はじめに
「(~の)きらいがある」という言い回しはちょくちょく見聞きしますよね。「~の傾向がある」という場合に用いられる「きらい」です。私はひらがなで書いていましたが、もともとどんな漢字を書くのかずっと気になっていたんです。そこで調べてみたら、なんと「嫌い」だったんです。これにはちょっと驚きました。
でも、「きらいがある」とひらがなになっていることも多いですよね。そこで今回は、本当に「嫌いがある」と書いていいのか、各表記辞書ではどのように扱っているか調べてみることにしました。
「きらいがある」とはどういう意味?
そもそも「きらいがある」というのはどういう意味かというと、「そういう傾向がある」とか「どうかするとそうなりがちだ」というように否定的なことばを受けて用いられます。
(用例)
・彼は独断で物事を決めるきらいがある。
・あいつはすぐ感情的になるきらいがある。
・部長は気持ちを態度に出すきらいがあるよね。
これは、好ましくないことを受けて用いるので、ほめことばとしては用いません。いいことを言っていたとしても、「きらいがある」とすると、たちまちマイナスの意味になってしまいます。
「嫌い」の品詞は何だっけ?
「嫌い」は、「好き」の反対語で、いやがること、好まないことです。これは品詞でいえば形容動詞になります。
・野菜は嫌いだったよね?
・体育は嫌いなんです。
・人前で話すのは嫌いだな。
ところが、「嫌い」には名詞形があって、それが「嫌いがある」という言い回しで用いる場合なんですね。でも、「好きがある」とは言いませんので、「嫌いがある」というのはなんだかなじまない感覚があります。
ただし、「好き嫌いがある」ならよく用いていていますよね。「好き嫌い」も名詞で、えりごのみするとか、嫌いなものを受け付けない場合に用います。名詞の「好き嫌い」のうち、「嫌い」だけを取り出すと「~する傾向がある」という意味になるというのはちょっとおもしろいですね。
・好き嫌いがある。(嫌いなものと嫌いなものがある)
・嫌いがある。(~する傾向がある)
「きらいがある」はひらがなでもOKです
このように、漢字で書くなら「嫌いがある」と「嫌」を用いて間違いではありませんし、実際、議事録や公用文では「嫌いがある」と書きます。「常用漢字内で書ける名詞は漢字で書く」という原則がありますのでね。
ただ、新聞・マスコミ表記では、「(~の)きらいがある」の言い回しの場合は「きらいがある」とひらがなで書くように示してくれていました。それでひらがな表記をたくさん目にしていたわけですね。
なじんでいないせいか、どうも「嫌いがある」と漢字にするのは抵抗があったのですが、「きらいがある」と書いて大丈夫だということで安心しました。
まとめ
「きらいがある」は「嫌いがある」だったのはちょっと意外でしたが、ひらがなで書いたとしても「嫌い」の漢字を思い浮かべると、好ましくない場合に用いることを意識できるように思います。私は、すぐ早合点してしまうきらいがあるので、落ち着いて考えるように習慣化したいと思っているところです。
ご存じの方も多かったかもしれませんが、遅まきながら私は初めて気づいたことでしたので記事にしてみました。ここまで読んでいただきありがとうございました!