はじめに
街を歩いていても、たくさんの外国人とすれ違うようになって、これから日本は本当に変わっていくんだなと実感する毎日ですが、それはそれとして、この変化の激しい世の中で、どうやって自分が生きていくかは大問題です。
そんな中で注目されているのが「日本語教師」、つまり、外国人に日本語を教えるという職業です。どうして注目されているのかというと、2024年から「登録日本語教員」が国家資格になったためです。
今まさに新制度になってまもない時期ですので、逆にいえばチャンスなんですね。これから留学目的の外国人に日本語を教える学校が増えたり、地方においてもサポートの必要な移住者が激増するものと思いますので、「登録日本語教員」という仕事の需要は高まるばかりです。「幸運の女神には前髪しかない」といいますが、まさに今がその時なのではないでしょうか。
ただ、どうすればなれるのかを知らなければ、そもそも自分に合っているかどうかも判断できませんし、時間とお金はとても貴重なものですので、本当に突き進んでいいのかどうかは慎重に検討したいところです。そこで今回は、日本語教師になるためのプレ知識として、調べてわかったことをまとめていきたいと思います。
日本語教員に向いている人

日本語教員に興味がある人の多くは「日本語が好きだから」とか「学生時代に国語が得意だったから」という方が多いかもしれません。実際、中高の国語科の教員だった方がセカンドキャリアとして目指されることも多いようです。
でも、日本語教員に求められるのは、語学への興味よりも、むしろ「人とのふれあいが好き」とか「コミュニケーションが得意」ということなんですね。生活をサポートするという意味では福祉的な領域とも重なる部分があるかもしれません。
語学が得意なら、翻訳者とかライターとか、出版社に就職するとか、別の道もたくさんありますし、むしろ行政書士や社会保険労務士など、ほかの資格を目指したほうがいいこともありますので、そのあたりは自分の適性を見誤らないようにしたいところです。
年齢も学歴も問わない国家資格「登録日本語教員」

2024年から「登録日本語教員」が国家資格になりました。これまで外国人に日本語を教える仕事は文化庁の所管でしたが、文部科学省に移管したんですね。このことは、国際交流というフェーズを終え、外国人を日本を支えてくれる人材として迎えようという決意の表れではないでしょうか。
「登録日本語教員」になるにはどうすればいいかというと、「日本語教員試験」に合格すればいいんですね。しかも、受験資格に年齢や学歴や国籍などの制限は一切なく、すべての人に門戸が開かれている国家資格です。
ですから、これから大学を選ぶ若い世代はもちろんのこと、むしろ年齢を味方につけて退職後も活躍することも可能ですし、仕事をしながら勉強して、合格したら転職したいとお考えの方もいらっしゃるかもしれません。また、外国から移住された方が、新しくやってきた方に教えることも可能です。バリアがない資格というのは、なんだか生きる希望を与えてくれますね。
外国語を話せなくても大丈夫

ここで確認しておきたいのは、外国人に日本語を教えるというときに、必ず「登録日本語教員」である必要はないということです。知り合いの人に頼まれて教えるとか、ボランティアで日本語を指導をするとか、そういう場合は自由に教えて問題ありません。
国家資格が必要なのは、留学や就職を目的に日本語学校で日本語を学ぼうとしている人たちに教える場合です。外国人に教えるとなると外国語もできないとまずいのではないかという気持ちになりますが、それは関係ないようです。なぜなら、多くの場合、日本語を用いて日本語を教える「直接法」をとっているためです。
もちろん、何らかの外国語にたけていることはいいことですが、日本語を学んでいる外国人は中国やネパール、ベトナム、ミャンマーなど、独自の言語を用いている国の方が上位を占めています。ですから、むしろ、いかにわかりやすい日本語を用いてコミュニケーションを図っていくかという技術のほうが大切なのではないかと思います。
自分に合ったルートを見つける
「日本語教員試験」には「基礎試験」「応用試験」、そして「実践研修」という3つの関門があります。そして、それぞれのルートによって基礎試験が免除されたり、実践研修が免除されたりするんですね。正確には免除というよりカリキュラムに含まれているという扱いになりますが、ここをまず押さえておく必要がありそうです。
資料「文化庁:登録日本語教員の資格取得ルート」より

