これで大丈夫!「合わせる/併せる」の違いと「あわせて」の使い分け

もう迷わない 漢字のチョイス

はじめに

「合わせる」と「併せる」の使い分けは、簡単なようでちょっと迷うことがありますよね。それに、「あわせて」と「て」になると、ひらがなで「あわせて」にしたほうがよい場合もあるのでなんだか混乱してしまいます。

そこで今回は、「合わせる」「併せる」の意味の違いについて用例で確かめながら、「あわせて」の使い分けについて探っていきたいと思います。

「合わせて」「併せて」「あわせて」の用例

使い分けで迷いがちなのが「あわせて」の場合だと思いますので、まず、具体的にどのように用いるかを例示してみたいと思います。

(合わせて)
・彼女の誕生日に合わせてレストランを予約しました。
(併せて)
・明日は、筆記試験と実技試験を併せて実施します。
(あわせて)
・皆様のご多幸と、あわせて、更なるご活躍をご祈念いたします。

このように使い分けます。それぞれ、どうしてそうなるのかを見ていくことにしましょう。

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「合わせる」とはどういう意味?

まず、「合わせる」の意味を確認してみます。「合わせる」はたくさんの意味がありますので、用いる機会は多いのではないかと思いますが、大きく分けると次のようになります。

(ぴったりくっつける)
・手を合わせてお願いしました。
(混合する)
・油と酢を合わせてドレッシングにする。
(合計する)
・弟と僕のお小遣いを合わせて520円だ。
(一致するようにする)
・相手に話を合わせておいた。
(調和するようにする)
・服の色に合わせて靴を選ぶ。

このように使います。

冒頭の例文の「彼女の誕生日に合わせてレストランを予約した。」というのは、彼女の誕生日に日にちを「一致するようにする」という意味ですから「合わせる」を用います。

もう少し用例を見ていきましょう。

・時計を合わせる
・答えを合わる
・突き合わせる
・待ち合わせる
・歩調を合わせる

ちなみに「合わせる」は、動詞の「合う」の未然形に助動詞「せる」がくっついた他動詞です。

「併せる」とはどういう意味?

「併せる」の意味は限定的で、「2つ以上のものを両立させる/並行させる」という意味の場合に用います。

「合わせる」との違いですが、油と酢を「合わせる」とそれぞれ区別がつかなくなりますが、「併せる」の場合は、もともとの形を保ったままで並行したり両立させたりします。ですから、最初の用例の「筆記試験と実技試験を併せて実施します。」の場合、筆記試験も実技試験もそれぞれ形を保ったまま行われるというわけです。

用例で確かめてみましょう。2つ以のいずれも尊重されるのが「併せる」になります。

〔併せるの用例〕
・希望と現実を併せて考えてください。
・教科書と併せて参考書も用いなさい。
・お給料と交通費が併せて支給された。
・教養と美貌を併せ持った人だ。
・清濁併せ呑む(※あるがまま受け入れる)

「合併」という言葉がありますが、例えば、ある会社とある会社を「合わせた」場合は、構成員も混在して区別がなくなりますが、「併せた」場合は、それぞれの会社はそのまま機能して、全体を統合するイメージになります。ですから、合併後の形態によって「合わせる」と「併せる」を使い分けます。

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接続詞的に用いる「あわせて」はひらがなにします

ここまで「合わせる」と「併せる」の使い分けについて述べてきましたが、「あわせて」という場合にはとひらがなにすることがあるんですね。それはどんな場合かというと接続詞的に用いられる場合です。なぜかというと、公用文においては基本的に「接続詞はひらがなにする」という原則があるためです。

用例を見ていきましょう。

・皆さまのご多幸と、あわせて、更なるご活躍をご祈念いたします。
・ご幸運を祈るとともに、あわせて皆様のご多幸をお祈りします。
・あわせて、アンケートの回答にもご協力をお願いいたします。

このようにひらがなにします。

ただ、新聞表記では特に接続詞はひらがなにするという言及はありませんでしたので、公用文や議事録以外であれば必ずひらがなにしなければならないということではないようです。NHKはひらがなを推奨しています。

副詞的な用法と接続詞的な用法の見分け方

では、漢字で書く「併せて」と、ひらがなを用いる「あわせて」は、どのように見分ければよいのでしょうか。

副詞的な用法の場合には、多くは「~と」「~を」「~が」などの助詞と一緒に「~と併せて」「~を併せて」「~が併せて」のように用いられます。

(※用例を再掲します)

・希望と現実を併せて考えてください。
・教科書と併せて参考書も用いなさい。
・お給料と交通費が併せて支給された。

一方、接続詞的な用法の場合には、多くは前の部分を読点で区切って「、あわせて」のように用いるか、または句点のあとの文頭で用いられます。

(※用例を再掲します)

・皆様のご多幸と、あわせて、更なるご活躍をご祈念いたします。
・ご幸運を祈るとともに、あわせて皆様のご多幸をお祈りします。
・あわせて、アンケートの回答にもご協力をお願いいたします。

例外もあるかもしれませんが、このようなことを判断基準にしてみてくださいね。

まとめ

ここまで「合わせる」「併せる」と「あわせて」の使い分けについてまとめてみました。

・「一致させる」「まとめる」「合計する」の意味なら「合わせる」を用いる
・「並べる」「両立する」の意味なら「併せる」を用いる
・接続詞的に用いる場合は「あわせて」とひらがなにする

このような点に留意して書き分けてみてくださいね。ここまで読んでくださってありがとうございました。