「活を入れる」ってどういう意味?
「カツを入れる」という言い回しの場合、「活を入れる」が正解ですが、「活」がなじまないように感じて「喝を入れる」にしたくなりませんか?
そもそも「活を入れる」とはどういう意味なのかというと、「刺激を与えて元気づける」ということなんですね。「活力注入!」のようなイメージでしょうか。
でも、もしかして「カツを入れる」を「叱咤激励すること」とか「強い口調で叱ること」という意味だと思っていないでしょうか。実は私がそう思っていました。これだと「喝」が漢字の意味としては近くなりますので、どうもそのあたりが誤用を生む原因のようです。
つまり、「弱ったり元気をなくしている人が活力を取り戻せるようにする働きかけ」という本来の意味ではなく、「サボったりダレたりしている人に強いことばで指導して気合いを入れること」の意味で用いているために「喝」を使いたくなってしまうんですね。
「活」と「喝」の違いについて
「活を入れる」の語源は?
「活を入れる」の語源を調べてみると、柔道の用語に由来しているようです。柔道で絞め技をかけられて失神してしまった人に対して、胸や腹のあたりを強く刺激して息を吹き返させることを「活を入れる」というそうです。それが転じて「刺激を与えて元気づける」という意味になったんですね。
「喝」とはどういう意味?
一方で、「喝」というのは「大声を出すこと」の意味ですが、多くの人が、座禅の修行中に「喝!」と棒のようなものでたたかれるシーンを思い浮かべるのではないでしょうか。その際の「喝」は精神統一ができていないことへの戒めのことばで、つまり「一喝」することです。
「一喝」することも「活を入れる」に入ります
誰かを元気づけようと思ったら、たいていは「声」を使います。ですから、強い口調で一喝することが「カツを入れる」ことだと誤認してもしかたがない部分もあります。このように考えると「喝を入れる」でもいいように思えてしまいますが、テストでははバツになってしまいかねませんので、「活を入れる」という言い回しの場合は成句として覚えてしまいましょう。「活を入れる」ための手法のひとつが「一喝」なんですね。
柔道で失神することを「落ちる」といいます
柔道には絞め技がありますので、場合によっては失神してしまうことがあります。だいぶ昔のことですが、私自身、生徒引率の補助として柔道の大会に臨んだことがあって、目の前で失神する場面を目撃しました。
私は心臓が飛び出そうなくらい慌てふためきましたが、周囲はとても冷静で、そのことに逆に驚いたのを思い出します。失神するのは「頸動脈洞反射」といって、血圧の調節がうまくできなくなったことによる体の反応だそうですが、それを柔道では「落ちる」と表現します。
「活を入れる」という語が生まれたほどですから、柔道ではどうしても起きてしまうことがありますが、それを防ぐための方策がさまざま考えられているようです。
死者を励ます場合に「喝」を用いることがあります
座禅の修行中、姿勢が乱れたり精神統一ができていないとパシッとたたかれるシーンをよく目にしますが、あの棒は「警策(きょうさく)」というそうです。たたく前にはそっと肩に警策を載せて、「これからたたきますよ」という合図を送ってくださるので、そうしたら背中を丸めてたたかれる体勢をとります。
また、宗派によってはお葬式のときに、お経を唱えていたお坊さんが、突然、「迷わず成仏せんことを 喝!!」と大きな声を上げることがあります。臨済宗などでしょうか。あれは亡くなった人に対して、「現世への未練を断ち切って、さあ、あの世へお逝きなさい。逝くのです!!」と、強いことばで励ましているんですね。
まとめ
今回は「活を入れる」の表記についてまとめてみました。毎日新聞の調査では、「喝を入れる」が正解だと思っている人が「活を入れる」の割合を大きく超えていたそうですが、そうなってもやむを得ない面もあるように思います。
そうなると、みんなが「喝を入れる」だと思っているのに、自分だけ「活を入れる」と書くと、逆に間違いだと思われないか心配になったりしますよね。ことばは変化していくものですから、将来的には「喝を入れる」が認められる可能性も皆無ではありませんが、現状では「活」ですので大丈夫です。自信を持って「活を入れる」にしてみてくださいね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。