はじめに
「利く」というと「右利き」や「左利き」というように用いますし、「効く」なら「薬が効く」のように使い分けていますよね。でも、これってどっちだろうと迷うことがあるのではないかと思います。例えば「冷房がきいた部屋」はどっちでしょうか。「わさびがきいておいしい」というときはどっちでしょうか。
迷うのも当然で、どちらも意味が似ているんですよね。でも、ポイントを押さえておけば迷いが少なくなると思いますので、今回は「利く」と「効く」の使い分けについて探っていくことにしましょう。
「効く」を使うのはどんなとき?
まず、限定的に用いる「効く」を押さえておくのが効率的かと思います。
「効く」は「効果や効能が現れる/効き目がある」という意味で用いられます。何らかの働きかけをして、見込んだ効果が現れることですね。ですので、「効果がある」「効果的だ」「効果が現れている」というような言葉と同等の意味なら「効く」にします。
・この薬は下痢によく効くよ。
・チラシを配布したのが効いてきた。
・この漫画は風刺が効いている。
・暖房がよく効いて快適だ。
・冷房が効きすぎて寒い。
・ほめたのが効いたのかもしれない。
・マッサージが効いて体が軽い。
・業務改善が効いて早く帰れるよ。
・ジム通いが効いて体が締まってきた。
・柔軟剤が効いてふっくら仕上がった。
「利く」を使うのはどんなとき?
「利く」は「機能がよく働く」「可能である」という意味で用います。外から力を加えるのではなく、もともと備わっている機能や性質がよく働くイメージですね。ですから、「よく働く」や「可能である」という言葉に入れ替えてみて、意味が通じる場合は「利く」になります。
用例で確かめてみましょう。
・気が利く
・左手が利く
・機転が利く
・顔が利く
・目が利く
・鼻が利く
・わさびが利く
・ブレーキが利く
・小回りが利く
・保険が利く
・学割が利く
・応用が利く
・修理が利く
・すごみを利かせる
・にらみを利かせる
・無理が利かない
・体が利かない
・ごまかしが利かない
・小細工が利かない
・やり直しが利かない
・見通しが利かない
・代えが利かない
わさびは「利く」も「効かせる」もあります
わさびは「利く」を用いますが、「効かせる」こともあるんですね。わさび本来の辛さを発揮しているときには「利く」ですが、料理人さんが工夫して効果的に用いる場合は「効かせる」になります。ですから、わさびが持っている力に着目するのか、調理の工夫に着目するかなど、文脈で判断してみてくださいね。
冷暖房は「効く」で、エアコンは「利く」です
冷房も暖房も、よく効いていると過ごしやすいですよね。冷暖房の効果は「効く」ですが、エアコンが故障しているかどうか確かめるような場合は、「このエアコン、利いてる?」になるんですね。「機能していますか?」という意味ですからね。このあたりは紛らわしいですので、念のためお伝えしておきますね。
「口を利く」には二通りの意味があります
「夫婦げんかをして1週間も口を利かなかった」なんていう話を聞くことがありますが、「口を利く」には二通りの意味があります。
まずは「話をする」という意味の「口を利く」ですね。会話をするのは普通のことですので、「口を利かない」ことが問題です。口を利かないのはかなりストレスになりそうですね。
また、「口を利く」には「間に入って世話をする」という意味もあります。紹介してあげたり、よく扱ってもらえるように取り持つことですね。「口利き」という名詞形でも用いられます。
(話をする)
・誰とも口を利きたくない気分だよ。
・口の利き方には気をつけなさい。
(間に入って世話をする)
・父が知り合いの議員さんに口を利いてくれた。
・友達の口利きで欲しかったものを手に入れた。
まとめ
・「効く」は「効果や効能が現れる/効き目がある」場合に用いる。
・「利く」は、「もともと備わっているもの機能がよく働く」ときに用いる。
・わさびは「利く」も「効かせる」もある。
・冷暖房は「効く」、エアコンは「利く」を用いる。
・「口を利く」には「話をする」と「間を取り持つ」の意味がある。
今回は「利く」と「効く」の使い分けについてまとめてみました。少しでもお役に立てたら幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました。