「羽」と「羽根」の使い分け なぜ「羽布団」じゃなく「羽根布団」なの?

知りたかったモヤモヤ語

「羽」と「羽根」は意味に違いがあります

「赤い羽根」をはじめとして、「緑の羽根」や「白い羽根」など、募金するともらえる羽根にもいろいろありますが、これがどうして「赤い羽」ではなく「赤い羽根」なのか疑問に思ったことはないでしょうか。恥ずかしながら、私は「羽」と「羽根」の明確な違いを認識したのは大人になってからでした。そこで今回は、「羽」と「羽根」はどう違うのか、用例を中心に確かめていきたいと思います。

「羽」は「翼」、「羽根」は「羽毛」です

「羽」と「羽根」の違いですが、「羽」は空を飛ぶための器官、つまり「翼」のことです。飛行機にも翼がありますが、あれもいわば「羽」です。昆虫の場合も「羽」にします。昆虫には「翅(はね)」が用いられることもありますが、常用漢字表にない表外字なので、代用字として「羽」が充てられています。また、比喩的に「お金に羽が生える」とか「羽を伸ばす」というようにも用いられます。

一方、「羽根」とは、一本一本の羽毛のことです。翼全体ではなく根元から抜ける部分のことですね。機械だったらプロペラやスクリューの部分になります。扇風機の「羽根」や、竹とんぼの「羽根」のほか、羽子板でつくのも「羽根」ですし、バドミントンのシャトルも「羽根」になります。ですから布団の場合、羽毛が入った布団は「羽根布団」になるんですね。

「鳥のはねが落ちていた」というとき、「鳥の羽」にしてしまうと翼全体のことになってしまいますので「鳥の羽根が落ちていた」にします。昆虫の羽も根元から取れるので「羽根」のようにも思われますが、公用文表記でも新聞表記でも「翅」の代わりに「羽」を用いることにしているため「羽」にします。これが鳥類と昆虫で異なる点です。このあたりが少し紛らわしいですので、生物学的な内容の文章でしたら、昆虫は「翅」を用いたほうが混乱がないかもしれません。表記に自由度がある場合は文脈によって判断してみてください。

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「羽」と「羽根」を用例で確かめてみましょう

では、具体的にどう用いるのか用例で確認してみたいと思います。

「羽」の用例
・トンボの羽は4枚あります。
・羽を広げたタンチョウヅルに初めて遭遇しました。
・どうぞ羽を伸ばしてゆっくりしていってください。
・彼女はエンジェルだ。背中に羽があるに違いない。
・お金って、羽が生えているみたいに飛んでいってしまう。

「羽根」の用例
・散歩の途中で鳥の羽根を拾いました。
・扇風機の羽根が汚れてきたね。
・スクリューの羽根の耐用年数を考慮しましょう。
・募金をしたら赤い羽根をもらいました。
・ヘリコプターの羽根の回転速度が上がってきたよ。

「赤い羽根」「緑の羽根」「白い羽根」「青い羽根」の違いについて

「赤い羽根共同募金」は有名ですが、ほかにも「緑の羽根」「白い羽根」、そして「青い羽根」というのもあるんですね。それぞれどんな目的で実施されているのか、この際なので調べてみることにしました。

赤い羽根:赤い羽根をシンボルとする共同募金です。もともとは民間で行われていたものが制度化され、現在では各都道府県の共同募金会が実施主体となっています。集められたお金は社会福祉を目的とする事業活動に配分されています。

緑の羽根:国土緑化の推進のために開始された「緑の羽根募金」は、現在では「緑の募金」に名称が変更になっています。実施主体は公益社団法人国土緑化推進機構と都道府県緑化推進委員会で、寄付金は森林整備等の推進に用いられています。

白い羽根:白い羽根に赤い十字のマークが接着されている羽根です。白い羽根運動は、赤十字や青少年赤十字に対する意識を高めるとともに、その活動資金を得るために行う募金活動です。主催はかつては日本赤十字社でしたが、現在は青少年赤十字協議会や地方支部になっています。

青い羽根:青い羽根募金は、海で遭難した人々の救助活動にあたるボランティア救助員の方々を支援するための募金で、実施主体は公益社団法人日本水難救済会です。私はこれまで「青い羽根」の募金を知りませんでしたが、とても大事な取り組みだと思います。

いずれも、用いられている羽根は実際のニワトリの羽根を加工しているそうで、その手間といったら大変なことだと思います。本当に頭が下がります。ただ、ニワトリの羽根の入手が困難になった時期にシールで代用されたりもしましたので、今後は少しずつ「羽根」の様式も変化していくのかもしれません。

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まとめ

「羽」と「羽根」の使い分け自体はそう難しいことではないと思いますが、理解していてもうっかりしがちですので、特に鳥の場合は気をつけたいところですね。

「毛根(もうこん)」や「根が深い」「根に持つ」などというように、「根」というのはもともとの場所にしっかりくっついているイメージがあります。ですから、「羽根」はいいとして、どうして屋根に「根」がつくのか不思議でだったのですが、もともと屋根は地面に接着していたそうですよ。