はじめに
「きく」には「聞く」と「聴く」がありますよね。「聞く」はhear、「聴く」はlistenと使い分けている方が多いことと思いますし、もちろんそれは正しい使い方ですが、ほかにも「問う/尋ねる」、つまりaskという意味もあります。
でも、いざ書き分けようとすると、どの意味なのか判断がつかないこともありますし、「聞く」と「聴く」が文章の中に散らかってしまい整合がとれなくなることもあります。ですので、「聴く」は使う範囲を限定する特別用語として扱い、そのほかは一般用語としての「聞く」を用いることになっているんですね。
そのほかにも押さえておいたほうがいいポイントがあって、知っておくとかなりすっきりすると思いますので、今回は「聞く」と「聴く」の使い分けについてまとめてみたいと思います。
「聞く」にするのはどんなとき?
「聞く」とは、もちろん「音、声、言葉などを耳で感じとる」ことですね。ほかにも「内容を情報として知る」や「承知する/聞き入れる」という意味もありますし、「人に尋ねる/問う」という意味もあって、守備範囲がとても広いんですね。
自分が意識していなくても、音として耳に入ることもありますよね。このように自動詞の場合は「聞こえる」「聞こえてくる」と書きますが、聴力検査のような場合はこの限りではありません。自動詞でも「聴」との整合から「きこえ」や「きこえる」とひらがなにすることが多いようです。
具体的にどのように使うか用例で確かめてみましょう。
(音、声、言葉などを耳で感じとる)
・風の音が聞こえてくる。
・さっき不審な物音を聞きました。
・話を聞く態度に問題がある。
・先輩の声を聞いた気がする。
(内容を情報として知る)
・彼のうわさを聞いた。
・あなたの考えを聞きたい。
・この話は聞いたことがある。
・計画とやらを聞かせてもらおう。
(承知する/聞き入れる)
・言うことを聞いてくれ。
・要求を聞いてもらえました。
・なんとか頼みを聞いもらえませんか。
・親のアドバイスは聞くべきだと思う。
(人に尋ねる/問う)
・聞きたいことがあります。
・道順を聞いておくべきだった。
・お名前を聞いてもいいですか。
・どうやるのか聞いたほうが早いよ。
「聞き+○○」の複合語は「聞く」を用います
また、「聞く」というのは「聞き+○○」の形で複合語になったり慣用的な言い回しになるものがたくさんありますが、その場合は「聞」を用いるのが一般的です。「聴き取り」ではなく「聞き取り」にするということですね。これを押さえておくと書き分けにあまり迷わなくなります。
ただし、文章中で「聴」を用いていた場合などで、文脈として整合性に欠けるような場合は必ず「聞」にしなければならないということではありません。
(「聞き+○○」の例)
・聞き取る
・聞き違い
・聞き入れる
・聞きつける
・聞き覚え
・聞き慣れない
・聞き伝え
・聞き流す
・聞き耳を立てる
・聞き役に徹する
・聞きづらい
・聞き届ける
・聞き手
・聞き分けが悪い
・聞き上手
・聞き捨てならない
・聞き取り調査
・聞きほれる
・聞き逃す
・人聞きが悪い
・立ち聞きする
・盗み聞きする
など
「聴く」を使うのはどんなとき?
「聴く」を用いるのは特別な場合で、耳を傾けて聴く、注意して音をとらえる場合に用います。鑑賞したり聴取する意味もこれに含まれます。
具体的には次のように用います。
・音楽を聴く
・ラジオを聴く
・講義を聴く
・声なき声を聴く
・国民の声を聴く
・事情を聴く
・社長の訓示を聴く
・審議会の答弁を聴く
・オーケストラの演奏を聴く
使い分けのポイント
「聴く」を使うポイントは、相互のやり取りではなく傾聴すること、つまり、自分は発言せずに耳を傾ける役に徹するようなニュアンスの場合には「聴く」にします。
音楽やラジオの音は一方的に「聴く」ものなのでわかりやすいですが、意見などの場合は「聞く」と「聴く」があります。「意見を情報として知る」や「意見を聞き入れる」ということなら「聞く」ですが、「意見に耳を傾ける」「意見を聴くことに徹する」という意味なら「聴く」にします。
また、「耳を傾ける」というのは相手に敬意を払った言い方でもあります。そのため、「私の講演を聴いてください」というと上からな言い方になってしまうんですね。そのあたりは少し注意してみてくださいね。
まとめ
・「聞く」は一般用語で「音を感じとる/知る/承知する/尋ねる」などの意味で用いる。
・「聴く」は特別用語で、耳を傾けて聴く場合に限定する。
・複合語の場合は「聞き+○○」の形で「聞」を用いる。
今回は「聞く」と「聴く」の使い分けのポイントについてまとめてみました。少しでもお役に立てたら幸いです。最後まで読んでくださってありがとうございました。