『さるかに合戦』の要旨とあらすじと感想をまとめました

知っておきたい日本の昔話

はじめに

日本の昔話はたくさんありますが、うろ覚えだったり忘れてしまっていたりするものですよね。それに、大人になってから読むと内容の受け取り方が変わっていることに気づいたりもします。そこで、代表的な昔話の「要旨」と「あらすじ」と「感想」を自分なりにまとめておきたいと思って始めたこのシリーズ、今回は『さるかに合戦』です。

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『さるかに合戦』の要旨をまとめました

『さるかに合戦』は、さるにだまされて柿の実を育て、あげくに死んでしまった親がにの無念を晴らすため、かにの子どもらがユニークな協力者を得て見事に敵討ちを果たす昔話です。

『さるかに合戦』のあらすじをまとめました

ある日、かには道ばたでおにぎりを拾いました。そこへやってきたのはさるです。さるは、おにぎりと柿の種を交換しようと持ちかけます。おにぎりは食べたらなくなるけれども、柿の種を植えたらたくさんの実をつけるといわれ、それもそうだと思ったかには、おにぎりと柿の種を交換しました。

さっそく家の庭に種をまき、かにはせっせと育てます。「早く芽を出せ柿の種、出さぬとはさみでちょんぎるぞ」「早く木になれ柿の種、ならぬとはさみでちょんぎるぞ」「早く実がなれ柿の種、ならぬとはさみでちょんぎるぞ」、そうして見事に成長した柿の種はおいしそうな実をたくさんつけました。

でも、柿の実を取ろうとしても、かには木に登ることができません。そこを通りがかったのがさるでした。さるはするすると木に登り、おいしそうな柿を次から次へと食べていきます。自分にも取ってほしいとかにが頼むと、さるはまだ固い実をかにに投げつました。すると、その実がかにの甲羅に当たり、かには死んでしまったのでした。

割れた甲羅の中から出てきたのは子がにたちです。子がにたちは親の敵を討ちたいと、さるの家へ向かうことにしました。幸いにも、途中で出会った栗、ハチ、臼(うす)、牛の糞(ふん)が協力してくれることになり、みんなでさるの家に忍び込みます。

帰ってきたさるが暖まろうといろりにあたったところ、いろりの灰の中からはじけた栗が飛び出してさるの顔に当たりました。さるは慌てて水で冷やそうと水がめの蓋を開けると、ひそんでいたハチがさるを刺しました。たまらなくなり外に逃げようしたところ、戸口に陣取っていた牛の糞に足を取られて転んでしまいます。そこへ屋根から臼が落ちてきて、さるにのしかかりました。こうして子がにたちは、見事、憎きさるの敵討ちに成功したのでした。

『さるかに合戦』の感想をまとめました

『さるかに合戦』の醍醐味は、なんといっても登場人物のユニークさです。「さるVSかに」というのも、いわば哺乳類と甲殻類という奇妙な争いですし、敵討ちを手伝ってくれたメンバーもバラエティー豊かで、ハチは昆虫、栗は植物、臼は道具、牛の糞ときたら排泄物です。つまり、生きもの以外にも命を吹き込んでいるお話なんですね。

それに、親がにが柿の木を育てるときに、「早く芽を出せ柿の種、出さぬとはさみでちょんぎるぞ」とかけ声をかけますが、切られては大変だと、慌てて柿の木が育っていく様子もなんともおかしみがあって、ちゃんと意思の疎通を描いています。それでも特に違和感がないのは、そもそも私たちは、あらゆるものに命が宿るという考えを素直に受け止められる素地を持っているからではないかと思います。

私は、この物語は、「意地悪をしてはいけません」という教訓的な色彩はあまり強くなくて、純粋にエンターテイメントとして楽しむお話のような気がしてなりません。それは、人間が一人も出てこないところからもそう感じますし、わざわざ「牛の糞」を登場させたことからもそう思います。

子どもは「おしり」とか「うんち」とか、はしたない言葉を使うのが大好きです。そんな気持ちに応えながら、語り手も一緒に楽しんでストレスを解消した、そんな遊び心が詰まった昔話が『さるかに合戦』なのだと思います。

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「獣害」について考察してみました

この物語を読むと、せっかく育てた果樹や野菜をさるに食べられ、怒り心頭に達して、手当たり次第、近くにあるものを投げつけている村人の絵が浮かびます。栗、ハチ、臼、牛の糞と、統一性がないことからも、とにかく手に取ることができるものは何でも投げている印象です。

動物園で見るニホンザルはかわいらしいですが、獣害というのは昔から深刻だったと考えられます。人間であれば訴えることもできますが、獣となればそうもいきません。しかも、知恵のあるさるとなるとさぞや憎たらしい存在だったのではないかと思います。

「共生」という言葉が頻繁に用いられるようになったのは比較的最近だと思いますが、もともとは動物との共生は当たり前であり、暮らしを守るために必要なら駆除するというのも、また当たり前だったのではないでしょうか。でも、さるは捕まえにくそうですよね。だから意地悪なキャラクターになってしまったのかもしれません。

現代においても獣害は大きな問題となっていますが、動物たちの被害を被るのは、彼らのすみかを奪っていった都市の開発者ではなく、そこにただ静かに暮らしてきた人たちだということも、また気の毒なことのように思います。