はじめに
「さらに」というときに、「更に」と漢字にしてあるものと、「さらに」とひらがなを用いている文章の両方を見かけますよね。これってどちらが正しいのでしょうか。
結論からいえばどちらでもよくて、公用文では「更に」と書きますが、新聞表記ではひらがなにします。ですから、どちら寄りの立場か、もしくはどちらの表記が好きかで選んでください。
ただ、公用文は少しやっかいで、みんな「更に」にするのではなくて、副詞と接続詞で「更に」と「さらに」と書き分ける必要があるんですね。使い分けのポイントは後述しますが、この点は少し注意してみてください。
公用文以外であれば、みんな「さらに」で大丈夫ですが、そうすると「ことさら」や「いまさら」はどう書けばいいのか逆に迷ってしまいますよね。
そこで今回は、公用文の「更に/さらに」の使い分けと、新聞表記での「さらに」の扱い、そして副詞の使い方についてまとめてみることにしました。何か参考になることがあれば幸いです。
公用文における「更に/さらに」の扱いについて
まず、公用文における扱いについて説明します。「さらに」には副詞と接続詞があって、「更に努力してまいります」などは副詞ですし、「さらに、今回の議題についてですが…」などは接続詞です。公用文では、副詞は漢字、接続詞はひらがなという原則がありますので、前者は「更に」、後者は「さらに」を用います。
副詞か接続詞かの判別が紛らわしいですが、副詞はすぐあとの語に係るのに対して、接続詞は文章をつなぐ役割をするものです。接続詞の「さらに」は「加えて」などの語に言い換えることができるので、そのあたりを判別のポイントにしてください。
(副詞)
・更に努力してまいります。
・更に加熱して沸騰させます。
・更に検討していく必要があります。
(接続詞)
※「加えて」などに言い換えられる
・さらに、今回の議題についてですが…
・さらに、別件について報告しますと…
・企業誘致と、さらに、若者の支援を進めます。
公用文におけるその他の副詞の扱い
公用文では副詞は漢字で書きますので、当然ながら「今更」「殊更」「更なる」はみんな「更」を用います。
・今更、過去のことを論じるつもりはない。
・殊更、取り上げる必要もありません。
・更なる躍進が期待されます。
副詞を漢字にするときちんとした印象になりますが、文章に対する親しみは失われてしまいます。漢字がふさわしい場合もあると思いますので、目的によって選んでみてくださいね。
新聞表記における「さらに」の扱いについて
新聞表記では「更」はひらがなにしますので、副詞と接続詞の区別なく「さらに」と表記します。みんな「さらに」にすればいいので迷いがなく扱いやすいですね。
(副詞)
・さらに努力してまいります。
・さらに加熱して沸騰させます。
・さらに検討していく必要があります。
(接続詞)
・さらに、今回の議題についてですが…
・さらに、別件について報告しますと…
・企業誘致と、さらに、若者の支援を進めたい。
新聞表記におけるその他の副詞の扱い
「さらに」以外の副詞についてですが、新聞表記では「いまさら」「ことさら」というように全体をひらがなにしますので、「今さら」「殊さら」と書かない点は注意が必要です。なぜかというと、「今」と「さら」がくっついているのではなく、「いまさら」自体が一つの語であると考えるためです。
(いまさら)
・いまさら過去のことを論じるつもりはない。
(ことさら)
・ことさら取り上げる必要もありません。
(さらなる)
・さらなる躍進が期待されます。
副詞をひらがなにすることの利点は、読点を用いなくても読みやすいことです。文字を記号として考えたときには、このような視点も大事なのではないかと思います。これは好みの領域になってしまいそうですが、目的によって選んでいただければと思います。
まとめにかえて
このように日本語の表記はまちまちで、どれが正解なのか調べてみると、そもそも正解がないということもよくあります。
ちなみに、NHK表記はどうかというと、優先してひらがなを用いるけれども「更に」も許容する立場ですし、議事録表記は「さらに」「さらなる」はひらがなにしますが、「今さら」「殊さら」とします。このように表記がまちまちなんですね。ですから、ご自分で方針を決めたら同一の文章の中では統一することに注力していただければ問題ないと思います。
なお、ここでの「新聞表記」とは『記者ハンドブック 新聞用字用例集』をもとにしています。最後まで読んでいただきありがとうございました。