「色々」は「いろいろ」とひらがなで書きます
「いろいろ」というのはとてもよく用いる言葉です。「いろいろありますよね」と慰めたり、「いろいろ事情がありまして」と言い訳したり、「いろいろやってみたら?」と無責任に励ましたりしますよね。
「いろいろ」は「色々」なのか「いろいろ」なのかというと、ひらがなで「いろいろ」と表記します。これは、公用文でも新聞表記でも、議事録表記でもNHKでもそのようにしていますので、特にこだわりがなければ「いろいろ」とひがなで表記してください。
「いろいろ」の意味はいろいろあります
「いろいろ」は副詞や形容動詞として用います。用例としては以下のとおりですが、意味や働きによって表記が変わるわけではありませんので、どれも「いろいろ」と書いてくださいね。
「あれこれ」の意味
いろいろ(と)話を聞かせてほしい。
いろいろ(と)お世話になっております。
いろいろ(と)考えてみた結果です。
「さまざま」の意味
いろいろな考え方がありますよね。
いろいろな国から集まっています。
いろいろなことを経験したほうがいい。
「いろいろ」の語源は?
「いろいろ」の語源ですが、もともとは「色」がいっぱいあることを指していたようです。「色々」は「色」の畳語(じょうご)であることからも、それは想像に難くないところです。
「いろいろ」は、平安時代には、花、木の葉、織物、紙、玉、糸などが色とりどりであることを指していたものが、だんだん種類が多いことを指すようになり、ついには「いろんな」という連体詞が派生するに至ったんですね。ですから、「いろいろ」を「色々」と書いてもあながち間違いではないと思いますし、そのほうが語源に近いといえるかもしれません。
ただ、現在では、種類が多いことを示す「さまざま」という意味のほかに、「あれこれ」という意味でも使われていますし、公用文はじめ各表記辞書において、表記の基準として「いろいろ」とひらがなにするように示していますので、そのことは念頭に置いておいていただければと思います。
「色んな」もひらがなで「いろんな」と書きます
「いろいろな」という言い方が変化したものに「いろんな」があります。口語では「いろいろな」より「いろんな」を用いるほうが圧倒的に多いのではないでしょうか。これも「色んな」ではなく「いろんな」にします。
ただし、作文やレポート、論文など、書き言葉としては「いろんな」は不適切ですので、あらたまった文章を書く場合は「いろいろな」と書いてください。そのほうがすっきりしますし、読み手にきちんとした印象を与えます。
(話し言葉)
いろんな考え方が尊重されることってすごく大事だと思うんですよ。
↓
(書き言葉)
いろいろな考え方が尊重されることはとても大事だと思います。
公用文における副詞の扱い
公用文においては「動詞、副詞、形容詞は、漢字で書くことを基本とするが、一部のものは仮名で書く」として、「副詞のうち仮名で書くもの」を次のように示しています。ここに「色々」は「いろいろ」にすると明示されています。
色々 → いろいろ
概ね → おおむね
沢山 → たくさん
丁度 → ちょうど
余程 → よほど
自ずから → おのずから
ただ、どうしても理解できないのが、公用文では「さまざま」は「様々」と書くんですね(新聞などはさまざま)。それなのに「色々」は「いろいろ」にするということですから、どのあたりが漢字にするかひらがなにするかの判断基準なのか、私にはよく理解できていません。もちろん、公用文を作成する立場以外の方であれば、「いろいろ」も「さまざま」もひらがなで大丈夫ですので、あまり深刻にならなくてもよさそうですけれどもね。
まとめ
最後まで読んでくださってありがとうございました。もしも興味がありましたら、「さまざま」の記事も参考になさってくださいね。