はじめに
スギ花粉の時期になると「卒業ソング」が流れ卒業のシーズン到来です。花粉症で卒業式がつらい方もいらっしゃるかもしれませんが、「卒業式」ではなく「修了式」を挙行するところもありますよね。結論からいえば、専門学校は修了で、大学は卒業、大学院は修了するんですが、どうしてみんな「卒業」にしないのか気になりませんか? 今回は、「卒業」と「修了」の使い分けを探ってみたいと思います。
「終業式」と「修了式」と「卒業式」の違いは?
学校では、入学式と卒業式のほかに、学期の区切りや学年の区切りに体育館に集合して儀式を行いますよね。念のため、まず、その式典の名称を確認しておきましょう。
終業式:年度途中の学期の最後の日の式
修了式:年度最後の学年の終わりの日の式
卒業式:それぞれの学校での学びを終える日の式
1学期最後の日や2学期の最後の日に行うのは「終業式」です。前期・後期の2学期制を採用している学校は前期の終わりの日ですね。会社などで一日の業務を終えることも「終業」といいますが、「終業」とは、業〔やるべきこと〕を終えることです。
学年の最後の3月には「修了式」を行います。これは、在籍する学年の定められた課程をおさめ終えたことを確認するもので、修了式の日には「修了証書」が渡されます。修了証書はそのことの証明書で、通知表の裏側にくっついている学校が多いかもしれません。
そして、いよいよその学校での学びを終える3月には「卒業式」を迎えて、そこで卒業証書が授与されます。人数が多い学校は代表者に渡されますが、一人ずつ手渡す場合もあります。日本人にはなじみ深い卒業式ですが、卒業式をする文化があるのは世界でも珍しいらしいですよ。

学年の終わりは「終了式」ではなくて「修了式」なんだね。
「卒業」と「修了」はどう違うの?
「卒業」というのは「定められた課程を学び終え、その学校を去ること」で、「修了」というのは「学業などの一定の課程をおさめること」とです。
卒 業:定められた課程を学び終え、その学校を去ること(明鏡国語辞典)
修 了:学業などの一定の課程をおさめること(明鏡国語辞典)

「学校」は「卒業」、それ以外は「修了」なんだね。
「学校」の種類にはどんなものがあるの?
「学校」での学びを終えるのが「卒業」ですから、「学校」なのか「学校ではないのか」で「卒業」と「修了」を使い分ければいいわけですね。では、「学校」にはどんなものが含まれるのでしょうか。
学校教育法では第一条で「幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校」を学校と定めていますので、ここにある学校の場合は「卒業」、ないものは「修了」を用います。
【学校教育法 第一条】 この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。
大学院は学校教育法で定められた学校ではないので「修了」です。高等専門学校、いわゆるロボコンで有名な高専は「卒業」ですが、それ以外の専門学校を含む専修学校は「修了」になります。また、各所で開催される「○○講座」のたぐいも「修了」を使います。「修了」というのは、「学校を出ました」というのではなく「学び終えました」ということなんですね。ちなみに、短期大学は大学に含まれます。
ここで「保育園がないじゃない?」と思われたかもしれませんが、保育園は文部科学省管轄ではなく厚生労働省管轄したので「学校」には入っていません。こども園は保育園と幼稚園の両方の機能を持ったもので、管轄は内閣府でしたので、これも学校には含めません。
現在は、保育園とこども園は「こども家庭庁」の管轄になりましたが、やはり学校ではありません。ただ、幼児の場合は、幼稚園でも保育園でもこども園でも「卒園」が用いられているようです。

プログラミング講座も、最後まで受講すれば「修了」になるわ。
大学は「卒業」で大学院は「修了」です
大学は4年間(医学部・歯学部・獣医学部・薬学部の一部は6年間)で一区切りです。これを学士課程といって、必要な単位を取得すれば無事に卒業して「学士」という学位を与えられます。大学は「卒業」なんですね。大学生を大学院生と区別するために「学部生」と呼ぶこともあります。
そのあと大学院に進学することもできます。大学院生は「学生」ではなく「院生」になります。大学院は、大学によって異なっていますが、多くは修士課程(または博士前期課程)を2年ほどで修了して「修士」の学位を授けられます。さらに進学すれば博士課程(または博士後期課程)となって、おおむね3年ほどかけて学び、最後に博士論文審査に通れば「博士」の学位が与えられます。
前述したように、大学は学校ですから「卒業」で、大学院は学校ではありませんから「修了」ですが、大学院には、論文を出さなくても「満期退学」や「単位取得退学」といった制度が設けられていたりもします。
「卒業証書授与式」と「学位記授与式」のことなど
卒業式というのは学習指導要領に定められた特別活動のうちの儀式的行事のひとつですので、小中高では必ず挙行されます。卒業式のことを、卒業証書を授与する式典ということで「卒業証書授与式」と呼称したりもしますよね。
一方、多くの大学には大学院が設置されています。学部(大学)だけの大学や大学院だけの大学院大学もありますが、ほとんどの場合、大学と大学院は同じ建物で、誰が大学生(学部生)で、誰が院生なのか区別できません。どちらかだけならば「卒業式」もしくは「修了式」でもいいのかもしれませんが、同時に挙行するので、多くの大学が「学位記授与式」としています。学位記とは、学士、修士、博士、それぞれの学位を取得したことを証明するもので、いわば卒業証書のようなものです。
また、「卒業」には「ある段階を体験して通り過ぎること」の意味もあって、比喩的に「もう、おむつは卒業ね」とか、「もうマンガを買うのは卒業しようと思うんだ」のように使われることがあります。卒業には「サヨナラする」というニュアンスがあるんですね。

「卒業」という表現は、アイドルグループが使ったことで一気に広まったわね。
まとめ
ここまで、「卒業」と「修了」の違いをまとめてみました。個人的には、学び舎のことを一般的に「学校」と呼称しますので、「専門学校でもどこでもみんな“卒業”にすればいいのに」と思わないこともないですが、現状としては上記の扱いになっています。また、せっかく「こども家庭庁」ができたのに、幼稚園が文科省管轄のままなのが謎ですが、いろいろ大人の事情があるんでしょうかね。最後まで読んでくださってありがとうございました!