「被爆」と「被ばく」の違いを確認しましょう
福島第一原子力発電所の事故以降、私たちは「被ばく」という単語をとても多く目にするようになりました。また、日本は唯一の被爆国ですから、「被爆」という言葉にもずっと触れてきています。でも、どうして「被爆」と「被ばく」というように書き方に違いがあるのでしょうか。ここで確認の意味も込めて、それぞれの書き分けについて確認することにしたいと思います。
日偏の「被曝」は「被ばく」が原則です
まず、「火」偏の「被爆」ですが、これは「原爆や水爆による攻撃を受けること、また、それによる放射能の害をこうむること」の意味です。ですから、とても残念なことですが、広島・長崎の場合は「被爆」になります。
一方で、「日」偏の「被曝」は「放射線にさらされること」の意味です。「曝」は「曝す(さらす)」という意味ですから、「被曝(ばく)」だと「さらされる」です。「放射線被ばく」としなくても、「被ばく」だけで「放射線にさらされること」の意味になります。つまり、爆撃ではない形で放射線を浴びた場合が「被ばく」なんですね。
このように、「火」偏と「日」偏の違いがありますが、「爆」は常用漢字なのに対して、「曝」は常用漢字表にない表外字ですから「被ばく」と書きます。逆にいえば、「被ばく」と書いてあれば、それは「被曝」のことを指しているというわけです。これは、公用文でも新聞表記でも、NHKの表記でも同じです。

「さらされる」場合は「被ばく」と書けばいいのね。
必ず「被曝」は「被ばく」にするの?
ただ、議事録表記の手引きである『標準用字用例辞典』では、「被曝」もそのまま漢字で表記するように示しています。表外字でも「曝」を用いて「被曝」とするのはなぜかというと、議事録は「ある程度の専門的な知識を有する人」が読むものとして分類され、法令等で用いられているものは表外字でもそのまま用いるためなんですね。もちろん、議事録を読む対象が広い場合や一般の人にも読んでほしい場合は「被ばく」としたほうが親切です。
このようなことから勘案すると、執筆にあたっては、読み手への配慮から「被ばく」にするのが好ましいけれども、読む対象が限定的な場合は「被曝」でも大丈夫ということになります。表外字を用いる場合は、念のため初出の際にルビやふりがなを添えれば、より原則に忠実な表記となります。
「被ばく」について、もう少し詳しく
「被ばく」については原子力発電所の事故が取り沙汰されていますが、それだけではなく、放射線を使った実験などでも起こりますし、自然放射線というものがあって、飛行機に乗っただけで通常よりも多く被ばくしますし、普通に暮らしていても微量に被ばくしていることになります。
つまり、「被爆」というのは非常に限定的であるのに対して、「被ばく」はとても身近なものなんですね。地球上で生きていれば微量の被ばくは自然なことですが、ただ、量が多いと悪い影響があります。何でも過多というのはよくないものですが、放射線の場合、多量に浴びると深刻な影響が出てしまうので問題視されているんですね。

レントゲン検査だって少し被ばくするし、有益なことにも使われているのよね。
「被爆」や「被ばく」を使って短文を作ってみよう
「被爆」や「被ばく」を使って短文を作ってみましょう。
・広島に行って被爆した建物を見学してきました。
・低線量被ばくの影響ってどのくらいあるんだろう。
・キュリー夫人の死因は被ばくによるものだったんだって。

「被爆」と「被ばく」は完璧にマスターしたよ。日本人としては当然だけどね。
まとめ
日本が唯一の被爆国であり続けることが平和のために重要なことはもちろんですが、被ばくについての基本的な知識を得ておくことも大事なことかもしれません。「被爆」と「被ばく/被曝」の表記については、違いを意識して、それぞれふさわしい表記を選んでみてくださいね。