『若がえりの水』の要約とあらすじと感想/「若がえり」の本当の意味は?

知っておきたい日本の昔話

『若がえりの水』の要約文を書いてみた

『若返りの水』は、池の水を飲んだおじいさんが若返ったのを見て、おばあさんも同じ水を飲んだところ、飲みすぎて赤ん坊になってしまったことから、欲をかくのも程度があると教えてくれる昔話です。

『若がえりの水』のあらすじをまとめてみた

昔、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。ある日、おいじさんはいつものように山へたきぎを取りに行きましたが、その日に限ってなかなかいいたきぎが見つかりません。それでどんどん山奥に入っていくと、きれいな池がありました。

疲れていたおじいさんは水をすくって飲んでみたところ、とてもおいしい水でしたので、たちまち元気が出てきました。水に映った自分の顔を見ると、なんだかとても若々しくなっています。曲がっていた背中もしゃんと伸びたので、あたりの木を軽々と切ると、ひょいと背負って家へ帰っていきました。

家に着くと、驚いたのはおばあさんです。目の前の青年が誰なのかわかりません。「さて、あなたはどちらさまでしょうか」「何を言っている。わしじゃよ」と、おじいさんは池の水のことを話しました。おばあさんは、「そんな水なら私も飲んでこよう」といってさっそく出かけていきました。

教えられたとおりの道を進んでいくと、きれいな池がありましたので、おばあさんは喜んで、さっそく水辺で、がぶがぶ、がぶがぶと水を飲み始めました。

おじいさんは、家でおばあさんの帰りを待っていましたが、なかなか帰ってこないので、心配になって迎えに行くことにしました。すると、池のあたりから赤ん坊の泣き声がします。駆け寄ってみると、その赤ん坊はおばあさんが着ていた着物にくるまっていました。水を飲みすぎて赤ん坊になってしまったのです。

おじいさんはその赤ん坊を抱きかかえると、赤ん坊と一緒に泣きべそをかきながら家へ帰っていきましたとさ。

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『若がえりの水』の感想をまとめてみた

『若くなりたい』というのは万人の願いです。同窓会でかつてのクラスメイトに顔を合わせたときに、「若いね!」とか「変わらないね!」といわれたときの優越感といったらありませんよね。「そんなことないよ」といいながらも、ついほくそ笑んでしまうものです。

ただ、「全然変わってないね!」といわれたとしても、どう頑張っても中学生や高校生には見えないわけですから、その若さは誤差の範囲です。それを知っていても、やはり、少しでも若々しくありたいと思う気持ちは止められません。おばあさんも同じ思いだったのでしょう。

若くなる成分が含まれている水というのはどのようなものだったのか気になります。アンチエイジングとして知られるのはビタミンEですが、ここまで強力な効き目があるとなると、きっと未知の含有成分に違いありません。

ただ、この池の水の存在が知れ渡ったら、毎日、水をくむ人で長蛇の列でしょう。おばあさんを育てるのも大変でしょうから、おじいさんは水を販売して大枚を得て生計を立てたかもしれません。それに、おじいさんも少しずつ若返りの水を飲めば、おばあさんが成人するのを見届けられそうですね。

こんなふうに、後日談がとっても気になる『若がえりの水』ですが、次の項では、おばあさんが赤ちゃんになってしまったことの本当の意味を考えてみたいと思います。

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「赤ちゃん返り」を考察してみた

最初にこの物語を読んだときは、よくある昔話のように「欲張るとろくなことがない」というお話かと思いましたが、どうももう一つ別なテーマがあるように思えてなりません。深読みしすぎでしょうか。

私は、このおばあさんは本当の赤ちゃんになってしまったのではなくて、認知症のため、家への帰り道がわからなくなってしまったのではないかと思いました。おばあさんが帰ってこないので、おじいさんは、ようやくその変化に気づくことができたのでしょう。そのことを「赤ちゃん返り」として表したのではないかと思います。

高齢化が進む日本ですが、実は認知症患者の割合が高いことでも知られています。先進国の平均が1,000人当たり14.8人なのに対して、日本は23.3人と突出しているんですね。

認知症になる原因はさまざまですが、やはりストレスが関係しているようです。生きていればストレスにさらされるのは避けられませんが、日本人は不安感が強いため、同じことであっても欧米人よりも大きなストレスを感じてしまい、そのストレス物質が脳にダメージを与えているのではないかと考察されているんですね。

ですから、認知症を防ぐためには、あまり腹を立てず、過度な心配はせずに、食べたいものを食べて、寝たいときに寝て、夢中になれることに熱中していれば、それが最もストレスのない生活かもしれません。なかなかそうもいかないのが現実ですが、脳のためにはちょっぴり自己中くらいがちょうどいいと思えば、もっと自分に優しくなれるのではないでしょうか。

ただ、認知症は悪いことばかりではありません。一定の年齢以上になると「今晩寝たら、あしたは目が覚めないかもしれない」という恐怖を抱えて暮らさなければならなくなります。認知症によってそれが緩和されるとしたら、ご本人にとってはストレスのない穏やかな生活になるのかもしれませんね。