「わかる」の表記は「分かる」? 「わかる」?

表記の決まりごと

「わかる」は漢字で書くと「分かる」です

「わかる」の表記について各表記辞書を調べてみると、公用文も新聞表記も議事録も、そしてNHKの表記辞典でも「分かる」を採用しています。ただ、2010年ぐらいまでは公用文や議事録、NHKでは「わかる」を採用していて、新聞表記だけ「分かる」にしていましたので、常用漢字表が改訂された時期に変更になったんですね。

「わかる」といっても複数の意味があります。

・物理の問題がわかった。    (理解)
・彼は無罪だとわかった。    (判明)
・わかったよ。やっておくよ。  (了承)

「解」も「判」も区別せずに、全部「分かる」にするということは、意味によって区別の必要はないということですね。それならいっそのこと「わかる」とひらがなにしたほうがよいのではないかとも思いますが、現在では「わかる」の表記は「分かる」になっています。

「わかったわかった」って生返事をしてよく怒られるんだ。

「分」とははどいう意味?

「分」というと、どうしても「分かる」よりも「分ける」という意味を連想してしまいますので、念のため漢和辞典で「分」を調べてみました。

漢和辞典を引くと、「分」は「わける」のほかに「わかつ」という読みがあって、これが「判別する」や「見分ける」という意味でした。ですから「分かる」であっても「判る」と同じ意味を持つんですね。これでようやく「わかる」を「分かる」と書くことに納得できました。

ただし、「分」には「理解する」という意味はないようなので、「この答えはわかりましたか?」などの場合にはひらがなのほうがよいのかもしれません。

「わかる」はひらがなにしても大丈夫です

こんな気持ちに応えてくれるように、2024年の文化審議会の「公用文作成の考え方(建議)」を見ると、「常用漢字表に字種と音訓がある漢字であっても、文書の目的や想定される読み手に応じて、平仮名で表記したり振り仮名等を用いたりする」とし、例として「分かる→わかる」を挙げています。

つまり、「わかる」は漢字で「分かる」と書くけれども、「わかる」と書くことを妨げないということを示しているんですね。これは書き手に判断が委ねられているということでもありますので、それぞれ文脈、または読み手にふさわしい表記を用いてみてください。ただし、前述したように、新聞などでは「分かる」を採用していますので、基本的には「分かる」になりそうですね。

必ず「分かる」を使わなくてもいいってことなのね。

「分別」は「ふんべつ」と「ぶんべつ」で意味が異なります

「分かる」に関連して、正しい判断のことを「分別」といいますよね。「分別がつく」とか「分別がある」などと用います。でも、「分別」は「ふんべつ」と「ぶんべつ」という二通りの読み方があって、濁点の有無によって意味が異なるおもしろい熟語です。分別(ふんべつ)のある人はごみの分別(ぶんべつ)もしっかりできそうですね。

「分別(ふんべつ)」:物事の道理や善悪などの常識的な判断、またはその能力。
・やっていいか悪いかの分別くらいつく年齢でしょうに。

「分別(ぶんべつ):種類によって区分や区別をすること。
・きちんと資源ごみは分別して出すようにしてください。

まとめ

ここまで「わかる」についてまとめてみました。最後まで読んでいただきありがとうございました。「分かる」という表記は非常になじみのあるものですが、どうしても「分」がそぐわないと感じる場合はひらがなで表記しても問題ないという根拠もありましたので、そのことを勘案しながら納得のいく表記を選んでみてくださいね。