「関わる」は漢字で「~にもかかわらず」はひらがで書く理由は?

表記の決まりごと

はじめに

「かかわる」というのは「関係する」とか「関係を持つ」という意味で、「関わる」と漢字で書くことがほとんどですよね。例えば、「子どもに関わる仕事がしたい」とか、「会社の信用に関わりますよ」などと用います。

でも、「~にもかかわらず」という場合にはひらがなで書きますし、「かかわる」でもひらがながふさわしい場合があるんですね。それはいったいどういうことなのか、今回は、「関わらず」と「~にもかかわらず」の違いを探っていきたいと思います。

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「関わる」の意味と使い方

前述したように、「関わる」というのは広く一般に「関係する」「関係を持つ」という意味で用いられます。「関」は小学4年生で習う漢字ですから迷いがないのではないかと思います。また、単に関係するというだけでなく、「影響する」「左右する」という強い意味で用いることもあります。

・子どもに関わる仕事がしたい。
・この組織とどう関わったらいいだろう。
・お金に関わる話をしようではないか。
・それは私の名誉に関わることだ。
・命に関わる問題なんですよ。
・会社の信用に関わりますよ。

「かかわらず」は漢字で書くと「拘わらず」です

一方、「~にもかかわらず」はひらがなにします。この場合の「かかわらず」は意味としては関与することではなく「こだわらない」ということですので、無理やり漢字で書くと「~にも拘わらず」になって、漢字が異なるためです。

「拘」は「拘束」の「コウ」ですが、常用漢字表では「かかわる」という読みは示されていないため、ひらがなで表記します。これは公用文だけではなく、新聞表記や議事録表記、NHKの表記、すべてに共通しています。

つまり、「~にもかかわらず」というのは「こだわらない」こと、「その状況に影響されないこと」、あるいは「その事態であってもなお」という意味であるため、「悪天候にもかかわらず船を出した」とか「体調が悪いにもかかわらず試合に臨んだ」「徹夜したにもかかわらずテストで最下位だった」などと用いるんですね。

・悪天候にもかかわらず船を出した。
・体調が悪いにもかかわらず試合に臨んだ。
・徹夜したにもかかわらずテストで最下位だった。

「かかわる」でもひらがで書く場合があります

「拘」を漢和辞典で引くと「かかわる」「こだわる」のほかに「かかずらう」という訓読みが示されています。「かかずらう」というのは「面倒なことに関係する」という意味です。また、「拘束」や「拘留」の熟語にあるように「とらわれる」という意味もあります。

このように、「こだわる」「かかずらう」、または「とらわれる」という意味の「かかわる」は、漢字で書けば「拘わる」になりますから、この意味なら「かかわる」の形であってもひらがなにすることになります。つまり、積極的な意味や好ましいことであれば「関わる」、面倒なことに関係するという意味ならひらがなにするんですね。

・そんなことにかかわっている暇はない。
・つまらないことにかかわっていたくない。
・もう縁を切ったんだ。かかわりたくないね。

これが本来の用い方ですが、このことについての説明があったのはNHKの『漢字表記辞典』のみで、「小事にかかわっている暇はない」を例示してくれていました。

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「関わる」が漢字になったことの問題点

現在用いられている常用漢字表は2010年に改訂されたものですが、その際に「関わる」が漢字で書けるようになりました。今ではすっかり定着していますよね。

ただ、問題もあるんです。改訂前であれば「関わる」も「拘わる」も気にせず、どちらもひらがなにすればよかったので間違いはなかったのですが、「関わる」と書いてよくなったことで、逆に漢字とひらがなを使い分ける必要が出てきたんです。

「関わる」と「拘(かか)わる」の線引きは難しいところがあって、だから以前はみんなひらがなにしていたともいえます。あまり大きな問題ではないかもしれませんが、そもそも漢字が異なることは少し気に留めていただければと思います。少なくても「かかわらず」の形の場合はひらがなにしてみてくださいね。

まとめ

ここまで、「関わる」と「かかわらず」の表記の違いをまとめてみました。

・「関係する」という意味なら「関わる」と書く。
・「~にもかかわらず」の場合はひらがなにする。
・悪いことにかかずりあう意味ならひらがなにする。

最後まで読んでくださってありがとうございました。