「是非」と「ぜひ」は書き分けたほうがいいの?

知りたかったモヤモヤ語

「是非/ぜひ」には名詞と副詞があります

「ぜひ」というときに、「是非」と漢字で書くべきでしょうか。ひらがなにするのがいいのでしょうか。今回は「ぜひ」について確認していきたいと思います。

「ぜひ」といっても、名詞の「是非」と副詞の「ぜひ」がありますよね。「是非を問う」の「是非」は名詞ですし、「ぜひ遊びにきてね」の「ぜひ」は副詞です。

・この法案の是非を問いたい。(名詞)
ぜひ遊びに来てください。(副詞)

結論からいうと、名詞の「是非」は漢字で、副詞の「ぜひ」はひらがなで書いてください。ただし、公用文だけ少し扱いが異なるので注意が必要です。

公用文とその他で扱いが分れる「ぜひ」と「是非」

副詞の「ぜひ」はひらがなにするのが一般的で、これは、新聞表記だけでなく、議事録表記、NHKの表記ともにそのように用いることとしています。

ただ、副詞でも「是非」と漢字で書くのが公用文です。公用文でも、広報などであれば「ぜひ」のほうがふさわしいのではないかと個人的には思いますが、原則としては漢字になっていますので、それぞれのお立場で好ましい表記を用いてくださいね。

・ぜひ、美術館に足を運んでみてください。(新聞 議事録 NHK)
・是非、美術館に足を運んでみてください。(公用文)

副詞の「ぜひ」は一般的にはひらがなにします

繰り返しになりますが、副詞の「ぜひ」は一般的にはひらがなにします。この場合の「ぜひ」は、強い要望や希望をあらわすことばで、日常生活においてとてもよく用いているのではないかと思います。

「ぜひ」を強調するために「ぜひぜひ」などと重ねて用いたり、「ぜひとも」という言い方をすることもあります。

・ぜひいらっしゃってください。
・ぜひぜひ読んでみてくださいね。
・ぜひとも味わっていただきたい。

公用文での副詞の扱いについて

公用文においては「動詞、副詞、形容詞は、漢字で書くことを基本とする」としていて、副詞としての「是非」も漢字で書くものに含まれます。

ただし、副詞は全部漢字で書くのかというと、そうではなくて、公用文においてひらがなにする副詞として示しているのは次のとおりです。この中に「是非 → ぜひ」がありませんから漢字で書くというわけです。

色々 → いろいろ
概ね → おおむね
沢山 → たくさん
丁度 → ちょうど
余程 → よほど
自ずから → おのずから
※公用文においてひらがなにする副詞としては、ほかに「いかに/いずれ/かなり/ここに/とても/やがて/わざと/わざわざ」が例示されています。

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名詞の「是非」はどれも漢字で書きます

公用文だけでなく、新聞も議事録もNHKも、すべて共通して漢字表記にするのは名詞としての「是非」です。

名詞の「是非」は「良いことと悪いこと」や「正しいことと正しくないこと」の両方をまとめた言い方で、「物事のよしあし」という意味で用いられます。「是」が道理にかなっていること、「非」がそうではないことを示していますので、「是」と「非」をばらばらにして、「是と非を判断する」などとも用います。

・港湾開発の是非を問いたい。
・この政策の是非を論じる場が欲しい。
・是非を論じてばかりで一向に進展しない。

「是非もない」ってどういう意味?

ついでに「是非」に関する慣用句を確認しておくことにしましょう。

「是非もない」とは「いいも悪いもない」ということですから、「しかたがない」とか「やむを得ない」という意味になります。「是非もない」と同じ意味で「是も非もない」という言い方もあります。

・親に反対されたら是非もない。
・みんながいいなら是非もないことだよ。
・資金が底をついたので是も非もなくなった。

「是々非々」とはどういう意味?

「是々非々」とは、「良いことは良いこと、悪いことは悪いこととして、公平に判断する」という意味です。

・是々非々主義
・是々非々で議論しなくてはならない。
・しがらみを捨てて是々非々でお願いします。

まとめ

副詞とは飾りのことばですが、「ぜひ!」とか「ぜひぜひ!」などと単独で用いることも多いですよね。思いが強いと「ぜひぜひぜひ!」と、つい重ねたくなります。

今回は「是非」と「ぜひ」の書き分けについてまとめてみました。公用文は名詞でも副詞でも「是非」と書きますがが、そのほかの場合は「是非」と「ぜひ」を、ぜひ使い分けてみてくださいね。