統一されていない「度/たび」の扱い
皆さんは、「このたび」というときに、「この度」にしているでしょうか。「このたび」にしているでしょうか。それとも、どちらが正解なのか迷っているでしょうか。実はこれはどちらも正解で、どちらでもいいんですね。なぜなら、表記のよりどころである各表記辞書によって扱いが異なるためです。
ただ、共通している部分もありますので、今回は、「度」と「たび」の使い分けについてまとめてみたいと思います。
常用漢字表で「度」を確認しよう
まず、「度」という漢字を常用漢字表で確認してみたいと思います。
(常用漢字表より)
度 |ド |度胸,制度,限度
|ト |法度
|タク |支度
|たび |度,度重なる,この度
このように、「度」は音読みでは「ド、ト、タク」、訓読みでは「たび」と読むように示してあります。ですから、「たび」という場合に「度」を用いて問題ないことになります。
各表記辞書での取り扱い
そこで、それぞれの表記辞書ではどのように示しているのか、代表的な4つのパターンについて比べてみることにしました。
①「この度」か「このたび」か
②「…する度」か「…するたび」か
③「度重なる」か「たび重なる」か
④「度々」か「たびたび」か
公用文表記
公用文では基本的に「度」を用いますが、「…するたび」は「たび」にします。
・この度
・…するたび
・度重なる
・度々
新聞表記
新聞表記はなるべくひらがなを用いますが、「度重なる」は漢字にします。また、「たびたび/度々」はどちらも許容しています。
・このたび
・…するたび
・度重なる
・たびたび/度々
議事録表記
議事録表記は基本的に「たび」と平仮名にしますが、「度々」と「度重なる」のみ漢字を用います。
・このたび
・…するたび
・度重なる
・度々
NHK表記
NHKではすべてにおいて「たび」を優先して用いますが、必ずということではなく、「度」も許容しています。
・このたび
・…するたび
・たび重なる
・たびたび
このように、それぞれ別の立場をとっているんですね。
使い分けのポイント
お気づきかと思いますが、それぞれ独自の立場であるものの、動詞の連用形に付く「たび」、つまり、「その都度」や「その折ごと」という場合にはみんな共通して「たび」にしています。ここがポイントになりそうですね。
・彼女は会うたびにきれいになっていく。
・誕生日を迎えるたびに複雑な気持ちになる。
そのほかはご自分で好きに使っていいということになりますが、気をつけなければならないことがあります。例えば、「度」を優先して用いようとすると、「幾度」は「いくど」とも「いくたび」とも読めてしまいますし、「三度」は「さんど」なのか「みたび」なのか判断がつかなくなってしまいます。
そのため、「度」は「ど」、「たび」は「たび」とひらがなにしたほうが合理的ではありますが、そこは語感の違いもあると思いますので、読み手に配慮しながら納得のいく表記をチョイスしてみてください。
「度/たび」を用例で確認しよう
念のため「度/たび」を用例で確かめてみましょう。どちらでも書けるものは、どちらのほうが読みやすいか確かめてみてください。
(「度/たび」のどちらも可のもの)
・この度、会長に選出されました青木です。
・このたび、会長に選出されました青木です。
・度重なる自然災害に恐怖すら感じます。
・たび重なる自然災害に恐怖すら感じます。
・度々、彼の家に遊びに行っていました。
・たびたび彼の家に遊びに行っていました。
(「たび」とひらがなにするもの)
・夏が来るたびに思い出します。
・海外に行くたびに学びがあります。
・実家に帰るたび、親が年老いていくのを感じる。
・買い物にいくたび買ってしまうものがある。
まとめ
今回は「度」と「たび」の使い分けについてまとめてみました。使い分けといっても、基本的に自由に選択していいという結論でしたが、「…するたび」の場合はひらがなを用いてくださいね。最後まで読んでくださってありがとうございました!