記述記号(約物/符号)の使い方(2)使い方の原則

漢字かな以外の表記

はじめに

記事の(1)で記号の名称について触れましたが、この(2)の記事では、記号の基本的な使い方についてまとめてみたいと思います。

ただ、記号はたくさん種類があって、用いられ方も一定していないところがありますので、必ずしもあらゆる表記辞書の統一的な見解というわけではないことでご容赦ください。

句点「。」の使い方

句点「。」は、一文を言い切った最後に用います。読点がいくつあっても、接続詞がいくつあったとしても、「。」になるまでが一文です。ただし、あまり一文が長くなると意味がわかりにくくなりますので、適切な位置で区切るようにしたほうがいいですね。

一文を言い切った最後に句点を用いると書きましたが、言い切る形であっても、受ける文章が次に続く場合は句点は用いません。完全にその文章が終わったところに用いてください。

○彼は見事に成功した、そう受け取っていいんだね。
×彼は見事に成功した。そう受け取っていいんだね。

○とにかく勝った、こう理解して何が悪いのだ。
×とにかく勝った。こう理解して何が悪いのだ。

読点「、」の使い方

読点「、」は、読みやすくするために文の切れ目に用います。意味のまとまりのほか、漢字が連続するなどして読みにくい場合にも用いますが、多用するとかえって意味が取りにくくなったり読みにくくなりますので注意してください。

横書きの場合、句読点は「、」と「。」を用います。公用文では横書きの読点はカンマ「,」を用いるように示していた時期がありました。ですから、横書きなら「,」を用いても誤りではありませんが、現在では基本的に「、」を用いるように変更になっています。読点に「,」を用いても、文末は「。」にします。

 補足ですが直接豪雨とこの事故は関係しません。
 ↓
○補足ですが、直接、豪雨とこの事故は関係しません。
×補足ですが、直接豪雨と、この事故は、関係しません。

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中点(中ポツ)「・」の使い方

中点(中ポツ)は、箇条書きの冒頭に用いるほか、並列する語を示したり、外来語や人名の区切りに用います。外来語の場合、通常は2語までは中点を用いず、3語以上の場合に使いますが、1語が長い場合などは2語でも用いることがあります。

(並列)
 阪神・淡路大震災
 イチゴ・メロン・ブドウ味

(外来語)
 ケース・バイ・ケース
 ソーシャル・ネットワーキング・サービス

(人名)
 マリー・アントワネット
 レオナルド・ダ・ヴィンチ

感嘆符「!」と疑問符「?」の使い方

2024年の1月から、公用文においても「?」と「!」を使っていいと示されました。疑問符や感嘆符はすでに浸透していましたので、公用文も追従した形になります。「!」や「?」を用いた場合、次に文が続く場合は1マスあけてから書くのが基本ですが、文章の途中やかぎ括弧の前はあけずに用います。

・それは事実ですか? 真実を述べなさい。
・なぜ高いの?という質問に答えてほしい。
・「痛い!」という叫び声が聞えてきた。

ハイフン「-」の使い方

区間や期間を示すほか、枝番号に用いたり、郵便番号や住所の番地に用いられます。全角か半角かは前後の文字によって使い分けます。ただし、道路の場合はハイフンは用いずに「世田谷町田線」などとします。

・東京-大阪間
・1-3月期統計
・資料1-2
・霞が関3丁目2-1
・〒100-0123

 

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波形「~」の使い方

範囲を表して、「○から○まで」を示します。議事録表記では「イチサン月」は「1-3月」、「イチからサン月」は「1~3月」と表記しますが、新聞表記では数字の範囲の場合にはすべて「~」に統一しています。 

・2~3人(にさんにん)
・50~60件(ごろくじゅっけん)
・2000年~2025年(2000年から2025年)

ダッシュ「――」の使い方

ダッシュは、多くの場合は重ねて「――」の形で用います。なぜなら、単独だと長音やハイフンと紛らわしくなってしまうためです。ダッシュ「――」は、間を置いたり、話題の転換や言い換え、発言の中断を表すために用いられます。また、インタビューの場合の「質問者」を表す場合にも用いられることがあります。

・ほかに質問や意見はありますか。――なければ次に移ります。
・合格――合格といっても3度目のチャレンジですが。
・そうは言っていません。――そうは言ったことがありません。

―― まず、生年月日から教えていただけますか。
後藤 はい。○○年の○月○日です。
―― あの日、何を考え、どんな行動をとったのか覚えていらっしゃいますか?
後藤 よく覚えています。当日は火曜日だったんですが、ちょうど会社の事務所に……

