オタクと科学と哲学のコラボレーション『シュタインズ・ゲート』

次世代に伝えたい傑作アニメ

若い世代にこそ薦めたいサイエンスフィクションの最高峰

日本のアニメは本当にすばらしくて名作ぞろいです。世界に誇れる日本のカルチャーといったら、まずアニメが挙げられますよね。たくさんのアニメがあってとてもすべては見られませんが、その中でも名作を厳選して紹介していきたいと思います。

今回は『STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)』です。特にリアルタイムで見ていなかった若い世代にお薦めしたい作品です。「毎日、たくさんのアニメが配信されているのに、どうしてこんな古いものを?」と思われるかもしれませんが、文学にたとえれば、「現代作家の小説もいいけれど、夏目漱石や森鴎外もやっぱりいいよね」という気持ちに近いでしょうか。名作としてずっと残り続けてほしい作品です。

「オタク」が市民権を得る前の時代を知る

時は2010年の夏、東京・秋葉原です。登場人物がガラケーを使っているのでちょっと古い感じも受けますが、内容的にはまったく古さを感じさせません。これが続編の『シュタインズ・ゲート ゼロ』になるとスマホになるあたりも時代の変化を感じます。

ちなみに、スマホの所有率がガラケーを抜いたのは2016年だそうですが、若者だともっと早くて、ちょうど2010年あたりだと一定数はスマートフォンを使っていたでしょうし、「次に新しくするならスマホにしよう」という時期だったかなと思います。ちなみに、日本にスマートフォンが上陸したのは2008年の夏でした。

作中で出てくる「@ちゃんねる」というのは、間違いなく「2ちゃんねる」をオマージュしたものです。2ちゃんねるの創設者であるひろゆき氏は1976年生まれのX世代の人ですが、『シュタインズ・ゲート』は、その影響を大いに受けながら新しい時代を創造していったY世代のお話です。ですから、作中には「~だお(~だよ)」とか、「乙(お疲れさま)」とか、「きぼんぬ(希望します)」などの2ちゃんねる用語がたくさん出てくるのも楽しいですね。当時はオタクはまだ肩身の狭い生活をしていたんですよ。

『シュタインズ・ゲート』のあらすじとみどころ

さて、物語のあらすじですが、大学生の岡部倫太郎は、「未来ガジェット研究所」という、いわば「ものづくり同好会」みたいな科学ラボを立ち上げて、身の回りの電化製品でヘンテコな機械を作っていたんです。そのひとつが「電話レンジ(仮)」で、それを使うとメールが過去に送られることがわかったんです。半信半疑でさらに実験を繰り返すうちに、そのメールによって過去の出来事までも改変されてしまうことが判明します。

その後、ラボのメンバーであるスーパーハッカーの橋田や、才女である牧瀬紅莉栖の協力によって、メールだけではなく人間の記憶を電子信号として過去に送るタイムリープマシンを完成させますが、その技術を狙う組織に目をつけられ、幼なじみの椎名まゆりの身に大変なことが起こってしまいます。責任を感じた岡部は、この悲劇を回避しようと何度も過去をやり直すのですが、どうしてもうまくいきません。このあたりは本当に見ていてつらくなります。

物語の見どころは、岡部が、Aを助ければBを失い、Bを守ればAを失うという、いわゆる「トロッコ問題」の解答を迫られることにありますが、それでどういう選択をしたのかというのは見てのお楽しみです。その選択は「シュタインズ・ゲートの選択」だったんです。

「世界線」というワードを使いこなそう

『シュタインズ・ゲート』には「世界線」というワードが何度も何度も出てきます。Wikipediaを見ると、「世界線とは零次元幾何を持つ点粒子の時空上の軌跡」と書いてあります。零次元とは点のこと、幾何とは不安定なもののことですよね。つまり、不安定な点である無数の事象が次々に起こっていて、それがひとつのまとまりとなり過去から未来に流れている、その軌跡が世界線です。そして、その世界線は、1本ではなく複数が干渉することなく並行して流れているというのです。

わかりやすい例で考えてみましょう。例えば、ほんのわずかの差で自分ではないほかの人間が誕生していた可能性は十分にあったわけですよね。もしそうであっても、生まれてきた子どものことを周囲は当たり前のように受け入れたでしょうし、自分が存在しない世界が何の違和感もなく展開されていたにちがいありません。そう考えれば、複数の世界線が平行して流れているという考え方は理解できる気がします。

