カタカナの表記(2)書き方の基本

漢字かな以外の表記

外来語の表記の国の指針

私たちが現在用いているカタカナ表記は、1991年に内閣告示として示された「外来語の表記」によるものです。このころから急激に日常的に使用する外国語が増えてきたので、日本語のカタカナ表記も更新しないと追いつかなくなったんですね。

「外来語の表記」には「第1表」と「第2表」の2つあります。「第1表」は私たち日本人が発音するのに無理がないもの、一方で「第2表」は、もともとの外国語の発音やつづりになるべく近く書き表そうとしたものです。

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【内閣府 “外来語の表記 「外来語の表記」に用いる仮名と符号の表”より】

一例を示せば、日本語では「B」と「V」を区別せずに、「V」であっても「バ・ビ・ブ・ベ・ボ」と発音しますが、実際のスペルは違っていますよね。これを、日本語として発音しやすいように「バ・ビ・ブ・ベ・ボ」とそのまま表記するのが「第1表」で、発音ではなく原語のつづりを重視して「ヴァ・ヴィ・ヴ・ヴェ・ヴォ」を用いるのが「第2表」になります。

国としてはどちらを用いるかは指定していませんが、「第1表」に従うなら、文章全体でそれを踏襲し、「第2表」を用いるなら一貫してそれを用いるように示しています。

ただ、個人で用いるなら「第1表」でも「第2表」でも自由に表記してよいのですが、情報を発信する立場であれば、ある程度の約束事がないと混乱を来してしまいます。そのため、統一的な見解が示されていますので、今回はその中からポイントとなるところを確認していきたいと思います。

「ウイスキー」か「ウィスキー」か

ウイスキー」です。「ウイ/ウィ」「ウエ/ウェ」「ウオ/ウォ」は「ウイ」「ウエ」「ウオ」を充てるとしていますので、「ウイスキー」と大きな「エ」にします。ただし、原語が「‐ware」の場合は「ウェア」を充てます。

【表記例】大きな「イ・ウ・エ」を用いる
ウイスキー(whiskey)
ウインドウ(window)
ウエアラブル(wearable)
ウオッチ(watch)
ウオーター(water) 

【表記例】「‐ware」は「ウェア」にする
ソフトウェア(software)
スパイウェア(spyware)

【例外】(「ウェ」「ウォ」を用いる)
ウェブ(web)
ゲートウェイ(gateway)
ファイアウォール(firewall)

「Webサイト」は「ウェブサイト」と小さい「ェ」にするんだね。

「クオリティー」か「クォリティー」か

クオリティー」です。「クア/クァ」「クイ/クィ」「クエ/クェ」「クオ/クォ」は、「クア」「クイ」「クエ」「クオ」を充てるとしていますので、「クオリティー」は大きな「オ」にします。

【表記例】(大きな「ア・イ・エ・オ」を用いる)
クオリティー(quality) 
クア ハウス(kurhaus(ドイツ語)) 
クアトロ(cuatro(スペイン語))
クイック(quick)
クエスチョン(question) 
クオーツ(quarts) 

「プラットホーム」か「プラットフォーム」か

プラットホーム」です。ただし、意味によって「プラットフォーム」を用いることもあります。「fo」「pho」の表記は「フォ」を充てるとしているので、本来であれば「プラットフォーム」ですが、ガイドラインでは例外として「プラットホーム」を挙げています。

ただし、コンピューターのソフトウェアが動作する環境を「プラットフォーム」とし、駅などの「プラットホーム」と区別して用いることが多いようです。

【表記例】「フォ」にする
プラットフォーム(platform)※
インフォメーション(information)
テレフォン(telephone)
フォーム(form)
フォロー(follow)
フォワード(forward)など

【例外】「ホ」にする
プラットホーム(platform)
ホルマリン(formalin)
メガホン(megaphone)
イヤホン(earphone)
インターホン(interphone)

「バイオリン」か「ヴァイオリン」か

バイオリン」です。原語の「V」音には「バ・ビ・ブ・ベ・ボ」を充てることにしているので「バイオリン」にします。これについては例外はなく、一般の文章中では「ヴァ・ヴィ・ヴ・ヴェ・ヴォ」は用いません。「ヴァ・ヴィ・ヴ・ヴェ・ヴォ」を使用するのは地名や人名など特殊な場合のみとなります。

