。そこで「横」を漢和辞典で調べてみたところ、「横」には「枠をはみ出る」とか「道理に従わず勝手である」という意味があるようです。なるほど、それで「横行(おうこう)」や「横暴(おうぼう)」などと用いるわけですね。

横行:勝手なふるまいがはびこること。
横暴:勝手なわがままをしたり乱暴を通すこと。

「横着」の「着」はぴったりくっつくことですから、自分勝手にものぐさを決め込み、その場にぴったりくっついて動かずにいるのが「横着」のイメージです。

「縦」にも「勝手気まま」という意味があります

では、「縦」にはどういう意味があるんでしょうか。さぞやご立派な意味なのだろうと思って調べてみたところ、なんと「縦」にも「勝手気ままにする」という意味があるようです。

でも、「縦」の場合は、「欲しいままにする」「思うままにする」という意味の「勝手気まま」なんですね。「横」は「言う事を聞かない」という意味ですが、「縦」は「言うことを聞かせる」という意味です。なるほど、それで「操縦(そうじゅう)」や「縦覧(じゅうらん)」などというように用いられるというわけです。

操縦:思うように操り動かすこと。
縦覧:思うように自由に見ること。

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「横着」に意味が似ていることばは?

同じ「着」を用いたことばに「無頓着(むとんちゃく/むとんじゃく)」がありますよね。「頓着(とんちゃく/とんじゃく)」は関心を持つことですから、「無頓着」で「ものごとをあまり気にかけないこと」という意味になって、「着るものには無頓着だ」などと用います。

頓着:深く心にかけること。関心を持つこと。
無頓着:物事をあまり気にかけないこと。

「横着」は、わかっていてそうするものであるのに対して、「無頓着」は無意識です。誰かに迷惑をかけることもなく、わざとでもなく、いわばその人の性質のようなことですので、その点で「横着」とは意味は少し異なります。

「横着」に似たことばは、ほかに「ものぐさ」「不精(ぶしょう)」「怠慢(たいまん)」などがあります。なぜか、どれも愛着が湧いてしまうのは、人間の基本的な性質だからなのかもしれません。

ものぐさ:物事をするのに面倒がること。
不精(ぶしょう):なまけること。精を出さないこと。
怠慢(たいまん):なまけて仕事や務めをおろそかにすること。

まとめ

最後まで読んでいただきありがとうございました。今回は「横着」について調べてみましたが、「横」はやんちゃ、「縦」は俺さまキャラだということがわかりました。漢字にもそれぞれ性格があるんですね。ことばっておもしろい!