はじめに
「多分/たぶん」「結構/けっこう」「大変/たいへん」などは、漢字表記が多いものの、ひらがなになっていることもありますよね。確かにひらがなのほうがなじむように感じることもありますが、漢字にするかひらがなにするかを自分で勝手に決めていいのかどうかも気になるところです。
そこで今回は、「多分/たぶん」「結構/けっこう」「大変/たいへん」などの表記について、漢字とひらがなは使い分ける必要があるのか、もしも使い分けるとしたらどのような点に気をつければいいのか、ポイントをまとめてみたいと思います。
副詞的な用法はひらがなにしたくなる
どうして「多分(たぶん)/結構(けっこう)/大変(たいへん)」などは、漢字表記とひらがな表記があるのかというと、同じ語でも名詞や形容動詞のほかに「副詞」のように用いられることがあるためです。副詞の場合にはひらがなが好まれるんですね。
ただ、公用文においては「常用漢字で書ける副詞は漢字にする」のが原則ですので、意味にかかわらず漢字を用いますし、新聞表記も同じです。ですから、基本的には「多分」も「結構」も「大変」も漢字で問題ありません。
それでも副詞はひらがなにしたくなるのは、それなりの理由があって、漢字の持つ意味から離れてしまっているためです。私自身も「たぶん」はひらがなにしたくなります。
ただ、副詞的な用法の場合にひらがなにするのは、表記の決まりということではなく、「表記の工夫」の範ちゅうになりますので、ひらがなを用いなければならないというわけではありません。副詞をみんなひらがなにすると、逆に読みづらくなってしまうこともあり、悩ましいところです。ですから、後述する使い分けのポイントをもとにご自身で判断してみてくださいね。
「多分/たぶん」の意味と使い方
「多分/たぶん」には「名詞」と「副詞」があって、名詞は漢字の持つ意味のとおり「かなり」や「たくさん」という意味ですが、副詞の場合は「おそらく」や「たいてい」という意味になります。
名詞の場合は漢字にしますが、副詞の場合はひらがなを用いることが多いかもしれません。実際、NHK表記では「たぶん」はひらがなを優先して用いるように示しています。私自身もひらがなのほうが好きです。なぜなら、「たぶん」をひらがなにすると、読点を入れなくても読みやすいためです。ただ、前述したように、公用文や新聞表記は、名詞も副詞も区別せずに漢字にする立場です。どちらが正解ということではありません。
用例で確かめてみましょう。
①名詞:たくさん かなり
・多分なご祝儀を頂いた。
・多分に危険な状態だ。
・多分に軽率な行動だ。
②副詞:おそらく たいてい
・たぶん大丈夫だろう。
・たぶん間に合うと思います。
・それは、たぶん私のせいです。
「結構/けっこう」の意味と使い方
「結構/けっこう」には、「名詞」「形容動詞」「副詞」があります。「名詞」はあまり使われることはないように思いますが、「形容動詞」と「副詞」はよく使います。
どれも、基本的には漢字で書いて問題ありませんが、やはり副詞は「けっこう」とひらがなにしてある文章もよく見かけますので、文脈によって判断してください。ただ、「けっこう」はひらがなだと長くなってしまうため、「たぶん」よりは使いづらいところがあるかもしれません。
用例で確かめてみましょう。
①名詞:ものの組み立て 構造
・小説の結構を考える。
・贅を尽くした寺の結構
②形容動詞:すぐれている 十分である
・結構なお茶でした。
・このプランで結構です。
・お酒はもう結構です。
③副詞:十分ではないが満足なさま
・けっこう上手に書けましたね。
・けっこう人気があるんです。
・けっこう気に入っているんです。
「大変/たいへん」の意味と使い方
「大変/たいへん」にも、「名詞」と「形容動詞」と「副詞」があります。名詞はあまり使われませんが、形容動詞と副詞はよく用います。
「名詞」と「形容動詞」は漢字を用いますが、「副詞」はひらがなを用いることもあります。もちろん、意味にかかわらず漢字で大丈夫ですが、書き分けたい場合には副詞であることを確認して用いるようにしてみてください。
用例で確かめてみましょう。
①名詞:一大事 大事件
・これは国家の大変である。
・このたびの大変で打撃を受けた。
②形容動詞:重大であること 困ること
・大変なことが起こってしまった。
・電車に乗り遅れたら大変だ。
・準備はかなり大変だったでしょう?
③副詞:非常に とても
・たいへん残念なことです。
・たいへん感謝しています。
・たいへんお世話になりました。
「御多分に漏れず」とは?
「多分/たぶん」の表記に触れましたので、念のため「御多分に漏れず」の意味を確認したいと思います。
「御多分」の「御」は敬意を添える接頭語で、「多分」は大多数の人という意味です。「御多分に漏れず」というのは、「大多数の人の意見や行動から外れていない」という意味ですので、「ほかと同じように」とか「例外ではなく」という意味になります。
・御多分に漏れず、私の家でも子どもが後を継ぎません。
・御多分に漏れず、食費の捻出に頭を抱える毎日です。
まとめ
今回は、「多分/たぶん」「結構/けっこう」「大変/たいへん」の使い分けについて、考え方のポイントをまとめてみました。
基本的には漢字表記で問題ありませんが、文脈によってどうも漢字がなじまないと思う場合には、ひらがなも選択肢に入れながらふさわしい表記を選んでみてくださいね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。