はじめに
「つくる」というときに、「作る」「造る」「創る」のどれにするか、あるいは、「雰囲気をつくる」など、具体的なものではない場合にどう表記するか迷ったことはありませんか? 今回は、「つくる」の表記について確認していくことにしたいと思います。
公用文と新聞表記、それにNHKと議事録表記を確認していますが、ほぼ共通しているものの、少し扱いが異なっているところもありますので、最終的にはご自身のお立場や考えで、文脈に合ったものを用いてくださいね。
「作る」を用いるもの
「作る」は、主に小規模のものをこしらえること、目に見えるものをつくる場合に用います。
具体的な用例で確認していきましょう。
・米を作る
・資料を作る
・新聞を作る
・人形を作る
・詩を作る
・料理を作る
・列を作る
・規則を作る(※)
・計画を作る(※ 後段参照)
など
複合語になっているものは慣用として「作」が用いられることが多く、用例として示されているものは以下のようなものがあります。
・作り話
・作り物
・作り笑い
・作り事
・作り置き
・作り付け/作りつけ
・役作り
・若作り
など
このように、比較的小さくて、作られたものが目で見えるような場合は「作る」にするほか、「作り笑い」のように慣用的な言い方の場合は「作」を用います。
「造る」を用いるもの
「造」は、主に大規模のもののほか、鋳造、醸造、建築の様式などに用います。また、「荷造り」は「造」を用いるのが慣用になっています。
酒造りは「造」を用いますが、これは発酵させて醸造するという意味ですので、お酒に関することがみんな「造」になるわけではありません。「水割りを作ってほしい」とか、「おいしいカクテルを作ってね」などは「作」を用いてください。
用例で確認してみましょう。
(大きなもの)
・家を造る
・船を造る
・ダムを造る
・道路を造る
・兵器を造る
・庭園を造る
(鋳造)
・貨幣を造る
(醸造)
・酒造りをする
・しょうゆを造る
・みそを造る
・酢を造る
・造り酒屋
(建築様式)
・石造り
・寝殿造り
・切り妻造り
など
確かにどれも大規模なものですね。また、お酒だけではなく、みそやしょうゆ、酢など、醸造するものは「造る」というのは覚えやすいですね。
ただ、「造」については悩ましいところがあって、酒は「酒造」、船は「造船」とあるので用いやすいですが、車などは「造る」があまりなじまない感覚があります。どれくらいが「大きいもの」になるのかということですね。
素直に考えれば「製作」するものは「作る」、「製造」するものは「造る」ですが、個人によって語感の違いもあると思いますので、「造」が仰々しくてふさわしくないと感じる場合には「つくる」を用いてみてください。
「創る」を用いるもの
「創」を用いるのは、特に「創」を用いないと伝わらない場合、創造性や独創性を強調する場合に用いる限定的な表記になります。
・神は万物を創る
・新しい文化を創る
・画期的な商品を創り出す
など
迷うのは映画やアニメなどの創造的な作品の場合ではないかと思います。創造的な作品ですから「創作」でもよさそうですが、「創」にはそれまでになかったものを「創る」という限定的な意味合いがあるため、映画やアニメ、放送番組などは「制作」を用いています。
それなら「作る」になるかというと、それだと芸術的な意味合いから遠ざかってしまいます。そのため、映画やアニメ、放送番組などは「つくる」とひらがなが多く用いられています。ひらがなにすることで、脚本を書く人やセットを製作する人、演じる人など、たくさんの仕事を包含した言い方になるんですね。
「つくる」とひらがなにするもの
漢字を用いずに「つくる」とひらがなにするのは、主に抽象的なものの場合です。漢字を用いると意味が限定されてしまいますから、ひらがながふさわしいんですね。漢字の使い分けに迷った場合も「つくる」とひらがなにしてください。ひらがなの「つくる」はとても使い勝手がいいですね。
用例を見ていきたいと思います。
・社会をつくる
・仲間をつくる
・会社をつくる
・組織をつくる
・子どもをつくる
・人脈をつくる
・組織をつくる
・敵をつくる
・友達をつくる
・時間をつくる
・財産をつくる
・雰囲気をつくる
・平和な世をつくる
・歴史をつくる
・体力づくり
・人づくり
など
このように、具体的に目で見えるものではない場合に「つくる」とひらがなにするんですね。
解釈が分れるものの例
解釈が分かれるものもあります。例えば、「計画を作る」という場合に、新聞表記では「作る」にしますが、議事録表記では「つくる」にします。どうしてひらがなかというと、計画そのものは抽象的なものなので「計画をつくる」にして、「計画書」であれば目に見えるので「作る」にするというのが議事録表記の考え方です。
・計画をつくる
・計画書を作る
このように、少し違いがありますが、細かいところまで統一するのは難しいですので、それぞれの判断で表記してみてください。
「まちづくり」はどうしてひらがななの?
「まちづくり」という言葉は頻繁に目にされているのではないかと思います。この「まち」は、市町村の「町」でも、市街地の「街」でもなく、人々が暮らすための基礎となる地域のような意味で、その地域をみんなで快適にしていきましょうというのが「まちづくり」なんですね。
例えば、行政と市民が協働してにぎわいを創出したり、地域を元気にする取り組みを考えたり、暮らしに役立つ情報を発信したり、そうした持続的な活動のことを「まちづくり」といいます。ですから、これは「まちづくり」と名詞として扱うのが基本ですが、同じ文脈なら「まちをつくる」とひらがなで表記してくださいね。
まとめ
ここまで「つくる」と「作る」「造る」「創る」の使い分けについて述べてきました。「つくる」は非常に多く用いますし、文脈もいろいろですので、「この場合はこの表記」と一概に決められないこともあります。このあたりは緩く解釈したほうがよいと思いますので、一応の目安として捉えてくださいね。
最後まで読んでくださってありがとうございました!