のぼる/「上る」「登る」「昇る」の使い分けを詳しめにまとめました

もう迷わない 漢字のチョイス

はじめに

「のぼる」の表記には「上る」「登る」「昇る」があります。身近な言葉なので、それぞれの意味をちゃんと理解して使っているつもりでも、改めて書こうと思うと迷うことってありませんか? そこで今回は、確認の意味も込めて、「上る」「登る」「昇る」の使い分けについてまとめてみたいと思います。

「上る」の意味と使い方

「上る」は、下方から上方に移動する意味のほかに、川の上流に向かうことや、地方から都に向かうという意味もあります。また、数量が相当程度に多くなる場合や、話題の材料として取り上げられること、さらには食べ物として供される場合にも用います。

「階段」や「坂」は「上る(のぼる)」のほかに「上がる(あがる)」も使います。「上る」と「上がる」は、表記も意味も似ていて困りますよね。もちろん、どちらを使っても問題ありませんが、「上る」のほうが一歩一歩進んでいくことを表す場合に好まれる印象があります。

・階段を上った先に入り口がある。
・自転車だと坂を上るのがきつい。
・はしごを上るのは少し怖いな。
・船で川を上っていきましょう。
・上り列車の始発は何時だろう。
・連休中の入場者数は3万人に上った。
・あなたのことが話題に上りましたよ。
・つい、頭に血が上ってしまいました。
・好物が食卓に上るとうれしいな。

地方から出てきた人を「お上りさん」といったりするのは、もともとは都に上ったからなのね。

スポンサーリンク

「登る」の意味と使い方

「登る」は、木に登ったり山に登ったり、もともとある高いものをめがけて移動する場合に用います。そして、それは心理的に高いもの、特別なものの場合もあって、「登壇」「登用」「登場」などと用いられています。ただ、「演壇」や「教壇」には、「登る」よりも「立つ」が好まれるようです。

野球の場合、ピッチャーが試合で投げることを「登板」といいますが、それとの整合性から「マウンドに登る」という表現が用いられています。

また、急激に好調になることを「うなぎ登り」といいますが、変化が著しいので「登り」にします。「うなぎ上り」だとうなぎが上流に泳いでいくことになってしまいかねませんので、少し気に留めてみてください。

一方で、「上り調子」「登り調子」はどちらもあります。だんだん上向きになっているのか、急激によくなっているのかで使い分けてみてください。そんなに厳密に使い分ける必要はないと思いますが、「うなぎ登り」に調子が上がっている場合は「登り調子」になりそうですね。

・富士山に登るのは大変だよ。
・私は木に登ることはできません。
・鉄塔に登って作業するのは危険だ。
・演壇に登って話すのは緊張します。
・好きな選手がマウンドに登った。
・うなぎ登りに業績が上がっている。

学校に行くことを「登校」というのは、学校は特別な場所ということなのかな。

スポンサーリンク

「昇る」の意味と使い方

「昇る」は空間移動の場合に用います。いわば2次元ではなく3次元の世界、X軸とY軸だけでなくZ軸が加わるんですね。エレベーターの場合、地面を離れて垂直に移動するので「昇る」を用います。エスカレーターなら階段と同じく「上る」または「上がる」です。

太陽や月が昇ったり、煙が昇ったりするほかに、神聖な場所に行くことにも用いられますが、神聖な場所というのは日常ではあまり使わないかもしれません。アニメならよく神殿に昇ったりしていますけれどもね。

また、「昇」には「高いところに勢いよく動く」という意味もあります。それで「昇進」や「昇給」などの熟語があるんですね。ですから、とても高い地位に就く場合には「昇る」を用います。

・エレベーターで昇ったほうが楽だ。
・元日に朝日が昇るのを見てみたい。
・まさか月は西から昇るとでも?
・見て! 気球が空に昇っていくよ。
・細い煙が空に昇るのは風情がある。
・うれしくて、天にも昇る心地です。
・高位高官の地位に昇ることが願いなの?

学校では上履きシューズに履き替えるところを「昇降口」というけど、どうしてだろう。学校って本当に不思議な場所だよ。

まとめ

ここまで、「上る」「登る」「昇る」の使い分けについてまとめてみました。それぞれの役割をイメージしておくと使い分けもしやすいかもしれません。でも、迷ったら調べればいいんです。日本語の表記は複雑なので迷って当然です。それに、なんだか語感に合わないなと思ったらひらなでも大丈夫です。使い分けを覚えることも大事かもしれませんが、それよりも、伝えたいことを表現することのほうが大事ですよね。

最後までお読みいただきありがとうございました!