「付」と「附」はどっちを使う? 寄付/寄附 付属/附属

知りたかったモヤモヤ語

「付」の旧字体が「附」ではなかった?

「フ」というときに「付」と「附」の両方の表記を目にしますよね。私はずっと、単に「付」の旧字体が「附」だと思っていたんですが、常用漢字表を見ると下のように「付」の欄と「附」の欄が別になっていて、それぞれ別の漢字として扱っているんです。これに気づいたときはびっくりしました。

〔常用漢字表より〕

付  |フ   |付与,交付,給付
   |つける |付ける,名付け
   |つく  |付く,気付く

附  |フ   |附属,寄附

つまり、「付」と「附」は書き分けてくださいということなんですね。ただ、これはあくまで国が基準として示しているもので、必ず従わなければならないわけではありません。実際、「付」と「附」の扱いはさまざまで、公用文と新聞表記、そしてNHKとでは、それぞれ別の立場をとっています。

そこで今回は、「付」と「附」について、それぞれの表記辞書ではどのように扱っているのかを取り上げてみたいと思います。

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「付」と「附」を使い分ける(公用文)

常用漢字表にもあるように、「付」と「附」を使い分けるというのが公用文の立場です。どう使い分けるかというと、文部科学省の「用字用語例」では「附」の用例として「附則」「附属」「附帯」「附置」「寄附」を示しています。また、「付」の用例としては「付記」「付随」「付録」「交付」「給付」を挙げています。

でも、どうして「附則」が「附」で、「付記」は「付」なのか、私にはさっぱり理解できません。漢和辞典で調べてみても「附」と「付」の意味に明確な違いはありませんでした。

そこで、公用文の解説書で確認してみたところ、公用文においては「附則」「附属」「附帯」「附置」「寄附」の5語だけ「附」を用いて、あとは「付」にするのだそうです。なんだか腑に落ちませんが、公用文ではこうなっていることをお伝えしたいと思います。なお、議事録表記も同様にします。

「附」:「附則」「附属」「附帯」「附置」「寄附」の5語のみ
「付」:「付記」「付随」「付録」「交付」「給付」ほか上記5語以外

「附」を使わず、すべて「付」にする(新聞表記)

では、新聞表記ではどうなっているのかというと、『記者ハンドブック』では「附」は使わず、みんな「付」にしています。固有名詞であってもそうなので、「○○大学附属小学校」などの場合も「付属小学校」にするんですね。

固有名詞までも「付」にするというのはかなり大胆ですが、実際、新聞では「付属」が採用されているのを目にしますよね。また、「寄付」ももちろん「寄付」と書きます。

固有名詞は「附」を用い、ほかは「付」にする(NHK表記)

一方で、同じマスメディアでもNHKは異なっていて、固有名詞はそのまま「附」を用いますが、それ以外は「付」にします。ですから、「附属小学校」など名称の場合に限って「附」を用いるけれども、「付属する部品」などは「付」にするということですね。もちろん「寄付」も「附」を使わずに「寄付」にします。

個人的にはこれが最もしっくりしますが、語感の違いもあると思いますので、それぞれのお考えで判断してみてください。

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なんだか統一感に欠ける日本語の表記

「附」と「付」だけでなく、公用文と新聞表記が異なっていることは多くて、もう少し互いに歩み寄りはできないものかと思ったりすることがあります。公用文の表記も使いにくいと感じることがありますし、逆に新聞表記に違和感を抱くこともあるので、どっちがいいということではありませんし、どちらかが間違いということでもありません。

仕事上、どうしても表記に縛られてしまう方でなければ、ご自分が納得のいく表記でいいのではないかと思います。文法上の理由で表記が定まっている場合はもちろん別ですが、統一されていないということはどちらでもよいということですから、それを逆手にとってしまいましょう。

最後まで読んでいただきありがとうございました。