【表記例】「V」は「バ・ビ・ブ・ベ・ボ」にする
バイオリン(violin)
アベレージ(average)
バージョン(version)
バニラ(vanilla)
バリエーション(variation)
ボーカル(vocal)
レビュー(review)
レベル(level)

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「ロマンチック」か「ロマンティック」か

ロマンチック」です。原語表記の「ti」には「チ」を充てるので「ロマンチック」と表記します。

【表記例】「ti」を「チ」にする
ロマンチック(romantic)
アンチ(anti)
イニシアチブ(initiative)
オートマチック(automatic)
チケット(ticket)
プラスチック(plastic)

【例外】「ti」を「ティ」にする
アンティーク (antique)
クリエーティブ (creative)
コンサバティブ(conservative)
ファンタスティック(fantastic)

「カーデガン」か「カーディガン」か

カーディガン」です。原語表記の「di」には「ディ」を充てるとされていますので「カーデガン」ではなく「カーディガン」と表記します。

【表記例】「di」を「ディ」と書く
カーディガン(cardigan ) 
アコーディオン(accordion)
エディター(editor)
オーディオ(audio)
サディスト(sadist)
ディーゼル(diesel)
ディクショナリー(dictionary) 
ディスカバリー(discovery)
ディスク(disc)※机のdeskではない

【例外】「di」を「デ」や「ジ」にする
ジレンマ(dilemma)
デジタル(digital)
ラジオ(radio) 

「アイデア」か「アイディア」か

アイデア」です。原語の「de」には「デ」を充てるとされているので「アイデア」と書きます。

【表記例】「de」は「デ」にする
アイデア(idea)
イデオロギー(ideology/Ideologie)
デジャビュ(dejavu/déjávu 既視感) 
デバッグ(debug)
デフォルト(default)
デフォルメ(deformation/déformer)
デベロッパー(developer)
デポジット(deposit) 

【例外】(「de」をディ、ドとする)
アーケード(arcade)
サイド(side)
ディーラー(dealer)
ディテール(detail)
ディフェンス(defense)

「デジャビュ」は「デジャヴ」の表記も浸透しているイメージがあるけど、文章内で統一して使えば「デジャヴ」でもいいのよね。

【補足】
「チ」「ジ」と書く習慣があるものや、「テ」「デ」と書く習慣があるものは、それによるとされています。

エチケット
スチーム
プラスチック
スタジアム
ステッキ
キャンデー
デザイン

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「ダイアモンド」か「ダイヤモンド」か

ダイヤモンド」です。表記が「ia」で発音が/ɪə/の場合は「(イ)ア」を充てるとされているので、本来なら「ダイアモンド」ですが、例外として「ダイヤモンド」を示しています。ですので「ダイヤモンド」と「ヤ」を用いてください。

アンケートによれば、「ダイア」より「ダイヤ」のほうが84.2%の支持があったそうです。また、「ダイヤル」も88.0%と「ダイアル」よりも支持が多いため、「ダイヤル」と表記します。

【表記例】「ア」にするもの
アンモニア(ammonia)
カフェテリア(cafeteria)
ジフテリア(diphtheria)
トライアル(trial)
バイアス(bias)
バクテリア(bacteria)
ピアノ(piano)

【例外】「ヤ」にするもの
ダイヤモンド(diamond)
ダイヤル(dial)
ダイヤグラム(diagram)
ビリヤード(billiards)

「プリインストール」か「プレインストール」か

プリインストール」です。語頭の「re」「pre」の表記は「リ」「プリ」を充てるとされていますので「プリインストール」になります。

【表記例】「リ」「プリ」と表記するもの
プリインストール(preinstall)
プリペイド(prepaid)
リコーダー(recorder、縦笛)
リサイクル(recycle)
リダイヤル(redial)
リデュース(reduce)
リリース(release)
リジューム(resume)
リユース(reuse)
リボルビング(revolving)
リポート(report、報告)

【例外】「レ」「プレ」にするもの
プレビュー(preview)
レクリエーション(recreation)
レコーダー(recorder 録音機)
レパートリー(repertory)
レビュー(review)
レポート(report‐用紙)

レポートは「レポートを提出する」というように調べて書くもの、リポートは「現場からは以上です」という報告の意味で使われるね。

まとめ

上記はすべて一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会による「外来語(カタカナ)表記ガイドライン」を参考にして、一部、抜粋させていただきました。詳細はリンク先の資料を直接参考にしてください。

https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/kokugo_kadai/iinkai_45/pdf/93390601_09.pdf

(3)では長音「ー」の扱いについてまとめています。