「世界線が変わった」という言い回しは、想定していたこととは違うことが起きた場合や、衝撃的なことが起こった場合に好んで用いられています。ぜひ、かっこよく使いこなしてみてくださいね。

・受験に失敗したことで僕がたどってきた世界線は確かに変わったのだ。
・地球の環境が劇的に変化していて、世界線がいつ移動してもおかしくない状況です。
・別の世界線では、私ではない誰かが、私よりずっと上手に生きているのかな。

「バタフライエフェクト」というワードを使いこなそう

『シュタインズ・ゲート』の中に「バタフライエフェクト」という言葉が出てきます。「バタフライエフェクト」とは「蝶のひとひらのようなほんの小さな変化が、ある小さな事象を引き起こし、それがまた次へ、また次へと波及することで、結果的に大きな変化をもたらすこと」です。力学用語なのになんだかステキな表現ですよね。

たとえば、「わらしべ長者」もバタフライエフェクトだと思いますし、「風が吹けば桶屋がもうかる」もそうかもしれません。意図しなかったことがまったく予想外の結果をもたらすことってありますよね。

そもそも、人間の一人一人の行動は蝶の羽ばたきのような頼りないものです。自分なんていてもいなくても同じだなと感じることが多いですが、それでも、何かしらの影響は及ぼせているのかもしれないと思うと、少し元気が出てくる言葉です。

「STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)」はアニメタイムズの30日間無料体験で鑑賞できるようですよ。

『シュタインズ・ゲート』劇場版の「負荷領域のデジャヴ」のこと

「シュタインズ・ゲート」には劇場版があって、「負荷領域のデジャヴ」と題されています。このお話は、その名のとおり既視感(デジャブ)の正体について述べられているんですね。衝動的にとってしまう行動、ふと思いついた考え、何か違うなという違和感は、すべて別の世界線で体験したものだということが語られています。そのあたり、自分の生活に引きつけて考えると空想が広がります。

岡部は、何回も世界線を行ったり来たりして、やっとの思いでAもBも失わない世界線にたどり着くわけですが、そのために脳に負荷がかかりすぎて不安定になり、今度は仲間がいる世界線から存在が消えてしまいそうになります。岡部のいない世界が現実のものとなりそうになったとき、仲間はどうしたでしょうかというのが「負荷領域のデジャヴ」のお話です。

劇場版 STEINS;GATE 負荷領域のデジャヴもアニメタイムズの30日間無料体験で楽しめます。

『シュタインズ・ゲート ゼロ』について

『シュタインズ・ゲート』には続編があって、それが『シュタインズ・ゲート ゼロ』です。舞台は、最初の物語から半年後の2010年の冬から始まります。前からのつながりからすると「あれ?」と思うかもしれませんが、紅莉栖がいないβ世界線上という設定です。

あらすじですが、岡部は、厨二病的なふるまいは一切しなくなり、人格さえも変わったようになって大学生活を送っていました。まゆりは救えたものの紅莉栖を失ったためです。彼は苦しみながらも紅莉栖のいない現実を受け入れようとしていました。

しかし、紅莉栖は意外な形で存在していました。彼女が亡くなったあと、在籍していたアメリカの大学の研究者の手によって、まるで紅莉栖そのものであるかのようなAIが誕生していたのです。岡部はそのAIが、あたかも本物の紅莉栖のように錯覚し、我を失っていきます。

橋田らは紅莉栖の先輩である比屋定に協力を求めてタイムリープマシンを再び完成させます。一方、まゆりは自分を助けたせいで岡部が変わってしまったことを悔やみ、命を賭して過去に向かう決意をします。やがて岡部も自分の使命を再認識し、ラボメンの仲間の活躍に支えられ、AIの紅莉栖に勇気づけられながら、気の遠くなるほどのタイムリープを繰り返して、ようやくシュタインズ・ゲートにたどり着きます。

「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」

「シュタインズ・ゲート」を見ていると、フランスの小説家であるジュール・ヴェルヌの「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」という言葉を思い出します。作中で描かれている科学技術が、いまや現実のものになっているからです。紅莉栖の姿をしたAIも、当時はまだ研究開発段階だったかもしれませんが、現在においてはたくさんの生成AIが一般ユーザーに浸透するまでになりました。まるで未来を予言しているような『シュタインズ・ゲート』のストーリー展開に驚愕しないではいられません。

こんなふうに、科学とオタクと哲学をまるごと楽しめる『シュタインズ・ゲート』を、ぜひお楽しみくださいね。

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