はじめに
ここのところ「IT」のほかに「ICT」という言葉が用いられる場面に多く遭遇しますが、そもそも何が違うのでしょうか。
どちらも情報に関する技術のことですが、「IT」は「インフォメーション・テクノロジー」ですし、「ICT」は「インフォメーション・アンド・コミュニケーション・テクノロジー」ですから、「コミュニケーション」が入っているかいないかの違いですね。ITは「情報技術」、ICTは「情報通信技術」と訳されます。
IT:Information Technology(情報技術)
ICT:Information and Communication Technology(情報通信技術)
ただ、私が仕事をしていて感じるのは、IT業界の方は、いわゆるICTのことも「それもITでいいんじゃないの?」という認識のことが多く、「ICT」をよく使うのは、むしろITを利用する立場の方なんですね。
実際、省庁でも扱いが異なっていて、総務省では「ICT」を用い、経済産業省は「IT」を用いていることからも、意図することの違いが理解できるように思います。総務省は主に地方行政や選挙、通信や消防など、暮らしに密着する部門を担っていますし、経産省は産業やイノベーションを創出していく省ですからね。
そこで今回は、本当に両者は使い分けたほうがよいのか、使い分けるとしたらどのようなことがポイントになるのかを探っていきたいと思います。
ITとは? ICTとは?
ITは、コンピューターやインターネットなどの「情報技術全般」を指します。その範囲はとても広いですが、ハードウェア、ソフトウェア、データベース、ネットワークなど、主に情報を処理・管理するための技術そのものを指すことが多く、ITというと、プログラミングやシステム開発、データ分析などをイメージされる方が多いかもしれません。
ICTは、ITに「コミュニケーション」を加えたもので、情報を伝達したり共有したりして、人と人、または人と社会をつなぐための技術のことです。身近なところではSNSがそうですし、ホームページやブログ、テレビ会議システムや遠隔教育などもそれにあたります。
ITとICTの相互関係は?
では、もしも使い分けるなら、どのようなことをポイントにすればいいでしょうか。具体例を見ていきましょう。
例1)スマートフォンアプリ(ICT)を使うために、スマートフォン(IT)、インターネット(IT)、アプリ開発技術(IT)が必要です。
例2)オンライン教育(ICT)を実現するために、学習管理システム(IT)、ビデオ会議システム(IT)、教材作成ソフト(IT)が必要です。
例3)遠隔医療(ICT)を実現するために、オンライン診療システム(IT)、電子カルテシステム(IT)、生体情報モニタリングシステム(IT)が必要です。
両者の境界は明確ではありませんが、イメージとしてはこのように捉えられるのではないかと思います。つまり、利活用して暮らしに貢献するのがICTで、そのための土台を用意してくれるのがITといったところでしょうか。
最近、最も勢いのあるAIの分野であれば、大量のデータを扱う高度な処理能力や複雑なアルゴリズムなどは「IT」の基盤技術ですし、AIを活用したサービスやシステムは、AIを通じて人々の社会活動を支援するものですから「ICT」の分野に該当することになります。
フロントエンドとバックエンドについて
IT業界の方たちは、ITとICTという使い分けよりも、むしろ「フロントエンド」と「バックエンド」という言い方をすることが多いようです。
私たちが使っているソフトウエアやアプリは「フロントエンド」ですが、便利にアプリを使えるのは、そのアプリがインターネットを通じて「バックエンド」につながっているからなんですね。
このように、ユーザーが直接触れる部分をフロントエンド、目に見えない裏側のシステムをバックエンドといいます。
ITとICTの関係でいえば、フロントエンドとバックエンド全体がITであり、フロントエンドの部分がICTともいえますが、ICTはそれだけではなく、それを用いてどのように人とや社会とつながるかという社会的な側面の技術のことですね。
最後に
うまく説明できたかどうかわかりませんが、個人的にはITとICTをきっちり区別しなくてもいいのではないかと思っていますし、区別自体が難しいこともあります。それでもスムーズな会話のために、一応のポイントは押さえておいたほうがいいかもしれません。
最後まで読んでいただきありがとうございました!