①自力で頑張る「試験ルート」
まず、自力で頑張る方法ですが、最終的に資格試験に合格すればいいので自学でも大丈夫です。この場合、「基礎試験」「応用試験」「実践研修」と進んでいきます。仮に「日本語教員試験」に合格したとしても、どこかの研修機関で実践研修を行わなければ「登録日本語教員」にはなれない点は注意が必要ですが、養成機関では実践研修のみを独自のコースとして設けているところがありますので、そこについては心配なさそうです。ただ、試験内容は膨大な範囲から出題されますので、これまで日本語教育に関わった経験がない場合はかなりの覚悟が必要になりそうです。
②すべてがそろう「一体型ルート」
自力で頑張るといっても、何をどう頑張ればいかわからない場合は養成機関に通ったほうが安心です。国から認められた「登録日本語教員養成機関」を修了すれば「基礎試験」が免除されます。加えて、実践研修も行うことができると認められた「登録実践研修機関」であれば実習も含まれたカリキュラムになりますので、登録日本語教員になるためのすべてがそろっているんですね。実践研修ができるということは、すなわち日本語学校を併設している養成機関ということになります。
③実践研修だけ別機関で行う「個別型ルート」
「登録日本語教員養成機関」であっても「登録実践研修機関」に認められていない場合は、実践研修だけはほかの機関で行う必要があります。ただ、研修は国家資格取得後に行ってよいことになっていますので、このルートであれば、通いやすいところでまずは合格を目指して、晴れて合格したら実践研修の講座を開設しているところに申し込むということになりそうですね。
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養成機関には専門学校のほかに大学もあって、大学卒業と同時に日本語教師の資格が取れる課程を設けている大学もあります。また、各養成機関においては、通学制ばかりでなく通信制を併用しているところもたくさんありますので、かなり受講しやすいのではないでしょうか。
なお、現在は新制度になってまもない時期ですので、認定にはかなり動きがあって、新たに認定されたり、逆に認定が取り消されてしまうケースもあるかもしれませんので、ご自身で確認してみてください。全国にどのような認定機関があるのかは文化庁のホームページに掲載されています。https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/kyoin_kenshu/92159401.html
費用と期間について
さて、気になるのは期間と費用ですよね。これはさまざまなので一概に言えませんし、設けられているコースによってもかなり違いますが、期間としてはおおむね1年~、費用としては60万~がひとつの目安になりそうです。ただし、短期コースを設けているところもありますので忙しい人でもあきらめる必要はなさそうです。
確かに養成機関に通うには費用がかかってしまいますが、試験問題の中には実践的な内容もかなり含まれていて、なんと「聴解問題」もあるんですね。このあたり、やはり養成機関のほうが、総合的にはタイムパフォーマンスがよさそうです。
国家試験は年に1回、秋に行われますが、前回、つまり新制度になって初めての試験の合格率は62.6%だったそうです。これを高いと捉えるか低いと捉えるかはそれぞれだと思いますが、看護師の国家試験合格率が90%ほどで、行政書士の国家試験の合格率は13%ぐらいですので、易しくはないけれども、そこまでシビアでもない、挑みがいのある難易度といったところでしょうか。
おすすめな養成機関はどこ?
調べていくうちに、私がいいなと思った養成機関がありましたのでご紹介したいと思います。1つは、地方在住者の味方になってくれそうな「ヒューマンアカデミー」、もう1つが、確保できる時間が限られている方におすすめな「TCJ日本語教員養成課程」です。
地方に住んでいても大丈夫!「ヒューマンアカデミー」

これからの時代、地方こそ日本語教員の需要が高まっていくと思いますが、養成機関の多くが東京や大阪に集中しているので、自分には無理だとあきらめてしまっていないでしょうか。でも、それはとてももったいないことで、今、地方にこそチャンスが広がっているんですね。
「ヒューマンアカデミー」は、東京や大阪はもちろんのこと、札幌、仙台、大宮、千葉、横浜、静岡、浜松、名古屋、京都、神戸、岡山、高松、広島、福岡、熊本、鹿児島、那覇と全国展開している養成機関ですので、きっとお近くのスクールが見つかるはずです。もちろん「登録実践研修機関」ですので、その点も安心です。どのような形での受講が可能なのかチェックしてみてくださいね。
ヒューマンアカデミーのHPを確認する → https://haa.athuman.com/academy/japanese/
忙しい人でも大丈夫!「TCJ日本語教員養成講座」

日本語教師に興味はあるけれど、1年間も講座を受けるなんてできそうもないとお考えの方は多いのではないでしょうか。お子さんを保育園に預けられるうちに修了したいとか、いつ夫の転勤があるかわからないとか、なかなか踏み出せない事情があるかもしれません。
そんなときは「TCJ日本語教員養成課程」がおすすめです。なんと半年という短期コースが設けられているんです。「半年ならいけるかも!」と前向きな気持ちになれますよね。コースを修了していれば、あとは受かるように自力で進めていけばいいわけですから、これはかなり魅力的です。通常のコースもありますので、ライフスタイルに合ったものから選ぶことができますし、もちろん「登録実践研修機関」に認定されています。
TCJ日本語教員養成課程のHPを確認する → https://xn--euts3n8lg6bk91h.jp.net/
まとめ
今回は、私自身も興味があった日本語教師について、どうすればなれるのか、どういうルートがあるのかを調べてみましたので、わかったことを共有させていただきました。伝え切れていないこともあるかもしれませんが、全体像の把握にお役に立てたら幸いです。
なお、繰り返しになりますが、「登録日本語教員」が国家資格になったのは2024年からで、とても新しい制度です。そのため、かなり動きが激しい面がありますので、必ずご自身で文部科学省のホームページなり希望する養成機関のホームページなりで確認するようにしてくださいね。
最後まで読んでくださってありがとうございました!