「やめる」と「辞める」の使い分け/「学校をやめる」はどう書けばいい?

もう迷わない 漢字のチョイス

はじめに

「学校をやめます」というときに、まず思い浮かぶ漢字は「辞める」ですよね。でも、「辞める」というと辞職するイメージがあって、生徒や学生の立場でも「辞める」にしていいのかちょっと気になったので、念のため「やめる」の表記について確認してみました。

結論からいえば、生徒や学生の立場でも「学校を辞める」でよかったのですが、それはなぜなのかということと、あわせて、「辞める」以外の「やめる」の使い方についてもまとめましたので、最後までおつきあいいただけたら幸いです。

「やめる」か「辞める」の2択です

「やめる」の意味には大きく「止・已・辞」の3つの意味がありますが、このうち漢字で書いていいのは「辞」だけです。ですから、「やめる」か「辞める」のどちらかで書けばいいんですね。ただ、それぞれ異なった意味がありますので、具体的に見ていくことにしましょう。

「止める」の意味なら「やめる」にします

まず、「止める」の意味の「やめる」ですが、これは「していることを中止する」や「しようとしていることをとりやめる」という意味になります。この場合はひらがなで「やめる」と書きます。「よしなさい」「よしておきます」の「よす」の意味ですね。

・天気が悪いので出かけるのをやめる。
・無理なダイエットはやめよう。
・ゲームはやめて勉強しなさい。
・意地を張るのはやめたら?

「已める」の意味も「やめる」にします

「已める」というのは「すっかり終わりにする」とか「おしまいにする」という意味です。一時的に中止するのではなくて、少なくても気持ちとしては再開することはありません。その場合にも、やはり「やめる」とひらがなにします。ただ、「止」も「已」もどちらもひらがなでいいので、意味の違いは気にしなくてよさそうですね。

・食堂の経営はもうやめようと思う。
・来年度の1年生から制服をやめます。
・お祭りは今年でやめるしかないな。
・4月から現金の取り扱いはやめます。

「やめる」が「辞」の意味なら漢字にします

唯一、漢字にするのは「辞める」の場合です。「辞める」は「職場、役職、地位などから離れること」ですね。会社を辞めたり、市長を辞めたり、委員長を辞めたりします。自分の意思で辞める場合もありますし、求められて辞めることもあるでしょうが、いずれも「辞める」を用います。

・会社を辞めようと思うんだ。
・委員長を辞めさせていただきます。
・ここで市長を辞めるわけにはいかない。
・校長を辞められたのはいつですか?

学校は「辞める」で大丈夫な理由は?

学生や生徒の立場で「学校をやめる」場合はどうなのか、なかなか用例が辞書に載っていませんでしたが、調べた辞書のうち、『明鏡国語辞典』が「自分の所属している組織を去る」という意味の用例として「学校を辞める」「テニス部を辞める」を挙げてくれていました。ですから、「学校を辞める」と書いて間違いなさそうです。また、『三省堂国語辞典』も「学校を――』を載せてくれていました。

・学校を辞めたい。
・テニス部を辞めようと思う。
・PTAは途中から辞められるの?
・同好会を辞めるなんてもったいないよ。

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使い分けのポイント

使い分けのポイントとしては、ひらがなの「やめる」は何らかの動作や行動をやめることですが、「辞める」というのは「職場、役職、地位」、あるいは「所属している組織」から去ることですので、そのあたりが使い分けのポイントになりそうです。

このことについて『明鏡国語辞典』で興味深い指摘がありました。「会社を辞める」というのは、会社という組織から離れることなので「辞める」ですが、「仕事をやめる」というのは行動のことなので本来は「やめる」だけれども、最近では「辞める」が混用されているというのです。

確かにそうですね。ただ、「仕事」という語を、暗に「会社」などの組織の意味で用いていたりすることがあるので厳格にするのは難しそうですが、私も気をつけたいと思いました。

まとめ

・とりやめる、中止する場合は「やめる」にします。
・すっかりおしまいにする場合も「やめる」にします。
・職場、役職、地位、組織を去る場合は「辞める」にします。
・学生や生徒も「(学校を)辞める」を用います。

今回は、「やめる(止・已・辞)」の表記についてまとめてみました。最後まで読んでくださってありがとうございました。