三点リーダー「……」の使い方

三点リーダーは「…」も「……」もどちらもあります。「……」と重ねて用いることが多いものの、新聞などは字数を少なくするために重ねないこともあります。また「…。」や「……。」のように句点とともに用いることもあります。いずれも、主に言いよどみや言いかけてやめた場合、発言を遮られたような場合に使用します。

また、新聞や公用文などの「伝える」目的ではなく、会話を正確に「記録」する目的の場合は、沈黙の長さを「……」で示すこともあります。長くすればそれだけ沈黙が長かったことになり、視覚的に状況を理解することができます。

・困った。どうしよう。どうすれば……。
・間違いないかと……はい、ですから間違いありません。
・…………あのう、ぼ、ぼくのせいじゃないです。なんか……なんか変だったんです。

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かぎ括弧「 」の使い方

かぎ括弧は文章中で句読点の次によく用いる記号ではないでしょうか。会話文に使うほか、固有名詞や表題・ことわざなどの引用や、強調したい語にも用います。

少し混乱するのが句点とかぎ括弧が重なった場合の扱いです。「―――。」にするのか「―――」にするのかということですね。新聞表記では基本的にかぎ括弧の前の句点は省きます。

一方で公用文は、単語や強調する語の場合は「―――」にしますが、括弧内が文になっている場合は「―――。」を用いる立場です。ただ、公用文でも解説や広報に限っては、明らかに文末だとわかる場合は句点を省いてよいことになりました。

・私が大事にしているのは「信頼」と「誠意」です。
・「名簿順でお願いします」ということでしたので、僕が最初に発言します。
・ただいまから「街なかにぎわいフェスティバル」を開催いたします。

また、「――」が文末になる場合は「――」。のようにかぎ括弧の外に句点を打ちます。前の文に続く場合もそうですし、「――」全体が一文になっている場合も同様にします。

① 私の唯一の願いは「どうか合格しますように」。
② 私は真剣に願いました。「どうか合格しますように」。

ただ、新聞では②のように「――」が独立した文になっている場合は文末に句点を用いませんし、逆に公用文の場合は文章の終わりは基本的にかぎ括弧内も句点を用いるので「――。」。になることもあって、かぎ括弧と句点の組み合わせの用い方は一定していません。

ですから、例示した使い方だけが正解ではありませんので、それぞれふさわしいと思うものを選んでください。ただし、方針を決めたら、文章全体で統一して用いてくださいね。

まる括弧( )の使い方

まる括弧は、文中では注釈的な役割を果たします。また、状況描写に用いることもあります。

・展示については国立科学博物館(上野)と調整中です。
・運動会は10月10日に開催します(雨天順延)。
・私からは以上となります。ご清聴ありがとうございました。(拍手)

二重かぎ括弧『 』とダブル引用符“ ” の使い方

二重かぎ括弧の『 』は書籍名や作品名に用います。また、二重に引用する場合などに「 」の中で用いられます。

強調したい語などは “ ” を用いても大丈夫です。「 」ほど大げさに見えないので使い勝手がいいですよね。うまく活用してください。

公用文においては、かぎ括弧の中での二重引用の場合も「――「――」――」にしていますので、「 」の中は必ず『 』や “ ” を用いなければならないということではありません。

このように、強調や引用、そして二重引用には複数の方法がありますが、各表記辞書で一定していないのが難点です。一般的には、二重引用部分が短い単語の場合には「 」や “ ” を用い、長い文章の引用には『  』もしくは「  」にすることが多いようですが、それぞれのお立場やお考えに合ったものを用いてみてください。ただし、方針を決めたら文章の中では統一することを忘れずに。

(書籍名、作品名など)
・夏目漱石の作品で最も好きなのは『我が輩は猫である』です。

(語の強調の例)
・私が知ってる「界隈」と、最近よく使われる「界隈」は、意味が違うわね。
・私が知ってる“界隈”と、最近よく使われる“界隈”は、意味が違うわね。

(二重引用の例 公用文は③)
①「先生が『希望者だけでいいです』と言った」と彼は述べているんですよ。
②「先生が“希望者だけでいいです”と言った」と彼は述べているんですよ。
③「先生が「希望者だけでいいです」と言った。」と彼は述べているんですよ。

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亀甲(きっこう)括弧〔 〕の使い方

通常の文中では用いませんが、議事録の中では状況説明に用います。

〔議長退席〕
〔賛成者起立〕
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

まとめ

ここまで、記述記号の具体的な使い方についてまとめてみました。記号は基本的なところを押さえれば、あとは自由に用いて問題ありませんが、機種依存文字になっていることもありますので、その点は注意して使ってみてくださいね。

ほかにも言及しきれていない記号はたくさんありますが、今回はここまでとさせていただきます。最後まで読んでくださってどうもありがとうございました。