はじめに
「したがう」というのは動詞ですから「従う」と書きますが、「したがって」というときは、動詞の連用形の「従って」のほかに、接続詞としての「したがって」がありますし、「~につれて」という意味の「したがって」もありますよね。
これってどれも漢字でいいのか迷ったことはありませんか? そこで今回は、「従って」と「したがって」の違いについて確認していきたいと思います。
動詞の「従って」は漢字にします
動詞の「従って」には、「誰かのあとについていくこと」や「人や物事に逆らわないこと」など複数の意味があります。動詞は漢字表記が原則ですので、これらはみんな漢字で表記します。公用文も新聞表記も、議事録もNHKも、いずれも同じです。
・案内人に従って進んでください。(ついていく)
・決まりに従って行動しましょう。(逆らわない)
・川に従って歩いていけば大通りに出ます。(沿っていく)
・手順に従ってやれば間違いありません。(そのとおりにする)
接続詞の「したがって」はひらがなにします
接続詞の「したがって」の場合ですが、これはひらがなで表記します。「だから」とか「それゆえ」「よって」という場合ですね。
・大雨警報が出ています。したがって本日は休校とします。
・原材料費が高騰しています。したがって値上げは避けられません。
「したがって」を丁寧にして「したがいまして」を用いることもあります。
・道路が渋滞しております。したがいまして10分程度の遅れが生じます。
・予約制となっております。したがいまして当日の受付はできかねます。

動詞は漢字で接続詞はひらがななんだね。簡単に覚えられそう。
公用文における接続詞の扱いについて
公用文では、原則として接続詞はひらがなで表記します。漢字を用いる接続詞は「及び」「又は」「並びに」「若しくは」だけですが、これらでさえ、解説・広報等においては「および」「または」「ならびに」「もしくは」を用いてよいとしていますので、一般的な文章においては接続詞はみんなひらがなにしていいんですね。もちろん接続詞の「したがって」もひらがなで表記してください。
同じように、接続詞の「したがって」をひらがなにするのは議事録表記ですが、議事録の場合は「及び」「並びに」は漢字にします。NHKは、接続詞は「したがって」を優先しますが、「従って」も認めているようです。
新聞表記の『記者ハンドブック』では、「したがって」の欄に「従って」を示しているだけでしたので、動詞も接続詞もどちらも漢字で書くものと思われます。ただ、補足の記載がなかったのでなんともいえません。
接続助詞としての「したがって」をどう考える?
「したがって」には「~につれて」という意味もありますよね。並行して進んでいく様子をあらわす場合です。これは動詞なのでしょうか、接続助詞なのでしょうか。
・練習するにしたがって上達してきた。
・成長するにしたがって傷痕も目立たなくなった。
・秋が深まるにしたがって寒くなってまいりました。
・人口が減少するにしたがって通りが寂しくなってきた。
私はこの場合の「したがって」は接続助詞だと思っているので、ひらがなで書いています。この考えを支持してくれているのが『三省堂国語辞典』です。
ただ、ほかの国語辞典は動詞になっているんですね。ですから「~につれて」という場合も「従って」と書いてもよさそうです。これは判断が分れるところだと思います。動詞だと思われる方は「練習するに従って上達してきた」と書いてくださいね。

これは自分で決めていいってことなのよね?
まとめ
・動詞の「従って」は漢字で書きます。
・接続詞の「したがって」は基本的にひらがなです。
・接続助詞か動詞か、判断が分れるものもあります。
十分に確定できないところがありまして申し訳ありません。引き続き調べ作業を続けていきたいと思いますので、何らかの参考になればうれしいです。最後まで読んでくださってありがとうございました。