はじめに
「おりる」には、「下りる」と「降りる」がありますよね。使い慣れているはずでも、いざ書こうと思うとどっちにするか迷うことはありませんか? 今回は、「下りる」と「降りる」の表記について、具体的な用例を挙げながら使い分けを確認していきたいと思います。
また、別記事では「下ろす/降ろす/卸す/おろす」の使い分けについて書いてみましたので、必要に応じて参照していただければ幸いです。
「下りる」の使い方と用例
「下りる」は上から下へ移動する場合に用います。地続きのところをずんずん下っていくイメージですね。また、シャッターなど上下に動くものが下がる場合も「下りる」にします。
あるいは、「肩の荷が下りる」のような慣用表現も「下りる」にしますし、指示や許可が出されたり与えられることについて、「許可が下りる」「年金が下りる」などと用います。
スキー場などのリフトの場合ですが、リフトを使って山の上から下に移動する場合には「下りる」ですが、リフトという乗り物からおりる場合は「降りる」にします。
【「下りる」の用例)】
(上から下に移動する)
・階段を下りる
・2階から下りる
・木から下りる
・坂道を下りる
・タラップを下りる
・山から下りる
・リフトを使って下りる
・屋根から下りる
・はしごを下りる
・遮断機が下りる
・幕が下りる
・シャッターが下りる
(慣用句的な表現)
・肩の荷が下りる
・胸のつかえが下りる
(指示や決定が与えられる)
・許可が下りる
・認可が下りる
・年金が下りる
・恩給が下りる
(体内から外に出される)
・尿にたんぱくが下りる
・薬で回虫が下りる

「屋根」は地続きじゃないけど、「屋根から降りる」にすると飛び降りることになって危険だから「下りる」なんだね。
「降りる」の使い方と用例
「降りる」は、地続きではないところへ降りる場合に用います。車や電車などの乗り物から降りる場合がそうですね。エレベーターも乗り物として扱って「降りる」にします。
高速道路から一般道に移動する場合も「降りる」です。高速道路と一般道は別のラインということで「降りる」にするんですね。
空中を伝って降りるのも「降りる」です。高い場所から飛び降りたり、天使が舞い降りたりしますし、月面にも降り立ちます。気象関係では「霜が降りる」「露が降りる」などと用います。
また、地位や役目を退いたり、勝負などへの参加をやめる場合にも「降りる」を用います。負けそうな賭け事は早めに降りたほうがいいかもしれません。
【「降りる」の用例】
(乗り物などから出る)
・車を降りる
・電車から降りる
・飛行機を降りる
・リフトから降りる
・エレベーターを降りる
・壇を降りる(降壇)
・リングを降りる
・駅で降りる
・高速道路を降りる
(空中経由で下に移動する)
・飛び降りる
・舞い降りる
・体操競技の鉄棒で床に降りる
・パラシュートで地上に降りる
・月面に降りる
・初霜が降りる
・露が降りる
・夜のとばりが降りる
(地位や役目を退く)
・主役を降りる
・マウンドを降りる
・会長候補から降りる
・社長の座を降りる
(参加を取りやめる)
・試合を降りる
・業務から降りる
・勝負を降りる

「とばり」は空間を仕切る垂れ布のことだけど、「夜のとばりが降りる」で「夜になる」という意味なのよね。
「船」や「馬」は「下りる」なの?
乗り物の場合、ほとんど「降りる」が用いられますが、「下車」「下船」「下馬」などと「下」が用いられている熟語がやっかいです。
車や電車は「乗車」に対して「降車」ですから「降りる」で問題ありません。ニュアンスとしては、乗り物から出るのが「降車」で、ルートや路線から離脱するのが「下車」でしょうか。
一方、船は「乗船」に対して「下船」なので「船を下りる」ですし、馬も「乗馬」に対して「下馬」なので「馬を下りる」になります。
ただ、このことに正式に言及があったのはNHKの表記辞書のみでした。公用文や新聞表記においては特に触れられていませんでしたので、私の場合ですが、統一した見解として定着しているのかちょっと不安になって「おりる」とひらがなにしてしまいがちです。ただ、整合性をとるなら「船」と「馬」は「下りる」になるようです。
まとめ
簡単なようでもなかなか一筋縄ではいかないのが日本語の表記です。別記事で、「下ろす」「降ろす」「卸す」「おろす」の使い分けについて同様にまとめていますので、もしもご興味がありましたら参照してみてください。最後までお読みいただきありがとうございました。