どうして「関わる」は漢字で「~にもかかわらず」はひらがななの?

表記の決まりごと

「関わる」が漢字になったことの唯一の問題点

現在用いられている常用漢字表は2010年に改訂されたものですが、その際に「関わる」が漢字で書けるようになりました。すっかり定着して、皆さん、「かかわる」は「関わる」と書くものと認識されていらっしゃるのではないかと思います。

ただ、問題もあるんですね。改訂前であれば「かかわる」も「~にもかかわらず」もひらがなにすればよかったので間違いはなかったのですが、「関わる」と書いてよくなったことで、逆に漢字とひらがなを使い分ける必要が出てきたんです。

今回は、どうして「~にもかかわらず」はひらがなにするのか、また「かかわる」はみんな「関わる」にしていいのか、そのあたりを探っていきたいと思います。

スポンサーリンク

「~にもかかわらず」は漢字で書くと「~にも拘わらず」です

「~にもかかわらず」というのは、「その状況に影響されないこと」、あるいは「その事態であってもなお」という意味ですよね。「悪天候にもかかわらず船を出した」とか「体調が悪いにもかかわらず試合に臨んだ」「徹夜したにもかかわらずテストで最下位だった」などと用います。

・悪天候にもかかわらず船を出した。
・体調が悪いにもかかわらず試合に臨んだ。
・徹夜したにもかかわらずテストで最下位だった。

この場合の「かかわらず」は「関らず」ではなく「拘わらず」なんですね。でも、常用漢字表を見ると「拘」は「コウ」という音読みしか示されていないので「かかわらず」とひらがなで表記します。

(常用漢字表より)
拘  |コウ  |拘束,拘留,拘置

「拘」を漢和辞典で引くと「かかわる」のほかに「こだわる」「かかずらう」という訓読みが示されています。「かかずらう」というのはあまり用いない表現かもしれませんが、「面倒なことに関係する」という意味です。また、「拘束」や「拘留」の熟語にもあるように、「拘」は「とらわれる」という意味もあります。

「かかわる」をひらがなにするのはどんなとき?

このように、「こだわる」「かかずらう」、または「とらわれる」という意味の「かかわる」は、漢字で書けば「拘わる」になりますから、この意味なら「かかわる」の形であってもひらがなにすることになります。

・そんなことにかかわっている暇はない。
・つまらないことにかかわっていたくない。
・もう縁を切ったんだ。かかわりたくないね。

でも、どこからが「関わる」で、どこからが「かかわる(拘わる)」なのかは難しいところですよね。そのため以前はみんなひらがなにしていたわけです。

実は、公用文でも新聞表記でも議事録表記でも書き分けについては言及しておらず、「関わる」は漢字、「にもかかわらず」の場合はひらがなにするとしているだけです。

その中で、NHKの表記辞典のみ「小事にかかわっている暇はない」を例示して、「かかわる」の形でもひらがなにする場合があるとしています。このように、正確を期すなら、否定的な内容であれば文脈によっては「かかわる」がふさわしい場合があるということは、少し気に留めてみてくださいね。

スポンサーリンク

「関わる」はどう使えばいいの?

一方、「関わる」というのは広く一般に「関係する」「関係を持つ」という意味で用いられます。これは迷いがないのではないかと思います。また、単に「関係する」というだけでなく、「影響する」「左右する」という強い意味で用いることもあります。

・子どもに関わる仕事がしたい。
・この組織とどう関わったらいいだろう。
・お金に関わる話をしようではないか。
・それは私の名誉に関わることだ。
・命に関わる問題なんですよ。
・会社の信用に関わりますよ。

まとめ

ここまで「関わる」と「かかわらず」の表記の違いについて述べてきました。「かかわる」はほとんど「関わる」でよいけれども、「~にもかかわらず」であれば必ずひらがなにすると覚えておけばほぼ問題ないと思います。

「関わる」に似た表現に「係る」というものもあります。これは行政でよく用いられますが、「関わる」よりも少し軽くて「関連する」というようなニュアンスで、「この事業に係る計画は~」などと用います。

表記の原則はいろいろあって覚えきれないほどですが、私自身、勉強したにもかかわらず間違えてしまわないように気をつけたいと思います。最後まで読んでくださってありがとうございました。