「デジタルトランスフォーメーション」がなぜ「DX」なの?

気になることば

「DX」ってデラックスのことじゃないの?

数年前から「DX」というワードが頻繁に出てきますよね。そろそろ「デジタルトランスフォーメーション」のことだと定着してきた感はありますが、ずっと「DX」を「デラックス」の意味で用いてきただけに、最初に耳にしたときはなんだか混乱しました。

「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」ならDTじゃないの? と思った人も多いのではないかと思います。私もそう思いました。でも、すでにプログラミング用語などで「DT」が使われていたため、それと区別するために「DX」が採用されたという事情があるそうでです。

それにしても、どうして「Transformation」が「X」になったのか、そのあたりをきちんと理解しておかないと、この先もずっと曖昧なままになりそうなので、今回は「DX」についてまとめてみることにしました。

「DX」は「デジタルによる変革」のことです

「DX」は「デジタルの力によって世の中をよりよいものへと変革していこう!」ということですから、ざっくりと「デジタルによる変革」と覚えておけば間違いありません。

でも、何の略称なのかきちんと把握しておかないと不安ですよね。そこで、どうして「トランスフォーメーション」が「X」になったのか、確認していくことにしますね。

略称としての「X」の意味は?

略称を用いるとき、日本語でも英語でも単語の頭文字を取るのが一般的ですよね。「中医協(中央社会保険医療協議会」や「経団連(日本経済団体連合会)」のように用いますし、世界保健機関は「WHO(World Health Organization)」、国際オリンピック委員会は「IOC(International Olympic Committee)」です。

そう考えると、「DX」は何の略なのだろうと疑問に思うわけですが、英語では一定の接頭辞を「X」で代用することがあるそうなんですね。

例えば、服のサイズで大きいものを「X」で表現しますよね。この場合の「X」は「エクストラ(extra)」の略ですから、「XL」だったらエクストララージサイズ、つまり、「特別なLサイズ」になります。

それと同じように、「トランス(trans)」という接頭辞も「X」で代用するそうなんです。そうやって代用して「トランスフォーメーション(tranceformation)」を「X-formation」と書いていて、さらに短く「X」だけが残ったということなんですね。

transformation
  ↓
X-formation
  ↓
  X

どうしてトランスが「X」なの?

どうして「トランス(trans)が「X」なのかというと、transは「~を越えた」とか「~の向こう側に」の意味なので、向こう側にクロス(cross)する、つまり横切って進んでいくイメージがありますよね。「X」という文字も、記号として見てみれば、なんだか道路が交差しているように見えませんか? それでtransの代用として「X」が用いられるのだそうです。

「トランス」から始まることばはたくさんありますが、確かにどれも移動したり変換するという意味です。その中で、「トランスフォーメーション」は「変革」と訳されています。

トランスファー 移動
トランスレーション 翻訳
トランスポート 運搬
トランスシップ 積み替え
トランスミッション 変速機
トランスフォーメーション 変革

フォーメーションというのは「構成」とか「編成」のことで、「フォーメーションを変えてみよう」などと用いますよね。前述したように、「トランス」というのは「~を越えた」とか「~の向こう側に」の意味ですから、「トランスフォーメーション」で「今の世の中の構成を超越する」という意味になるんですね。

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深い意味がある「X」の正体とは?

私たちは「X」というと、特に数学において親しんでいて、未知の数をXに置き換えたり、X軸・Y軸というように用いたりしていますよね。ほかにも「容疑者X」のように、謎の人物をXといったりして、「X」というアルファベットはなんだか特別な感じがします。

この特別感は英語圏の人にとってはなおさら強いようです。英語における「X」の役割には次のようなものがありました。

① アルファベットの24番目の文字
② ローマ数字の10としての「X」
③ 未知数や未知の人物としての「X」
④ 記号としてクロスするという意味の「X」
⑤ 手紙やカードのキスのしるしとしての「X」
⑥ 投票用紙などの選択のしるしとしての「X」
⑦ テストなどのチェックのしるしとしての「X」

「トランスフォーメーション」の「X」には、このうちの②と③、つまり、「未知のもの」という意味と、「道を越えて進んでいく」という意味を持たせているんですね。

GXは「グリーンX」のことです

最近、DXに加えて「GX」なるものも登場していますが、これは「グリーントランスフォーメーション(Green Transformation)」のことです。つまり、「新しい時代の変革」をデジタルによって行うのが「DX」、グリーンによって行うのが「GX」というわけです。

ここでのグリーンは木や草花のことではなくて、温室効果ガスを発生させないクリーンエネルギーのことを指しているようです。こうしたエネルギーによって世の中を変革していこうという取り組みが「GX」というわけです。

まとめ

・「DX」とはデジタルトランスフォーメーションのことです。
・「DX」はデジタルによって変革をもたらそうという意味です。
・「X」はトランスという接頭辞を代用するときに用います。
・「GX」はクリーンエネルギーによって変革を起こそうという意味です。

ここまで読んでいただきありがとうございました。これでDXといったとき、デラックス以外の意味も押さえられたでしょうか。DXによってどんなふうに世界が変わっていくのか楽しみであると同時に、私の場合は、流れから振り落とされないようにしないといけないなと思っているところです。